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第27話『何があってもしぶとく生き残るよ』

お待たせしました。

第27話できましたので、宜しくお願い致します。


※2022年3月2日改稿しました。

※文字数かなり長めです。

 目を覚ましてまず1番最初に目に入ったのは、眉尻を下げた赤髪ちゃんだった。次に目に入ったのはつい一昨日見た天井。俺はベッドの上で横になっていた。


『ダスト様、目が覚めたようですね』


『ここは……?』


『治療室ですよ。先ほどブロンズさんが娯楽施設でダスト様の具合が突然悪くなったようなので、ここまで運んで来たのですよ』


『ブロンズちゃんが……あ! そうだった! 今すぐブロンズちゃんを助けに行かないと!』


 さっきの夢の出来事を思い出した俺はブロンズちゃんを助けに行く為にすぐにベッドから出ようとしたが、赤髪ちゃんに止められてしまった。


『ダスト様、動かずに安静にしてて下さい!』


 赤髪ちゃんは、俺の身を案じてこう言ってくれてるんだろうけど、今は状況が状況だ。時間は惜しいが赤髪ちゃんにも事情を説明するとしよう。


『あの、赤髪ちゃん、実は――』


 俺はさっきの夢で見た内容を赤髪ちゃんに簡潔に伝えた。


『ブロンズさんが……死ぬですって……?』


『はい、悪夢の中で予言をよく当てるある人物に警告されまして……ブロンズちゃんが、魔王城を飛び出した後、ピンチになると』


 悪夢の中で予言されるなんて、とても信じがたい内容だが、ありがたいことに赤髪ちゃんは俺の言葉を一切疑わず、真剣に聞いてくれた。


『なるほど……事情は分かりました。ですが、ダスト様は無理をなさらず、ここで待っていてください。私がブロンズさんを助けに行ってきます』


『いえ、俺も行きます』


『ですが……』


『お願いします』


 俺は真剣な眼差しで赤髪ちゃんを見た。決して舐めてるわけでも無策で行くわけでもない。とにかく赤髪ちゃんに俺は真剣だと訴えかける。


 このあと赤髪ちゃんがどんなに反対しようとも行くつもりだ。


 ここは絶対に俺が行かないといけない気がする。悪夢の中のあいつが、()()()()()()()()。他の仲間に任せろとは一切言わずに。


 つまり、ブロンズちゃんを助けるには俺が助けに行く事が前提だ。赤髪ちゃんを信頼してないわけではないが、俺が行かないと何らかの理由でブロンズちゃんを助けられない可能性がある。


『……分かりました。ただし、絶対無理はしないで下さい。少しでも危ないと思ったら即撤退して下さい。それだけは絶対守って下さいね』


『分かりました!』


 てっきり反対されるかと思っていた。意外にも話がすんなり進んで助かった。まあ今は口論してる時間もないからってのもあるだろうが。


 そもそも夢から出た幻のような話なのに、こうして俺の言うことを信じてくれるなんて……。普通の反応なら、そんなの夢の話だろと言われて、まともに相手してくれないだろう。


 それだけ赤髪ちゃんは俺を信頼してくれてるってことだ。俺をこんなに信頼してくれる人なんて、滅多にいなかったから、少し驚きを隠せない。


『では、行きますよ』


『はい!』


 俺は赤髪ちゃんと一緒に魔王城を飛び出し、ブロンズちゃんの行方を追った。


 すると早速――


『あ、ブロンズさんが居ました! 一緒にいるのは……盗賊団!』


 赤髪ちゃんは盗賊団の男が視界に入ると、顔つきが殺人鬼のように豹変し、剣を取り出して、その男を斬り伏せようとしたが、間一髪かわされてしまった。


『うおっ! っぶねえな! 誰だ!』


『私たちは、その娘の仲間です。その汚れた手を放しなさい! さもなくば……斬る!』


 そう警告するも男はブロンズちゃんを放すつもりはなく、むしろ、すりすりとブロンズちゃんの身体に触れ始めた。


 そのゲスな行為が赤髪ちゃんの逆鱗に触れ、これ以上言葉を交わすことなく電光石火の如く、盗賊団を斬り伏せた。


『ぐはっ!』


 盗賊団の男は雑魚キャラのように一撃で倒れてしまった。


 男から解放されたブロンズちゃんはよほど怖かったのか、その場から動けずへたり込んでしまった。


『ブロンズさん、大丈夫ですか!』


 赤髪ちゃんは愛しい愛しいブロンズちゃんをぬいぐるみを抱きしめるように抱きついた。下心は……無いとは言い切れないが、さすがに真剣だと信じたい。


『赤髪ちゃん……お兄ちゃん……ごめんね……』


 湧き上がる恐怖を植え付けられたブロンズちゃんの目には涙が浮かびあがり、震えも止まらなかった。


『ブロンズちゃんが無事で良かったよ、帰ろう』


『うん……』


 あれ? 俺必要なくね? そう思った矢先に赤髪ちゃんは嫌な予感がしたのか、こう呟いた。


『なんか妙な気配がしますね……まだ盗賊団がうろついてるのでしょうか……』


 ブロンズちゃんを助けたあとも決して警戒心を緩めない赤髪ちゃん。


 俺はまだ震えているブロンズちゃんの手を握った。


『お兄ちゃん……ありがと……』


 ブロンズちゃんは涙ぐみながら、そうお礼を言って、俺に微笑んだ。あの強気なブロンズちゃんはどこにいったのか、ずいぶんと弱気だった。


 まあ無理もないだろう。こんな年端のいかない女の子があんなゲスな男に襲われたら、恐怖以外の何者でもない。


 きっとさっきまで自分が何をされるのか気が気でなかっただろう。というかブロンズちゃんに気安く触れたあの野郎はマジで許せねえ。


『誰かいるのですか! 出てきなさい!』


 赤髪ちゃんがそう叫んでも誰も出てくることはなかった。なんだったのか……。


『!?』


 その瞬間、何かの魔法なのか俺は未来を見た。


 今、俺の脳裏には()()()()()()()()()()()()()()()映像が浮かんだ。


『これは……あっ!』


『ダスト様、どうかされ――』


 俺は瞬時に動いた。この後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、赤髪ちゃんのすぐ真横まで来ていたのだ。


『うおおおおおおおおおおお!!!』


 間に合え! 間に合え!

 俺は決死の思いで赤髪ちゃんを押し退かし、代わりに俺がその場に立った。


 そしてグサッという音と共に激痛が分かりやすく身体に響いた。ナイフが俺の胸に刺さったのだ。


 ヤバい……血が止まらない。汗も止まらない。身体が悲鳴を上げている。警告音が鳴りっぱなしになるくらい身体が異常事態を伝えてる。


 あ、これはダメだ。


 とても立っていられない俺は両膝を地面につき、そのまま倒れてしまった。


『ダスト様!』


『お兄ちゃん!』


 赤髪ちゃんもブロンズちゃんも、血相を変えて俺の所まで寄ってきた。ああ、良かった。2人共ケガはないみたいだ。代わりに俺がめっちゃ痛い思いをしてるけど、良かった……彼女達が無事で本当に良かった……。


『ぐ……はぁ……はぁ……痛てぇ……』


『ダスト様……そんな……あれほど無理はしないでと言ったのに、まさか私を庇うなんて……』


 赤髪ちゃんはそう言いながら、すぐに俺を手当てし始める。


『お兄ちゃん! ダメ! 死んじゃやだよ! お願い……私を……私たちを置いていかないで!』


 ブロンズちゃんは俺の手を強く握りながら、そう泣き叫んだ。


『あれれ? おっかしいなー? 俺はちゃんと()()使()()に当てたつもりだったんだがな』


『何者!』


 そこに現れたのは剣を持った金髪の男だった。へらへら笑いながら赤髪ちゃんに近づいていく。


『あなたは……!』


『よお、久しぶりだな。俺の事覚えてっか?』


 この男は赤髪ちゃんの知り合いなのか……。


『ええ……覚えてますよ。あなたは卑劣極まりない最低な男ですからね……!』


 赤髪ちゃんは何か嫌なことを思い出したのか、憤怒の感情を露にし、剣に魔力を込める。


『ああそうだ、俺は卑劣で最低な男だ。で、だから何?』


 金髪の男は悪役っぽく舌をなめずり回した。卑劣で最低なんて言葉は、もはやこの男にとって、褒め言葉なのかもしれない。


『あなたを斬る! ダスト様を傷つけたあなたを許さない!』


『だからー、元々お前に当てる予定だったんだってー、そしたらさー、そいつが邪魔してきちゃってさー、ホント萎えるわー、もう、そのまま死ねばいいのに』


『ふざけるな!』


 赤髪ちゃんは金髪の男の態度に腹が立ち、怒りの一撃をぶつけた。だが、金髪の男は押されながらもその一撃をギリギリ剣で受けきっていた。


『はあああああああああ!!』


『くっ……流石につらいな……』


 金髪の男はそうしている内に、とうとう赤髪ちゃんの剣を押さえきれなくなり、男の剣が上空へ弾け飛んだ後、男は斬られる前に大きく後ろへ下がった。


『くそっ! やっぱ、こいつ強えわ……俺の不意打ちが、こいつに当たらなかった時点でもう詰みなんだよなー……仕方ない、逃げるか』


 男はこのままでは勝ち目が無いので、その場から撤退しようとした。本気で逃げる気のようだ。


『逃がすか!!』


 赤髪ちゃんは、何としても男を斬ろうと追撃する。


 だが、男は煙幕弾らしきものを取り出し、もういつでも逃げ切れる準備ができたようで、余裕だと言わんばかりに、不適な笑みを見せつけてこう言った。


『あ、そうだ1つだけ伝えとくわ』


『何だ!!』


『火の国に俺らのアジトがある。そのアジトに、()()()()()()()()


『なっ……!?』


 その事実を聞いた瞬間、赤髪ちゃんの足は止まった。


『会いたければ来いよ、火の国に……じゃあというわけで、ドロン!』


『待て!!!』


 金髪の男は煙幕弾を投げて、込み上げる煙が辺り一帯を包み、それを利用して姿を眩ませた。


『くっ……母が……あいつのアジトに……』


 赤髪ちゃんはしばらく呆然としていたが、すぐに俺の方を向いた。


『ダスト様! 大丈夫ですか!』


『……まだ……生きてる……よ……』


 本来ならこの出血量は死ぬ。だけど、()()()()()()()()()()()()()()、どんどん傷が塞がり、身体が回復していく。おそらく、あいつが言ってた保険というのは、この事だろう。


『この魔法は……ダスト様、いつの間にこんな高度な魔法を……?』


『いや、俺じゃない……ですよ……』


『じゃあ、なぜ……?』


 こうして会話している間に、傷は完全に塞がっていた。しかもそれだけではなく、疲労感までもキレイさっぱり消えている。まるで、某バトルマンガのありがたい豆を食べたかのような回復っぷりだ。


『お兄ちゃん……大丈夫なの……?』


『ああ、この通りピンピンしてるよ!』


 俺は両手を広げて無事な事をこれでもかっていうくらいアピールした。するとブロンズちゃんは喜んだ……わけもなく、なぜか再び涙目になり俺に抱きついてきた。


『ばかばかばか! こんな無茶して……本当に死んじゃったかと思ったじゃない……!』


 どうやら、かなり心配をかけてしまったようだ。こんなに泣かれるとは思わなかった。


『ブロンズちゃん……ごめんね』


『約束して……もう二度と無茶な事しないで』


 約束……か……。こんな物騒な世界で、無茶な事をするなって方が無茶だが……。もしかしたら魔王の奴もブロンズちゃんとの約束を守れず、苦しい思いをしてたんだろうか。


『分かったよ、俺は、もう無茶しない』


『絶対だからね!』


 ブロンズちゃんのこんな顔を見てしまったら……もう、無茶な事なんてできない……でも、もしやむを得ず、約束を破る事になったら……。


『もう! 忘れてると思うけど、私、()()()()()()()()()! やむを得ずとかなし! 絶対無事に生き残る方法を常に意識して、それを必ず実行すること! いいわね!』


 そうだった、すっかり忘れてた、ブロンズちゃんは心を読めるんだった……。


『うん、分かったよ。何があってもしぶとく生き残るよ』


 俺はブロンズちゃんと約束を交わした。もう無茶はしないと。口約束なんて簡単に破られるものだけど、だけど……この約束は重い……とても重い……。


 俺はこの瞬間、心の中で誓った。


 今後は、()()()()()()()()()()()()()()と。




第27話を読んで下さり、ありがとうございます。

第28話の方も、出来次第、投稿していきたいと思います。

宜しくお願い致します。

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