第344話『消えない灯火』
遅れてすみません。
大変お待たせ致しました。
第344話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
――夕食後、俺はまたノルン様の部屋へ招かれた。
この展開はもう今日だけで3回目だ。いい加減早く話を進めてほしい……テンポ悪すぎなんだよ……。
椅子に座っていたノルン様が立ち上がると頭をさげて、
『先程は失礼致しました。どうも今日はちょっとだけ調子が悪くてですね、最高にクソ不味い料理をあなたの口に入れてしまいました。てへ☆』
さすがに申し訳無さそうにしていると思ったら、頭にこつんと拳を置いて舌を出して、少し恥じらうような表情を見せた。ふざけんなこの野郎。
『怒られたのに反省してなさそうですね』
『反省はしてますよ。次はバレないようにしますので』
ノルン様は満面の笑みでそう言った。
問題はそこじゃねえだろ。てかまたこっそりやる気かよ、勘弁してくれ……。
会話の前哨戦を終えると、ノルン様は本題に入ろうとしているのか、真面目な表情に切り替えた。
『さて、では本題に入りましょう。ダストさん達を鍛えるという話です。まず私達がゼウスに対抗するのはいいとして、それだけの力が我々にはあるのか……否、ありません。ゼウスの前では私ですらどうこうすることはできません』
『そうなんですか?』
『はい、ゼウスも私と同じくこの世界を管理するものですが、ゼウスは別格。管理者の中でも最高峰の力を持ちます』
『そのゼウスに対抗する為に俺達をゼウスと戦えるレベルにまで強くするって事ですよね。ゼウスとは会ったことはありませんが……俺の仲間達ですら勝てないのなら……正直俺なんかじゃ到底無理じゃないですかね……』
話を聞いた限りでは、アクタやルシウスもゼウス達に立ち向かっているが、倒されるのも時間の問題みたいだ。アクタとルシウスにすら勝てない俺がどうやってゼウスを倒せばいい? 力の差があまりにも遠い。月とスッポンどころじゃない。月からすら手が届かない宇宙の果てとスッポンに踏まれる羽虫だ。
大げさに例えているわけではなく、本当にそれぐらいの差がある。どんなに時間をかけて努力しても決して届かず、見上げても果てが見えないほどの巨大な壁。
なんとか越えようとしても、心のどこかで“無理だ”“こんなの越えられるわけがない”“もういいだろ”と囁く。
“諦めるな”なんて簡単に言ってくれるが、闘志はいつまでも燃え盛ってはくれない。どこかで水が流れ込んであっさりと消えてしまう。
この世の中は残酷だ。力無き者はどうあがいても潰されていく運命。
俺は――弱い。
――しかし、それでもまだ灯っている。ほんの僅かな火が。
『あらまあ、ずいぶんと弱気なんですね。あなたらしくもない』
『いえ、俺は元々後ろ向きな人間なんでね。そりゃ今の俺でも到底勝てないと思っているアクタやルシウスの2人がかりでも無理なら無理でしょうよ』
俺らしくないか――よく分かってるじゃないか。
――そうだ。ノルン様の言うとおり俺は諦めてなどいない。俺がこんなに消極的な話し方をしたのは、ノルン様に同情を誘うつもりだったからだ。
俺があおいちゃんを表面上で演じる事でノルン様が憫察して、俺に八つ当たりする心配を消そうという魂胆だ。
未来のマーリンのふざけた手紙の件もあって、協力しつつ腹いせに俺をいじめるのかと思ったからな。
ついさっきも記憶が消し飛ぶほどの料理を食わされたわけだし。
『なるほど。ダストさんには何か心配事があるようですね。それが何かまでは分かりませんが、ご安心下さい。別に何もバトル漫画のような修行をするわけではありません』
『そうなんですか?』
『それはそうでしょう。あなたのようなクソ雑魚人間の身体を鍛えたところでたかが知れてます。はっきり言ってゴミです』
ノルン様は大変ニコやかな表情で何の躊躇いもなく俺をディスった。
そろそろ泣いていい?
『そこまで言わなくても……』
『事実でしょう? この変態野郎。今まで見たパンツの数だけ土下座して詫びろ』
ハハハ、口が悪いぞこの野郎☆
『やっぱ八つ当たりしてません?』
『してませんよ』
『そうですか、へぇそうですか……本音は?』
『しつけえですわよ、いい加減にしないとバトル漫画みたいな修行させて、二度と歩けねえ身体にしてやりますわよ☆』
『ハハハ、それは嫌です☆ この話やめましょうか』
『ええ、それが賢明です』
これ以上突っ込むと本当にヤバい気がした。冗談ではなくノルン様ならマジで出来そうだし……。
『――話が脱線してしまいましたね、本題の続きを話しましょう。ダストさん、この世界はゲームということをご存知ですね?』
『はい、その辺は未来の神様に聞きました』
『ゲームを嗜んでいるであろう貴方に聞きますが、ゲームで強くなるにはどうしますか?』
『レベルを上げる事です――ってあぁ、そういうことですか』
『さすがダストさん、洞察力が高いですね』
もうここまで聞けば何をするのか大体察しがついた。
この世界がゲームなら強くなる方法は1つ。レベルを上げればいい。それも最大限上げれば世界最強だ。
だがそれだけでは神とも呼べる管理者に勝つことはできないだろう。何ならその管理者の権限によって無理やりレベルを下げられるかもしれない。
そうさせない為の改造。それを俺に施すというわけか。
俺は答え合わせをするように、その旨をノルン様に伝えた。
『90点です。惜しくも完璧な推理ではありませんでしまが、でも素晴らしい。まだ具体的な説明もしてないのにここまで読み取れるなんて、ダストさん、あなた思ったよりすごいですよ!』
さっきまでめちゃくちゃ罵倒しといて、急に嘘みたいに褒めてくるとかDV男か。
『それで90点の理由を知りたいのですが』
『あぁ、別にダストさんの推理が間違っているわけではありません。全て合っていますよ。ただその改造を施すのは、他の管理者からあなたへのステータス干渉を防ぐのとは別にもう1つあります』
『もう1つ?』
『はい、それは……レベル上限です』
『レベル上限……? はっ! も、もしかして……!』
『はい、ダストさんには……いいえ、ダスト軍の皆様のレベル上限を大幅に引き上げた上でレベルを効率良く上げて頂きます』
第344話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




