第342話『対話』
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ヒルドさん式凧揚げタクシーに乗った俺は、ボサボサになった髪を整えて、再び女神ノルンがいる部屋の前に立った。
『準備はいい〜?』
『は、はい……』
数十秒間宙に浮いていたので、俺の胃の平穏が荒されたのもあるが、コミュ障特有の不安と緊張の波が押し寄せて、胃酸が上流したがっている。
――でも、ここでちゃんと女神ノルンの言うことを聞けば俺の望みは叶う。もちろん俺が神を倒すほどの力を得られるのか、その不安はある。
だが、俺は……あの魔王城での日常をまた皆で過ごしたい。それこそが俺の望みであり快楽だ。それを実現する為なら、どんなこともやってやる。たとえどんなに才能がなかったとしても――
『コンコ〜ン、ノルン様〜ダスト君を連れてきました〜』
コンコ〜ンって……何も扉を叩く音をわざわざ口に出さなくても……。まあ可愛いからいいけども。
『お入りなさい』
『失礼します〜』
『し、失礼します……』
この扉の中に入るのは2度目ではあるが、まだ緊張感が身体中を迸り、手足の動作がどこかぎこちなくなってしまった。
最初に見たときと光景は殆ど同じだ。真ん中に座っているのは女神ノルン様で、その隣にケイデスに似た従者の男がいる。
ケイデス(?)の俺を見た時の反応はノーリアクション。お客様の前で粗相が無いように姿勢を改め、まるで王国の騎士のように堂々たる態度を見せている。
どうやらここにいるケイデスも、俺の知るあいつとは別人のようだ。
『先程お会いしましたが、自己紹介がまだでしたね。初めまして、私はノルン、女神ノルンです。このヴァルハラの主であり、ここの土地の管理者でもあります。こちらの従者の名はヘラクレス。そこのヒルドと同じく私専属の従者です』
ケイデスに似た従者ヘラクレスは、無言で俺に頭を下げた。
『初めまして、私の名前はオーガスト・ディーン。私立東都魔法学院で教員を勤めている者で――』
『はい、もう全部知っております。あなたの何もかもを』
『何もかも……?』
『はい、あなたがこの世界とは全く関係のない異世界からやってきたことも、学校でいじめられて復讐を図ったことも、魔王城で召喚されてそれから大変な目にあったことも……そしてあなたがかわいい女の子達をやらしい目で見ていたことも、何もかもお見通しです』
『最後の何ですか』
『本当のことでしょう? とぼけてんじゃねえですわよ、この変態野郎が。うふふふふ』
天使のような眩しい笑顔のまま、ストレートに俺を貶した。
初対面だと言うのに、1ミリも躊躇いがない罵倒に俺は怒りよりも困惑を覚えた。
まあ確かにさっきまでの俺はノルンを性的に襲おうとしたとんだ性獣だったから、今は違うとはいえ姿が同じであれば、怒りを買っていても無理はないが。
『あの……先程は自分が自分じゃなかったとはいえ、とんだご無礼を働いてしまい誠に申し訳ございませんでした』
俺は頭を下げて謝罪した。
そんな俺を見たノルンは不思議そうにパチパチとまぶたの開閉を繰り返している。
『え、あぁ……それは別に気にしなくていいですよ? だってあなたは被害者じゃないですか』
ノルンは嘘偽りのない真面目な顔つきでそう言った。
『確かにあれは俺の意志ではありませんでした。ですが、ああいう事を事前に予測せずに“アレ”を発動してしまったのは自分自身なんです。もし俺が“アレ”を発動しなければ、こんなことにならずに済んだんです』
『だからあなたが1番悪いと』
『はい、少なくとも自分がトリガーなのは確かです』
先程の行為を許してはいけない。例えるなら酒に弱い酔っ払いが正常な判断をできなかった故に犯罪を起こしたが、泥酔状態だから仕方ないと無罪になるようなものだ。
そんなことが許されていいのか。否――そんなわけない。
そこに俺の意志がなくても罪は罪。償うべきだ。
『なるほど、あなたにしては随分と謹厳な回答ですね。てっきり、アレは自分の意志じゃないから仕方ないで済ませるものかと思っておりました。こちらこそ無礼を働いてしまったことをお詫びさせて下さい』
律儀にもノルンは頭を下げた。
『そんな、無礼なんて……』
『いえ、私はあなたを傲慢で最低で女の子のパンツを舐め回すような目で見る最低男だと思ってたので……』
『やっぱ無礼だわこの女神、最後の何ですか?』
『何ってあなたが女の子のパンツを1351回も見たって、ステータスに書いてありますよね? あまりにも多すぎるのでもしかして意図的にパンツを見ようとする変態なのかと』
『ちょっと待って下さい。何で俺のステータス知ってるんですか?』
本来であればフレンド登録なるものをしなければ人のステータスは見れないはずだ。今のところパーシヴァル以外の人とフレンド登録はしてないはずだから、他の人間が見れるはず無いのだが……。
ノルンは難しい顔をしながら俺の質問に対してこう答えた。
『――そうですね、その辺の事情もあなたに話すべきですね』
『事情?』
『はい、あなたとフレンド登録をしてないはずの私がなぜあなたのステータスを見れるのか。そして私は何者なのか、その全てを話しましょう』
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