第339話『それでも抜け殻は夢を見る』
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『ノルン様、ダストさんを連れてきました』
エフちゃんは扉の前でノックもせずに声だけを向こうに届けた。――その姿はまるで、国に仕える凛々しい騎士のようだった。
『お入りなさい』
扉越しから麗しい女の声が聞こえる。聞いた者全てを暖かく包んでくれる、そんな優しい声だった。
そして扉は、まるで意志を持っているようにひとりでに開いた。
『失礼致します』
礼儀正しいエルちゃんに続いて俺も女神ノルンがいる部屋に足を踏み入れた。
――そこに居るのは、純白のワンピースを纏った女神らしき女と、その両端に従者らしき2人がいる。内1人はふくよかな胸部を持ちながら布面積が異常にちさい女、なかなか俺好みだ。あとで美味しく頂くとしよう。もう1人は筋肉質の男だ。興味がない。
いや、ちょっと待て。あの2人――ケイデスとケールさんにそっくりじゃないか……!
――なるほど、かつての俺の仲間と酷似しているわけか。そういえば記憶にもその記録があったな――戦い方を熟知した。これで奴らをいつでも葬れる。まあ女の方は俺が遊んでからだが。
やめろ、手を出すな。
――無理な相談だ。特にあの真ん中の女……美しい。確かに俺の言う女神クラスの強さを持ち合わせているようだが、俺の手にかかれば大した事はない。まずあのノルンらしき女を瀕死寸前にまで追い込んだ後、従者の男を殺し、女は使い物にならなくなるまで慰み者にした後殺す。そしてメインディッシュに女神ノルンを■してから殺す。
ふざけるな。
――止めても無駄だ。今の俺の思考回路はどんどん俺に染まっている。もう語彙力も反論する気力も無いだろう。
…………。
――思考が動かなくなったか。思ったより早かったな。だがこれで邪魔者は消えた。
俺は快楽を求め続ける為だけに生きる。邪魔をする者は容赦なく虐殺する!
あぁぁぁぁぁ、俺はもう堪えられねえ!
俺は上半身を脱ぎ捨て、飢えた獣のように女神ノルンらしき女を襲いにいく。
『うおおおおおおおおおおおおお!!!』
――しかし俺はこの瞬間、ある違和感を覚える。
『ん?』
俺がこうして堂々と敵対行動を起こしているのにも関わらず、この場の誰1人として表情が変わっていない。
従者の2人も武器らしき物を持っているにも関わらず、特に構えたりせず、ただ傍観するだけ。
どういうことだ?
悪い予感を覚えた俺は思わず足を止めて、代わりに森の管理者Fを人質にする作戦に出た。
そうすれば向こうも迂闊に手を出したは来ないだろう。もし俺の要求を飲めない場合に、森の管理者Fの服を少しずつ脱がしていけば、人を守る立場のノルンも俺に従わぜざるを得ないだろう。
俺自身あまり幼女に興味はないが、まあこれはこれで一興だ。
予定は狂ったが、最終的にノルンを■せるなら問題はない。
――そう思っていた。
俺が森の管理者Fを捕まえようと踵を返して走り出すと、突然床から魔法陣が出現し、俺の身体は氷漬けにされたかのように微動だにしなくなってしまった。
『なんだこれ……なんだよこれは!!!』
この時代に氷魔法以外に身体が動かなくなる魔法は存在しないはずだ。じゃなければ橋本ルカのような異世界の能力……妖精の力か何かしかありえない。
ならば、これは何だ……?
『貴様! 何をしたァ!』
俺は森の管理者Fを睨みながら、あくまでノルンに向けて言葉を発した。
すると、ノルンはカツカツと足音を立てて俺の視界の範囲内まで歩いてきた。
『あなたがここに来ることは分かっていました。それも壊れた歯車によって人格変動が起きてる状態なのも、私達は全てを把握しています』
『なんだと……? 貴様なぜそれを……?』
『あなたは危険な存在です。その危険な人格を封印するためにダストさん。あなたを3等分させて頂きます』
『封印? 3等分? 一体何を――』
『もう既に準備は整っています』
ノルンがそう言うと、魔法陣が強く輝き始めた。何かが起動した合図だろう。
『おい、これは何だ! 俺を封印するとはどういうことだ!』
『そのままの意味です。あなたの人格は彼らによって封じ込むのです』
このままでは俺は封印される。具体的にどう封印するのかよく分からないが、今の俺にこの状況を脱する方法はない。しかもどういうわけか魔法も使えない。
『やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
叫びも虚しく、俺は魔法陣の光に呑まれ、そのまま意識の底へ沈んでいった……。
――――
俺は夢を見ていた。
俺によって、肉体と意識の所有権を完全に奪われ、“心の抜け殻”となっていた俺は身体のどこか分からない空間に漂っていた。
どうにか意識を取り戻そうとしても、どうすれば戻れるのかさっぱり分からない。今の俺には何をしても無駄だろう。
しかし、それでも俺という人格は残っている。記憶もある、性格もそのままだ。故に夢は見る。消えて無になったわけではないから。
その夢の内容なんだが、なんとか未来へ帰った俺が、ブロンズ様とシュタインと桐華を約束通りアイドルにして、夢を叶えた後、俺はみんなと幸せな日常を過ごした……そんなお手本のような理想的な夢だった。
しかし、その中には――誰かがいなかった。
――――
『ん? ここは……?』
目を覚ますと、そこは見慣れない天井に知らない匂い。
俺はベッドの上で眠っていたようだ。
『またこの展開か……』
気がついたら知らない天井が目に映るなんて、何回体験したと思ってる。俺はもう飽きたよ……。
『ん? あれ?』
何だか身体が軽い。意識もはっきりしてるし、何よりあいつがいない。
つい先程まで居たはずのもう一人の人格の俺が身体のどこにもいないのだ。
一体何があったんだっけ?
確か俺はあいつに意識を完全に乗っ取られて、それから……。
『あ、そうだ! あの3人は無事か!』
あの場には、女神ノルン、ケイデス(に似た人)、ケールさん(に似た人)が居たはずだ。
もし、あいつが思い描いていた通りの事になっていたら……。
『とにかく様子を見に行こう!』
俺はそう思い、ベッドから降りようとすると――
『あれ?』
どういうわけか、まるで拘束でもされているかのように身動きが取れなかった。
布団の中を調べてみると、そこには――
『は?』
俺を縛っていたのはロープでも拘束具でも無かった。美女の腕だった。
――そう、前回と同じように、ケールさん(に似た人)が俺を抱き枕のようにして、動きを封じていたのだ。
『むにゃむにゃ……』
『……前にも見たなこの展開』
やれやれ、時代が違ってもやってることは同じかい。
さて、今回はどう切り抜けようか。
第339話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




