第26話『ブロンズちゃん、大ピンチ!』
お待たせしました。
通信速度制限がかかったため、投稿が遅くなってしまいました。
申し訳ございませんでした。
第26話できましたので、宜しくお願い致します。
※改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
※2022年2月20日改稿しました。
『あれ? ここは……って、またか』
どうやら俺はまたあの悪夢の中に放り込まれたらしい。
ということは例のあいつもいるんだろうか。でも、何でまた悪夢の中に? 俺はボーッとする頭にムチを打って、なんとか記憶を呼び覚ました。
『えーと、俺は確か……あ、ブロンズちゃんと怪盗ゲームをしてたな……』
そうだった。俺は勝つために、クレーンが攻撃される未来を回避し続けていた。だけど、やけに疲労感が強くて、ふらふらで倒れそうになったところだったので、一旦横になる事にしたが、結局ブロンズちゃんに強制的に治療室に運ばれることになったんだっけな。
『魔法を使いすぎると、ああなるんだな……次から気を付けよう』
『どうやらまた1つ学んだようだな、ダスト』
『誰だ?』
突然何の気配もなく見知らぬ男が最初からそこにいたかのように現れた。いや、どこかで聞いたことがある声だ……というか、あいつだ。全身の姿を見るのは初めてだな。
『あんたが、あの声の主だな』
『そうだ、俺の姿を見たのは初めてだったな、クハハハハハハハ!』
軍服のような格好をした白髪の長身長の男は、何が可笑しいのか高らかに笑った。まるで、虫けらを観察して楽しんでるかのように。
『何の用だ』
『ああ、ちょっと貴様にアドバイスをやろうと思ってな』
『アドバイス?』
『ブロンズとかいう娘がいるだろう?』
『ブロンズちゃんが、どうかしたのか?』
『このままでは死ぬぞ』
『な……!?』
と言われても、正直ピンと来ない。だが、こいつはただ者ではないし、俺を救うために導いてくれるということは分かる。そんな奴が言うのだから、本当かもしれないが……どこまで信頼していいのやら。
『その話本当なのか?』
『無論、真実だ。嘘をつく理由はない』
それだけじゃ、真実を言ってるという根拠があまりにも薄い。”嘘をつく理由がない”っていう事自体が嘘だとということも十分ありえる。
『だが、逆にわざわざ俺に、本当の事を言う理由はあるのか?』
『ある。俺は、娘の後悔する姿を見たくないからだ』
『は? 娘……? まさかブロンズちゃんは、お前の娘なのか?』
『違う。そっちじゃない。俺の娘は、貴様が相当なまでに、うざがっているあの魔王だ』
『え? マジで?』
『ああ、マジだ』
『そうだったのか……ちょっと驚いた……ってそれどころじゃないな、お前の言ってる事が本当なら、今すぐ目覚めてブロンズちゃんを助けないと』
『焦るな、ブロンズはたった今、泣きながら魔王城を出ていった。まだ危険な目にはあってない』
泣きながら? まだ短い付き合いだが、あのブロンズちゃんが、ちょっとやそっとで泣くようなタイプじゃないのは分かる。そんなブロンズちゃんが泣き出すなんて、とてもじゃないが想像できない……。
『それは、ブロンズちゃんが死ぬ未来と関係あるのか?』
『あるな。また魔王に嘘をつかれてしまったというショックが、ブロンズの精神に悪影響を及ぼしている』
また魔王に嘘をつかれた……か……あいつ一体何回嘘ついてんだ? アースちゃんも魔王だけは信頼できない感じだったし、魔王自身も、知らないことが多すぎると言っていたし……。何なんだよあいつ……。
って、今はそれよりも、ブロンズちゃんの事が心配だ。精神に悪影響を及ぼしてるってまさか……!?
『貴様が何を考えてるか知らんが、自害するわけではないぞ』
『自害じゃない? じゃあ、何で?』
『この後、ブロンズは、盗賊団に襲われることになる。最近、魔王城の辺りに人が多くなってきただろう?』
『盗賊団? 初耳だな』
魔王が俺に外出るなって言ってたのは、盗賊団が多くなってきたからなのか。あれ? でも、昨日、ブロンズちゃんは普通に外出してたはず。
『でも、ブロンズちゃんは、昨日外出したらしいが、無事に帰ってきたぞ?』
『それはそうだろう。貴様も知っての通り、あの娘には心を読む魔法を使える。心を読んだ時点で、そいつがどの方角にいるか、どのくらいの距離なのか把握できるのだ』
なるほど心を読めば、相手の目的だけではなく、相手の場所も方角も正確に分かるということか。
『でも、じゃあ何で、今回ブロンズちゃんは、盗賊団に出くわしてしまうんだ?』
『精神に悪影響を及ぼしてると言ったはずだぞ。それに先の遊戯で魔力をだいぶ消耗している。そんな状態で、魔法を使って避ける……なんて事がまともにできると思うか?』
『……無理だな……少なくとも俺だったら、泣きながら魔法がうまく使えるとは思えない』
まあ、魔法なんてまだあまり使ったことがないから、よく知らないけどな。
『そうだろう。おっと、そろそろ時間のようだ。早くブロンズを助けに行くがいい』
『あ、ああ』
暗闇の悪夢に光が差し、俺の意識はその光に吸い込まれるように、現実へ戻ろうとしている。相変わらずなんて神々しい……。まるで、闇の悪魔に対抗する光の天使が降臨したかのようだ。
『最後に言っておく。念のため、お前に保険をかけておいた』
保険って何だ? と問う前に光が全身を覆い、俺の意識は、現実へと戻った。ブロンズちゃん……今、助けに行く!
――その一方、ブロンズちゃんは――
《ブロンズちゃん視点》
私は先ほどまーちゃんに、お兄ちゃんの事を問い詰めてみたが、今は言えないとか、ブロンズちゃんには関係ない……としか言わなかった。
私は悲しかった。だって、まーちゃんは嘘をついてるから。私は心を読めるのよ? まーちゃんもそれは知ってるはずだよね? なのに、また嘘をついた……。
『何よ! まーちゃんのばかばかばか! ろくでなし! 美少女の皮を被ったボケ老人! もう嘘はつかないってあの時約束したじゃない!』
まーちゃんは『ごめん』と謝罪してきたが、私はどうしても許せなくて、涙を落としながら、魔王城の外へ出ていってしまった。
『はぁ……もう何なのよ……』
私は、魔王城周辺の迷いの森をとぼとぼと歩いていた。近くにいた悪意にも気づかずに。
『いてっ、なんだてめえ』
『あ、ごめんなさいって……あっ……』
私はショックのあまりすっかり失念していた。そう、最近ここら辺には盗賊団がうろついていることに。
ヤバい! 逃げなきゃ!
『待てやこら!』
『きゃあ!』
走って逃げようとしたが、その前に盗賊団の男が、私の両肩を押さえつけ、私はあっさりと捕まってしまった。
『こんな魔物が出るような危険なところに、こんな可愛いお嬢ちゃん1人でいるなんて、ただ者じゃねえな?』
『くっ……』
魔法薬さえ……ポケットの中にある、魔法薬さえ手に持ってこれれば……だけどこの男に両腕の自由を奪われている。
当然、腕力だけでこの男を振りほどけない。
攻撃魔法も今は魔力がもうあまり残ってない。現時点で反撃できるような状態じゃない。
男は私の正体に勘づいたわけでもなく、純粋にこう質問してきた。
『噂で聞いたんだけどよ。この付近に魔王城があるらしいな。何か知ってるか?』
魔王城の存在を知られたらまずい! もし知られたら世界中の勇者や冒険者が魔王城を襲いに来る。そうなったら、いくらまーちゃんや、赤髪ちゃんでも、ただじゃ済まない。知らないふりをし続けるしかない。それに……もう誰かが傷つく姿を見るのは、もう嫌なの!
『知らないわ』
幸い私はポーカーフェイスが得意だ。この男はそんなに鋭そうには見えないし、このまま誤魔化せるだろう。
『うーん、そうか、まあいい』
案の定、魔王城についてはこれ以上は聞いてこないようね。このまま私を放してくれるとありがたいのだけれど……さっき魔力を使いすぎたせいか、心が読み辛い……。
だが、私の期待は無情にも裏切られ、男はゲスな笑みを浮かべながら、衝撃的なことを口にする。
『なあお前、めちゃくちゃ可愛いから、俺の奴隷にしてやるよ』
『な……!?』
第26話を見て下さり、ありがとうございます。
第27話の方も、出来次第、投稿していきたいと思います。
宜しくお願い致します。




