第338話『染マル』
お待たせしました。
第338話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
――好みの女かと思えば、まだ身体は未成熟。人気のないこの地であれば問答無用で襲っていたのだが……惜しい。実に惜しい。
心の中で、俺が残念そうに呟く。
黙れ……黙ってくれ……。
『頭なんて抱えて、どうかされましたか?』
『い、いや……何でもない』
『顔色が悪いですよ?』
『本当に何もないって……』
『そうですか。それなら良いのですが』
エフちゃんは怪訝な目で俺を見る。まるで全てを見透かしているような……そういう目をしているような気がする。
そういえば、さっき俺の事情も把握してると言っていた。
もしかして……壊れた歯車も……!?
『ところで、何で私があなたの名前を知ってるか気になりますよね? それも含めて全てお話しします。ただしここではなく、ヴァルハラにて、女神ノルン様がご説明します』
『ヴァルハラ……?』
ヴァルハラと言うと、あの神の居城か? それとも名前が偶然同じなだけか? いずれにしろ運命を感じる。
『はい、ご案内します。こちらです』
『お、おう』
何だかよく分からないが、エフちゃんについていこう。
俺はエフちゃんの小さい背中の後に続いた。
森林が暗いのもあって不安が募ったが、俺が盛り上がった木の根に躓かないように細かく指示をくれたり、喉が乾いてないかとかお腹減ってないかとか、色々な気遣いをしてくれたので、安心感が湧いてきた。
『もうすぐ森を抜けますよ』
エフちゃんからのそんなアナウンスを聞いて、俺は少し肩の力が抜けた。
なかなかに趣のあるこの森林の風景も悪くはなかったが、やはりこう暗いと不安な気持ちになる。早く朝日を浴びたい。
『見えてきました、あれが先程私が説明したヴァルハラですよ』
エフちゃんが指を指したその先には――
『あれは……?』
――森林を抜けた先にあったのは、天に聳え立つ洋風の城。
周りには、風に靡く一面の緑。それを横断するように川がさらさらと流れる。
澄み切った青空がこの美しい光景を更に際立たせている。
『綺麗だ』
思わずそう口に出してしまうくらい、この絶景には心を奪われた。ここは楽園か? それとも天国か?
『そうですか? ただのお城じゃないですか』
『いやいや、まあ城もそうだけど、綺麗なのはこの光景がだよ。すげえ、まるでファンタジーみたいだ……』
『ふぁんたじー? それってあなたの世界にある言葉ですよね?』
『そうそう――って何で知ってるの?』
『言ったじゃないですか。もう既にあなたの事情は把握してると』
『確かに言ってたけど、まさかそこまで知ってるなんて思わないよ』
だが、どうやら知ってるのは単語だけで意味まではよく知らないようだ。興味はないけど仕事だから仕方なく調べた的な。
『ふーん、まあとにかく城の中へ入りましょう。ノルン様がお待ちになっておられますから』
『わ、分かった』
この城の中にそのノルンという女神様がいるらしい。これまで見てきた女神は、性格はアレだけど美女ばかりだった。今回もそのパターンだったりするんだろうか。
――出来ればパーシヴァルくらい熟した身体がいい。そうすれば襲い甲斐があるというもの。
うるさい喋るな。
――例え女神であろうとも、今の俺の力ならねじ伏せられる。そうだろう?
違う、こんなの俺じゃない。俺はそんなこと考えない。
――ノルンとやらを■した後は、そこの森の管理者とやらにも手を出してやろう。小さい娘は俺の好みだろう?
黙れって言ってんだろ!!!!!!!!!!
『ダストさん、どうかされましたか?』
『え……あ、あぁ……何でもない』
特に表情に出してないつもりだったが、どこか態度に出てしまったのかな。気をつけよう。
『そうですか』
『うん』
『……』
『……』
互いに無言のまま城の中へ足を踏み入れた。
中は神の居城で見た城の内装と似たような感じだったが、そんなことはどうでもいい。
――女の匂いがする。それも2つも……!
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ――
――そう反抗するな。俺も女を■したくて仕方がないのだろう? 安心しろ、俺が充分愉しんだ後は俺にも良い思いをさせてやる。
やめろ、そんなものは望んでいない。
――強情な俺だ。まあ近い内に俺は俺と1つになる。そんなくだらん理性など消え去るだろう。
くそっ……!
俺と1つになるなんてありえない、と思いたいところだが、俺に俺の意識が乗っ取られる頻度がさっきからどんどん高くなっている。
今はまだ理性はあるが、俺の思考も価値観も染まっているような気がする。
俺が言う俺と1つになるという発言も間違いではないだろう。
くそ、どうにかならないのか……!
俺を止める方法を……誰か……教えてくれ。どうすれば俺を止められる……!
前を歩くエフちゃんにすら、いやらしく見てしまう。
ダメだ。ダメだダメだダメだ。
手を出しちゃいけない。
もし彼女を押し倒してしまえば――もう二度と彼女は立ち直れなくなる。トラウマになる。そんな思いをさせるのは俺の快楽じゃない。
――それは快楽ではなくただの罪悪感だ。女に手を触れないように言い訳をしているだけに過ぎない。あるいは――俺の故郷の国の染まりきった常識が無意識レベルに拒絶しているのかもしれないな。
そんなんじゃ……ない。
――さて、どうだかな。おっとそろそろ女の匂いが近くなってきたな。どんな肉体なのか愉しみだ。
ヤバい。俺をまたどこかに遠ざけないと――。
エフちゃんやノルンという女神を悲しませる事になる。
だが、今転移魔法を発動するのは難しい。まだ魔力は回復しきってないし、無理して発動したとしてもせいぜい城の玄関前が限度だろう。
ダメだ。こんな魔力が少ない中でこの状況を脱することはできない……。
万事休すか……!
『着きました。こちらの部屋に女神ノルン様がいらっしゃいます』
『あ、あぁ……』
何もできないままついにたどり着いてしまった。
まずい……これは本当にまずいぞ……。
第338話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




