第333話『路地裏舞台』
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第333話の執筆が完了しました。
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――時は昨日の夜に遡る。
不良達に捕らわれていた黄金と銀河を救い出したダストが、3人を連れてその場を離れた少し後の話である。
《不良B視点》
さっきまで俺は仲間達と一緒にマブい女のガキを捕まえて、脱がしたり殴ったりして愉しんでいたところだった。
だが、そこに突然弱そうな男が現れたと思ったら、あっという間に仲間達を水魔法でぶちのめしやがった。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ』
俺は銀色の髪のガキを捕えていたんだが、怖くなって思わず俺一人だけ逃げちまった。
仕方ねえよな?
だってあんな化物相手に勝てるわけがねえだろ! 俺はただでさえ魔法を使うのはあまり得意じゃないのに、ぶっ殺されると分かって挑むなんてバカげてる!
『とにかく逃げねえと……!』
今のところ追いつかれる気配は無いが、なるべく遠くへ逃げるに越したことはねえ。
とはいえ、全力疾走したからさすがに疲れた。ひとまず隠れて休憩だ!
俺はその辺にある室外機の裏に身を潜めた。
『ふぅ……とりあえずここに隠れておくか』
俺は壁によりかかり、そこで一息ついた。
しかし――
『おいてめえ』
『う、うわっ!』
突然後ろから朱色の髪の女が現れた。格好はビキニトップスと長ズボンで、かなり大胆な装いだ。
顔立ちも整っていて、上玉と呼べる女だ。
いつもの俺なら、ここでこの女を押し倒して身体を穢すくらいの事はするが、あいにく今はそれどころじゃねえ。
『な、何の用だ? 今はアンタに構ってる場合じゃねえんだ!』
『てめえから殺意のこもった水魔法の匂いがするなぁ? どういうことだ? まさかこんな路地裏で殺し合いでもしたのか?』
『そ、そんなわけねえだろ! 何言ってんだアンタ!』
嘘だろ……俺はあいつの水魔法なんて受けてないのに何で分かったんだ!?
女は俺と視線を合わせるようにしゃがみ込み、俺の顔についた水滴を舌で拭き取った。
『ひえぇ! ア、アンタな、何やってんだ!?』
女は立ち上がり、口元を前腕で拭き取るような動作を取ると、不敵な笑みを浮かべてこう言った。
『ほらな、てめえについた水滴……水魔法の味がするぜ?』
『は……?』
こいつは何を言ってやがる? 水滴舐めただけでそんなの分かるわけねえだろ!
『あ、頭おかしいのかアンタ! 水滴の味を確かめたいからといって人の顔舐める奴があるか!』
『しょうがねえだろ、こうでもしなきゃてめえの顔についたのが水魔法なのか天然の水なのか確証が得られねえんだからよ!』
『は??? 意味が分かんねえ……』
『意味が分かんねえのはこっちだ。何でてめえ水魔法なんて浴びてんだ?』
『そ、それは……』
ここで水魔法をぶっかけられた被害者ですって言っても、警察呼ばれて、現場調べられて、俺達の悪事がバレちまう。そうなると、また俺が捕まっちまう……ここは誤魔化さねえと……。
『み、水魔法で水を汲もうとしたんだよ! 不味いけど一応生活として使えないことはないだろう! そ、その時についたんだよ!』
もちろん嘘だ。確かに水魔法を使って生活水として使うことがあるのは本当だが、最近はそういう使い方はしていない。さっきも言ったがクソ不味いし、生活用としても使いづらいからな。
『嘘つくなよ』
『嘘じゃねえっつってんだろ! いい加減にしろてめえ!』
イラついた俺は拳を女に向けて思いっきり振りかぶった。痛めつけて愉しむわけでもなく本気でブチのめすつもりで。しかし――。
『なっ……!?』
俺の渾身の一撃は女の手のひらに吸収された。
『この程度か?』
女は俺の拳を握り潰す勢いで手のひらに力を加えた。
『ぐ、ぐわああああああああああああああああああ!!!』
痛え、痛え! クソっ! 女のくせになんて力だ……!
俺の手がミシミシミシと悲鳴を上げる。
このままだと俺の手が使い物にならなくなる。
『痛い痛い痛いいいいいいいいい!!!!! やめ……やめてください!!! 俺が、俺が悪かったです!!!』
嘆くように懇願した。すると女は手を離してくれた。
幸い手は折れてないようだが、痛みは収まらなかった。もう一度拳を作ることも困難だ。
『それで、何があった?』
『は、はい、本当の事を話します……。じ、実は――』
俺は先程の出来事を余すことなく全て説明した。もちろん嘘なんてつかない。もしまた嘘をついたら今度こそ腕を折られちまいそうだからな……。
『なるほどな……嘘偽りは無いだろうな?』
『も、もちろんです! あなた様に嘘をつこうなんて誰がしましょうか!』
俺はこの女に対する態度を改め、媚びへつらう。
仕方ねえだろ。そうでもしなきゃ俺が殺されちまう。それだけは何としても避けねえと。俺に1つでも傷があっちゃいけねえ。一緒に居た仲間なんてどうでもいい。俺だけでも助かるべきだ。
『そうか、じゃあまずお前を連行する』
『れ、連行!? ど、どこにですか?』
『警察だ』
『え!? な、何で警察に……?』
『そりゃそうだろ、少女2人を痛めつけて服を脱がしてなんて極悪非道以外の何になる? 女に手を出した罪は重いぞ? このクズが!』
女は俺をクズを見るような目で睨みつけ、罵倒する。
『だがそれをやったのは俺だけじゃねえ! あいつらだ! あいつがあのガキを襲おうぜって言ったんだ! 俺の発案じゃねえんだ!』
『関係ねえ、それでもてめえがやったことには変わりないだろ? 罪から逃れようとするな!』
『何で俺だけこんなに言われなきゃいけねえんだ! あいつらだって悪いだろ! 説教ならあいつらに――』
『黙れ!!!!!!!!!!!!!!!』
女のとてつもなく大きな怒号が鼓膜を突き抜けた。
『ひ、ひぃ……!』
俺は思わず尻もちをついた。
女は再び視線を合わせ、俺の胸ぐらを掴んでこう言った。
『もういい今は喋るな。続きは署で聞いてもらえ。不快だ』
女はそう言った後、俺の顔面と腹を殴り、俺は何もできないまま失神した。
――――
『それにしても、ほう……この水魔法、なかなか面白い使い方をする。近い内に会えるといいな』
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