第331話『教員生活編〜不良粛清〜』
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私に構うな、撃て。
君の性格ならば、そう言うだろうと思っていた。
きっとゴールドちゃんが同じ状況になっても、皆を守るために同じように言ったに違いない。
でも、それはできない。たとえどんな理由であろうと、俺は君を撃つことはできない。
美少女だからとか、教師の義務だとか、過去の悔恨だとか、そういう理由じゃない。
もうこれ以上、俺の大切な人達が傷つくのを見ていられないんだ。
そんな漫画の主人公みたいな、カッコいい綺麗事のような理由だけど、結局は俺の欲望。
黄金が傷ついて、銀河と銅が泣く所を見たくないという俺のわがまま。
――あぁ、なんで俺ってこんな時だけ身体が軽くなるのだろう?
その答えはもう分かっている。
俺の持つ壊れた歯車に、そういう資質が備わっているからだ。
“それ”を発動して起きてからずっと身体が軽かった。まるで自分の身体じゃないみたいに。
副作用どころか、もはやメリットしかないその状態で俺はなぜだろうと不安に思ったが、今確信した。俺はまだ壊れた歯車を発動したままだったんだと――
俺は足を踏み出した。人質を取られているのにも関わらず。
決して黄金を見捨てたわけじゃない。俺のわがままは黄金を助け、銀河と銅もこれから先、心の底から笑顔で過ごしもらうことだ。
じゃあなぜ彼女を見捨てるような真似をしたのか?
簡単な話だ。
相手の目で捉えきれないくらい速く動けばいい。
そうすれば人質を傷つけずに不良Aに近寄ることができる。
現にこうして、不良Aに近づいても何もしてこない。というかほとんど動いていない。まるで時が止まっているかのようだ。
2歩目――まだ時が止まっている。
3歩目――まだ時が止まっている。
4歩目――まだ時が止まっている。
5歩目――ようやく時計の秒針が動こうとしている。世界が時間を数え始めた瞬間だ。
6歩目――相手の表情もほんの僅かだが動き始めた。ただこの段階ではまだ俺が動いている事に気づいていないだろう。
7歩目――何も変わらない。
8歩目――何も変わらない。
9歩目――もう間近。相手が持ってるナイフは1ミリたりとも動いていないし、俺がこんなに近くにいることにも気づいていない。
そして10歩目――俺は相手の手を振りほどき、黄金を解放する。
――俺は足を止めた。それから時は正常の速度で流れた。
『うわあああああああ!?』
不良Aは俺がいきなり目の前に現れた事に対しての驚きで思わず尻もちをつき、その体勢のまま逃げるように後ずさりをした。
黄金達3姉妹も、マジックショーでも見てるかのような現象に直面して、驚愕の表情を浮かべている。
驚くのも無理はない。みんなからしたら俺が不良Aの目の前まで瞬間移動して、いつの間にか黄金が解放されているのだからな。
1万年後の未来だったら、まずこれを見て、一体どんな魔法を使ったんだと考えるはずなのだが、6属性しか使えないこの時代でこれをファンタジーじみた超常現象だとは思わずに魔法だと思う者はいないだろう。
『お、お前、何なんだよ!』
不良Aは化物に指を指してそう言った。
『俺はこの娘達の担任の教師だ』
俺は自分の役職を素直に告白した。
『せ、教師だと……? ふざけやがって!』
先程の超常現象があったにも関わらず、不良Aは怯まず俺に殴りかかってきた。しかも、その拳には炎を纏っていた。
――ほう、うちの生徒でもないのに、なかなか工夫を凝らしてるな。
『喰らいやがれ!』
炎の拳から放たれる熱気が先に襲いかかる。その拳には確固たる殺意が秘められている。
俺よりも背が高い男の拳。昔を思い出すようでなかなかの恐怖感が襲ってくる。
――だが、それは過去。今の俺は違う。
俺は自分の足に氷魔法をかける。これで踏むだけで辺りを凍らせる氷の足をゲットした。
『あいにく、暑いのは苦手なんでね!』
俺はそう言って不良Aの足の上を踏みつけた。
すると、その踏みつけた所から氷が広がっていく。
『う、うわぁ! 氷魔法だ!』
気づいた時にはもう遅い。
やがて、その氷は不良Aの全身を侵食し、氷の人形として爆誕することになるだろう。
『あ……あぁ……あああ――』
不良Aは氷漬けにされることに恐怖を抱きながらも何もできずに、共にそのまま氷の人形と化した。不良Aが纏っていた炎も氷を溶かしきれずに煙となって消えていった。
しばらくすれば氷は溶けるだろうが、その頃には警察のお世話になっていることだろう。
俺は匿名で警察に通報し、黄金達を連れて白鳥家に戻った。
黄金達が事情聴取される可能性や、俺の素性がバレないようにするために警察に見つかるわけにはいかなかったからな。
俺は白鳥家からパーシヴァル達にスマホで連絡をした。
今日黄金達に起こった出来事や、精神が大きく疲弊した彼女達をこのまま放っておく事はできなかったので、今日だけはマーリンの家に泊まらせることはできないかと相談した。
家主からも許可は出たので、俺は彼女達をマーリンの家へ連れて行った。
あの3姉妹とあまりにも容姿が似すぎている黄金達にあおいちゃんはかなり驚いていたが、それでも客人として丁寧に接してくれた。
黄金は傷が酷かったが、あおいちゃんの丁寧な手当により、すぐに回復した。
銀河と銅も一緒に夜ご飯を食べて、パーシヴァルと女風呂を楽しんで、色々な話をして1日を終えた。
黄金だけは眠れなかったようで、俺と少し話をしたが、未だ心を開いてはくれなかった。
だが、なぜ路地裏に入っていったのかは話してくれた。なんでも銀河が路地裏に伝説の生き物である猫を見たと言って、路地裏に入ったらしい。しかし、そこには猫の姿はなく、あの不良達がそこでたまたまたむろしていたところに遭遇して絡まれた――というわけらしい。
猫を見たというのは気になるが、今はみんな無事帰ってきたことを祝福しよう。
俺はそう思いながら、ベッドに身を委ねた。
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