第327話『教員生活編〜集結するやべー奴ら〜』
お待たせしました。
更新が出来そうだったので先に投稿しました。
宜しくお願い致します。
授業が終わった後の帰りのHRも無事に終了し、あとは職員室で雑務や共有事項、教員同士で打ち合わせ、明日以降の授業の進め方を露出狂のパーシヴァルと相談し、こうして記念すべき教員生活初日は幕を閉じた。
『ふぅ、疲れたな』
『ディーン先生、お疲れ様でした……と言えばいいのか?』
『ああ、そんな感じでいい。出来れば他の同僚にも言ってやってくれ』
『承知した』
パーシヴァルは、律儀にも職員室にいる教員全員にわざわざ『お疲れ様でした!』と、体育会系のような迫力ある声で帰りの挨拶をした。
『いや、そんなわざわざ全員に挨拶して回らなくても……』
他の同僚の方々はそんなパーシヴァルに『元気だね〜』とにこやかな反応を示してくれた。俺に対しても労いの言葉をかけてくれて、なんだか心が暖かくなった。
生徒達といい、同僚の方々といい、良い人多くない? 俺が通ってた高校は生徒教師ほぼ全員クズか傍観者ばかりだったぞ? 世界線が異なるとはいえ、こんなに違うことあるか?
『ディーン先生帰るか』
全員への挨拶を終えたパーシヴァルは、そう言って鞄を肩に担いだ。教師がそんな持ち方をしていいのか疑問だが、誰も何も言ってこないから大丈夫だろう。俺もそんなことでいちいちツッコミたくない。
『ああ、帰ろうか』
俺とパーシヴァルは職員室をあとにし、街のスーパーに行ってルカちゃんに頼まれた食材を買いに行った。
『よし、これで全部だな』
『ああ』
食材でパンパンになったレジ袋を持って、家まで足を運んだ。
その家とは、スーパーウルトラなんとかかんとかマーリン様の家だ。
なぜマーリンの家に行くのかというと、実は俺とパーシヴァルとあおいちゃんとルカちゃんS'とカレンちゃんはマーリンの家で暮らす事になったのだ。
最初は無償で居ていいよとマーリンに言われたのだが、さすがにそれは悪いので家賃を払わせてほしいと、俺達労働組で話したのだ。
ただ、さすが我らが学院長の家は豪邸だ。半分どころか4分の1……いや10分の1すら払える気がしなかった。でもマーリンは、それなら払えるだけでいいよと言ってくれた。
ありがたい話だが、申し訳ない気持ちにもなる。もはや厚意に甘える他無かった。
『――ただいま』
身の丈に合わない豪華すぎる玄関と通路をくぐり抜けると、大きなリビングがそこにあった。
ソファがあり、テレビがあり、シャンデリアすらある。そのどれもがうん百万円相当の高級品だ。恐れ多くて、とても軽々と触れられないが、俺以外の皆は我が物のように使っている。
『あ、ディーンさん、パーシーさんお帰りなさい』
最初に俺達を出迎えてくれたのは、エプロンを身に纏ったルカちゃんだ。どうやら夕飯の支度をしてくれているようだ。
『先にご飯にしますか? お風呂にしますか?』
どこかで聞いたことがある3択のような事を言い出したルカちゃんだが、普通に2択だし、至って真面目に聞いている。卑猥な連想をした俺を許してくれ。
『ご飯にしようかな、お腹空いたし』
『私もそうしよう』
『はい、分かりました。今、作ってる最中ですのでもう少しお待ち下さい。今日はカレーライスですよ』
ルカちゃんは今日の夕飯を発表すると、るんるんと楽しそうにキッチンへ戻っていった。かわいい。
夕食までまだ時間がかかりそうなので、俺とパーシヴァルはそれぞれ与えられた部屋で1人過ごすことになった。
まあ、そこで何もすることないんだけどな。
――と、思ったら、ベッドの下をよく見たら白い布……パンツが落ちていた。それも可愛らしいリボンがついているので、少なくとも俺のではない。
『何でこんなところに……?』
そういえば前にもこんなことがあった。研修の時だ。森の中の小屋の食料庫の中にパーシヴァルのパンツが置いてあったな。当時は何でこんなところに……と思ったが、パーシヴァルがその時から変態に目覚めかけていたとしたら……露出狂がパンツを見られる事に快楽を覚えていたとしたら……。
――いや、もうそれ以上考えるのはよそう。頭が痛くなる。
今はそれよりも、このパンツをどうすればいいのかを考えるべきだ。パーシヴァルのパンツである可能性が圧倒的に高いのだが、もしルカちゃんのだった場合、自分のパンツが男である俺の部屋にあって、しかもパンツの色とデザインも知られて、羞恥の渦に呑まれるやもしれん。
パーシヴァルやマーリンならともかく、純情なルカちゃんにそんな思いはさせられない。
もちろん、このパンツの持ち主がルカちゃんである可能性は彼女の性格を考えても1番ありえないのだが、万が一もある。
今から俺がやることはとても下劣に思われるかもしれないが……やるしかない。
『久々に使うな……慧眼魔法』
本来であれば6属性以外の魔法を使ってはいけないのだが、この家の中には事情を知る者しかいない。つまり、ここなら6属性以外の魔法を使ってもいいのだ。
『なるほど……やっぱりそうか』
案の定だが、このパンツの持ち主はパーシヴァルだ。
慧眼魔法は戦闘以外でも便利な魔法だ。その物に付着した■■■■には持ち主の魔力が僅かだが残っている。その魔力が誰のものか分かれば、すぐに持ち主が分かるのだ。
パーシヴァルの魔力なら、生命を繋いだ時に見ているので、すぐに分かった。
『はぁ……やれやれ。せっかく1人になったばかりだが、仕方がない』
俺はパンツを持ったまま部屋のドアを開けると、ちょうどその先にもう1人のルカちゃんことルカ・ヴァルキリーちゃんがそこを通ろうとしていた。
『あ』
『……えっ……!?』
ルカ・ヴァルキリーちゃん……(勝手に)略してルカヴァちゃんは、女性用のパンツを持った俺を見て何かを誤解し、無言で向かい側の扉をバンバンバンバンと叩き始めた。
『なんだなんだ、どうした?』
その扉の中から下着姿のパーシヴァルが現れた。
『!?!?!????!?!?!?!!!??』
何で男の人がいるのに下着姿なの!? と言いたそうなルカヴァちゃんは、声にならない声を上げて、頭を抱えて、とにかく戸惑いを身体で表現している。
『ルカちゃん落ち着いて!』
俺はルカヴァちゃんにそう声をかけると、キッチンの方からルカちゃんが調理中の状態で駆けつけてきた。
『どうしたんですかー?』
ルカちゃんは、ここで緊急事態が起きたと思ったのか、思わず包丁を持って来てしまったようだ。
『!?!!?!?!?!?!!!!!』
ルカヴァちゃんは、包丁を持ったルカちゃんに片割れの自分はとうとう殺されると思ったのか、思わず飛び上がり、叫びながら玄関の方へ逃げていった。
『あ、ちょっとルカちゃん!』
『おい、どうした! どこに行くんだ!』
『え、ちょっと何があったんですかー? これどういう状況ですかー?』
『!!?!????!????!???!!!』
逃走するルカヴァちゃんの後ろから、パンツを持った俺、下着姿のパーシヴァル、包丁を持つルカちゃん。
3つの驚異が彼女に差し迫る。
『オイオマエラ、ナニヲヤッテルンダ』
そこでルカヴァちゃんの影の中からにゅるっと現れたカレンちゃんが参戦。ルカヴァちゃんからしてもカレンちゃんはかけがえのない親友だ。きっと逃げ惑う彼女も落ち着いてくれるだろう。――そう思っていたのだが。
『カ……レン…………ちゃん!!!!!?!?』
しかし間が悪かったのか、カレンちゃんは人形なのになぜか顔にパックをつけていた。ただでさえ動く人形というだけでもホラーなのに更に顔にパックというオプションがついてしまった為に、大切な親友に恐怖を抱いてしまうという異常事態が発生してしまった。
正直俺も怖かった。
『ただいまー』
『ただいま帰りました』
こんなタイミングで、この家の主であるマーリンと仕事帰りのあおいちゃんが同時に帰ってきた。しかも2人して――
『じゃーん!』
マーリンはなぜか鼻メガネととんがり帽子を被っていた。まるでパーティー帰りのようだ。
『こんな格好ですみません……』
あおいちゃんは胸元全開、スカート丈が異常に短い露出多めのメイド服を身に纏っていた。
『!?!!!?!??!?!?!?!?????!!』
ルカヴァちゃんは、帰ってきた2人の姿を見てとうとう頭が追いつかなくなったのか、頭から煙を出す勢いでオーバーヒートし、転倒した。
『ルカちゃん!?』
このあと、ルカヴァちゃんを部屋に運び、しばらくベッドの上に休ませた。
まあ無理もない。ルカヴァちゃんからしたら、パンツ持った変態に、下着姿の露出狂に、殺人鬼に、人形顔パックに、謎のパーティー帰りに、際どすぎるメイドがこの場に集結してしまったのだ。
何だ、この混沌。
情報量が多すぎて、頭がおかしくなる。
全く……魔王城に負けず劣らずの騒がしさだな。
第327話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




