第326話『教員生活編〜魔法の授業とまさかのカミングアウト〜』
大変長らくお待たせ致しました。
第326話の執筆が完了しました。
またしても更新に時間がかかってしまい申し訳ございませんでした。
改稿作業の方もかなりの時間はかかりますが、進めています。肉体的にも精神的にもあまり良くはないので無理はできませんが、改稿も更新も早く終わらせるようにはしたいと思います。
宜しくお願い致します。
教員生活初めてのHRは、生徒達の気遣いもあって、無事に終了した。
1時間目〜4時間目は国語や数学といった他の学校でもあるごく普通の授業だ。その授業の担当は別の教師が、ブラック組の魔法に関する授業は俺とパーシヴァルが担当することになっている。
やはり大きな学院なだけあって、普通の体育館とは別に魔法の授業専用の体育館も建ててある。そこで午後から終わりまで魔法の授業をみっちりやることになっている。
初めての授業が近づいて、また緊張が重くのしかかる。うまく出来るだろうか。不安すぎてろくに昼飯が喉を通らなかったが、ありがたいことに他の同僚の方達の励ましもあって、元気が湧いてくる。
みんな優しい人だな……俺がかつて通ってた学校とは大違いだ。
――さぁ、いよいよ授業が始まる。俺は体育館の鍵を開けて、生徒達が集まるまで深呼吸を繰り返していた。
一方、パーシヴァルはあまり緊張している様子はなく、むしろ俺に『何かあったら私が主人をサポートするからな』と心強い言葉をかけてくれた。
この学校良い奴ばっかかよ!
『おー! ここが魔法専門の体育館かー!』
『なんかあっちの体育館とは雰囲気違うねー』
『あの的何だ? 弓でも使うのか?』
『パーシーせんせーのジャージ姿、かわいいし、かっこいい!』
時間が近づくにつれ、生徒達が続々と集まってきた。
『先生、全員揃いました。号令をかけて頂いてもよろしいでしょうか?』
学級委員長の森谷晴香が俺に授業を始めるように促してきた。
『あ、あぁ、そうだな』
――しかし、その生徒達の中に例の白鳥3姉妹はいなかった。
『えー、では今から授業を始めます。まずはですね――』
――魔法の授業の内容だが、まず6属性の魔法の習得だ。
魔法はこの世界において、日常生活や仕事で使うことが当たり前となっている。覚えれば将来にある程度は役立つことだろう。なので、覚えるだけなら他の普通の学校でもやっていて、そこでは基本的な使い方を軽く学ぶだけだ。
だが、うちの学院はそこから更に専門的に、より精密に魔法を使う。
例えば炎魔法なら、ライター代わりに火をつける程度の威力のところ、火炎放射器の如く、あらゆるモンスターを燃え上がらせる程度の威力にまで上がるだけではなく、火の形状を鳥に変えて、ファイアーバードとか、剣に炎を灯して、炎の剣とか、他の学校では到底真似できないような事も学ぶことができる。
しかし、そこまでできるようになるには時間がかかる。個人によって多少の差はあるが、それなりに鍛錬を積まないと難しい。
魔法を学ぶとは、勉強をするのと同じだ。
数学の式のやり方が分かれば、答えを導き出せるように、魔法を理解することで、より精密に魔法を使えるようになるのだ。
――ただ、生徒達に魔法を伝授すればいいだけではなくて、その魔法の危険性……つまり教えを受けた生徒が魔法を使って犯罪に加担させないように注意をしなければならない。
これは法律で定められている。
もし、魔法を悪用して犯罪に手を染めたのなら、たとえ中学生であっても容赦なく牢屋送りになる。
それほどまでに魔法は危険なものなのだ。
元々この世界は子供から大人まで楽しめるように作られているので、魔法の習得自体は簡単にできるように設定されている。
つまり、覚えさせることさえできれば小さな子供でさえも炎や雷を出して、犯罪を引き起こすことも出来てしまうのだ。
だからこそ魔法の悪用には目を光らせておかなければならないのだ。
え、待てよ、じゃあこの前病院のリハビリ中に虹皇帝陛下こと魔王が、危険人物を処刑するためとはいえ俺を襲ってきたのは完全に魔法を用いた暴行罪ではないかと疑問が浮かぶ。
そうだ、本来ならばあれは暴力行為なので然るべき罰を受けるはずなのだが、あの場には俺と魔王しかいなかったし、公にバレなければ犯罪なんて存在しないのと一緒だ……なんてそういうわけではなく、国の決定……即ち皇帝陛下の決断だから仕方ないということだ。
そうじゃなかったとしても、もし俺が処刑対象から外れるようなことがあっても、リハビリを手伝っていたと主張すれば、十分言い逃れはできる。現に魔法を使ってリハビリする場合もあるからな。ホンマ薄汚い大人やで!
『よし、その調子だ。いいぞ』
この授業では27人の生徒を13人と14人に分けて、俺とパーシヴァルでそれぞれ魔法の授業を行っている。魔法は魔法でも授業の内容が異なるので、生徒達の希望制で2つに分かれた形だ。
パーシヴァルの場合は“格闘魔法”。つまり、魔法を用いた格闘術を教えている。
パーシヴァルは普段でこそ魔法はあまり使わないが、教員になったのを機に6属性の魔法を完全習得し、それらを使った格闘術を自ら完成させ、生徒達に伝授させている。意外にもパーシヴァルは教え方が上手いので、生徒達も順調に上達しているようだ。
で、俺の方だが、会得した魔法を完全にコントロールできるようにする為に、正確に用意した的に魔法を当てさせる訓練を行っている。
俺からすれば、撃った魔法を的のど真ん中に当てるなんて朝飯前だが、魔法を覚えたばかりの生徒達はまだまだコントロールが非常に難しいようで、魔法を撃っても、的の端に当たったり、そもそも的にすら当たらない生徒が続出している。
というかコントロールってそんなに難しいものなのか。俺が魔法を初めて覚えた時は、コントロールなんてすぐ出来た……というか当たり前にコントロールできるものだと思っていた。
まあ、そもそも時代と魔法の概念が異なっているからかもしれないが、俺に魔法を教えてくれた師匠であるあおいちゃんの教え方がものすごく良かったからというのが大きい。
ありがとうございますあおいちゃん。あなたの教えた事が後世に引き継がれていきます。そう思うと感慨深いと思ったのだが、よくよく考えてみるとあおいちゃんは、はるか未来の人だから、後世なのはむしろ俺らじゃね? あれ? あれれ?
ダストはこんらんしている!
未来人あるある記に載せておこう。引き継いだ技を後世に残そうとすると、それは未来なのか過去なのか、めっちゃややこしくなるってな。
『――今日の授業はここまでです。皆さんお疲れ様でした』
休憩はちょくちょく挟んでいたが、みんな最後まで魔法の授業を頑張って受けてくれた。
『あー、疲れたー』
『もう手足ガタガタだよー』
『でも楽しかったねー』
『パーシー先生かっこいい……どうしよう、好きになりそう……』
様々な感想が飛び交う中、生徒達は体育館を出て更衣室へ向かう。
俺とパーシヴァルも、疲弊に身体を支配されつつも、教員用の更衣室へ足を運んだ。
――しかし、男子更衣室に入ろうとした時に、ある違和感があったので、パーシヴァルに指摘した。
『なあ? パーシー先生』
『何だ? ディーン先生』
『ここ男子更衣室だぞ……』
本来なら女性であるパーシヴァルは女子更衣室で着替えるはずなのだが、何の躊躇いもなく自然に俺と同じ更衣室に入ろうとしている。
『ん? 何か問題があるのか?』
パーシヴァルはキョトンとした顔でそう言った。
『問題だらけだ。そもそも何で男子更衣室と女子更衣室とわざわざ2つに分けられてると思ってんだ?』
『そりゃ異性の前で着替えるのは、その……えっと……ほら色々マズイからだろ? それくらい分かっている』
分かっているとか言っている割には、言い淀んでいるから、なぜダメなのかちゃんと分かって無さそうだな……。
『じゃあ、何で男子更衣室に入ろうとしてるんだ?』
『それは……今男子更衣室に居るのはディーン先生だけだからな。ディーン先生以外の他の異性がいるならさすがに入らなかった』
『俺以外?』
『ディーン先生……いや主人。あなたなら私の全てを見られてもいい、いやむしろ見てもらいたい』
真剣な……それはもう真剣且つ綺麗な眼をしながらそう言った。完全にふざけてる奴の発言なのだが、本人は至って真面目に言っているようだ。
『は?』
俺はパーシヴァルの衝撃的な発言に理解が遅れた。
パーシヴァルの恥じらいの無さは問題だと思っていたが、ここまでとは……。
『お前は何を言っているんだ? いくらお前が無防備な奴でも、見られていいって言うのはどういうことだ?』
『いやだって、ディーン先生、たまに私の胸と尻に視線を向けるだろ。それでさ……その……』
一切恥じらいが無いはずのパーシヴァルは珍しく頬を染めて、更なる衝撃発言をぶちかます。
『実はな――私……露出狂に目覚めてしまったみたいなんだ』
『は……!?』
このあと、とても人には言えないような出来事があったのだが、なんやかんやあって事態は収束した。この事は俺とパーシヴァルだけの秘密に――。
第326話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
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