第323話『ダストVS皇帝陛下②』
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本当に心を読まれているかどうかは定かではないが、魔王は常に俺の一歩先を行っている気がしてままならない。
あぁ――思えば、俺は魔王に一度敗北している。ダークネスに力を与えられたにも関わらず、その期待には答えられなかった。
今と未来では戦い方が違うようだが、めちゃくちゃ強いことには変わりない。
先ほど喰らったパンチも、まともに喰らえば普通の人間ならば間違いなく意識を失っている。今の俺が殴られても意識を失わないでいるのは、身体の調子がかなり良いからだ。もしくは、壊れた歯車を使った影響の1つなのかもしれないが。
しかし、さすがは魔王だ。その強さに感服せざるを得ない。
超速で走るボアウルフよりも速いスピード。かの正義教団の騎士よりも力強い攻撃。
どれを取るにしても、彼女の右に出るものはそうそういないだろう。
――だけど、俺だって諦めるわけにはいかない。
『まだまだああ!!』
俺は氷魔法の代わりに炎に強い水魔法を放った。初動は多少遅れたが、この至近距離で回避するのは魔王であっても難しい。
『ほう』
それでも尚、魔王は笑みを崩さずに水魔法を全身で受けきった。それに伴い魔王の炎は煙と共に空へ消えていった。
『全く、皇帝とはいえ、私は仮にもまだ年端のいかない少女だぞ? なのにこんなにびしょ濡れにするとは……この変態が』
なんて、まるで恥ずかしがりながら罵っているように見えるが、実際は魔王に照れの感情は表れていない上に、身に纏う服装の素材が優秀なのか下着が透けて見えるわけでもない。ただ、はしゃいで水に濡れてしまった子供にしか見えない。
むしろ水に濡れても尚、毅然とした態度を崩さず、笑みも浮かべたままで、敵ながらカッコイイと尊敬の眼差しすら向けそうだ。
『確かに俺は変態だが、最初からアンタをそんな目で見ていないし、見ていたとしてもそんな余裕もない。むしろまだ余裕の笑みが消えないアンタに恐怖を覚えているよ』
『そうか、だが私に恐怖を覚えている割には逃げ出そうという仕草を一切見せていない。それどころか私を睨みつけている。まるで私を倒そうとしているようだが』
バトルジャンキーのようで、よく相手を観察てやがる。
そうだ。俺はまだ諦めていない。実はこういう時のために6属性だけでも戦えるように研修中に訓練していたのだ。
たとえば、ボアウルフを水浸しにしてから雷魔法を放つとかな。
『喰らえ! 雷魔法!』
球状に雷を封じ込めたそれは野球ボールのように投球する。当たれば球状の中身に入っている雷が水浸しの魔王を襲う。
俺が連れて行ってやるよ、甲子園という名のビリビリ地獄にな!
相手が魔王とはいえ、美少女をビリビリにするのは気が引けるが、あれだけの強者相手にそんな躊躇は命取りだ。
戦場に余計な感情は持ち込むな。戦闘に厳しいケールさんが言いそうなことだ。
『ほう』
魔王は自分に襲いかかる雷の球に微塵の恐怖すら感じず、むしろ愉しむように不敵な笑みを披露した。
一体何をするのかと思いきや、魔王は軽く飛び上がり、水浸しになっているのにも関わらず、その幼くて細い足で雷の球をサッカーボールのように蹴り上げた。
そして空へ打ち上げられた雷の球はその形を忘れ、空気と化した。
『嘘だろ……?』
雷の球は掠るだけでも、ナイフの刃に軽く当たるくらいのダメージがある。それがまともに当たれば水浸しじゃなくても、かなり痛いダメージを喰らって、身体もしびれて動けなくなるはずだ。
それを魔王はわざわざ接触して、まるで余裕を見せつけるようにキック技を披露しやがった。
『発想は面白い。だが残念だったな。私にはその程度の電流など静電気とすら呼べぬわ』
そう言っている魔王の顔には汗1つない。本心は分からないけど、嘘やハッタリをかましてるようにはどうしても見えなかった。
水魔法も雷魔法も効かない。他の魔法も試してみたが、どれも魔王には効かなかった。全部直撃したにも関わらず。しかも魔王の身体能力ならば俺の放った魔法を避けることも容易いはずだ。
つまり、魔王は俺の魔法をわざと当たってやってるということだろう。
お前の力を試すために全部身体で受け止めてやると、完全に上から目線、まるで親が子を試しているような、対等とは決して呼べないような格差が天と地レベルで異なる。
未来の魔王は確かに強かったが、まさか過去の魔王にすら、赤子のような扱いを受けるとは……。
これは勝つのは無理だ。6属性の魔法も効かない。身体能力で勝てるわけがない。これはもう絶望する他ない。
せめて6属性以外の魔法が使えたら……。
『何かお悩みか?』
俺の落胆ぶりが表に出ていたのか、息1つ乱さない魔王は俺にそう言ってきた。
『俺はどう足掻いても貴方に勝てそうにない。だから絶望してるところだ』
俺は自分の思いをそのまま素直に吐いた。
『ほう、じゃあ貴様は自分の全力を以てしても私に勝てない。そう申すということか?』
『ああ、そうだよ』
しかし、魔王は俺の返答に納得がいかなかったのか、怪訝な表情を浮かべる。
『本当にそうか?』
『本当だよ』
俺がそう言っても、魔王の表情は変わらない。俺の言うことをちっとも信じていないようだ。
『何だよ、信じられないのか?』
『ああ、信じられんな。あの凶暴な精霊を派手に痛めつけた貴様の力がこの程度だとは、とても認め難いな』
『は……?』
――ちょっと待て、なぜそれを知っている?
『なぜ知っているのかって顔をしているな? ならば教えてやろう。貴様らの行動は全てカメラに収めてある! そのカメラの映像を我々は見ていたに過ぎない! どうだ、驚いたか? 私立東都魔法学院の研修中の新人教師よ』
どうやら、俺があの学校の教師になることも、壊れた歯車を発動して親精霊を痛めつけたこと(覚えてないけど)まで全て把握済みのようだ。
しかし、カメラなんてどこにあったんだ? 細心の注意は払ったつもりだったんだが、カメラなんて見かけなかったし、人も関係者しかいなかった。
『一体どこにカメラが……?』
『カメラがどこにあったのか答えてやってもいいが、その前に私の願いを叶えろ』
『願い?』
『貴様が精霊を相手にする時に出たあの力だ。あれを今すぐ解放しろ』
『なっ……!?』
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