第320話『青色の想い』
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《あおいちゃん視点》
――色々なことがあった。
楽しかったことも。辛かったことも、悲しかったことも。
私が乗っ取られていた時のことはあまりよく覚えていないけれど、何があったかは大体察しがつく。
私は裏切っていた。
お姉様も魔王様もゴールドさん、シルバーさん、ブロンズさん、アミさん、バレスさん、そしてダスト様も――。
私の意志では無いとはいえ、これは完全な背信だ。
たとえ皆さんが私を許したとしても、私はこの問題が全部片付いたあと、然るべき罰を受けます。
そうでもしないと私は自分を許せません。そうじゃなくても私は私を責め続けるでしょう。
それに私は、この時代に来てまた1つとんでもない罪を犯しました。それは――。
精霊との戦いに水を差したばかりか、来たばかりの私なんかがとどめを刺すという美味しい場面を持っていってしまったことです!
本来ならば終始奮闘していたダスト様が止めを刺すべきでした。そうすればダスト様も自分が止めを刺したという事実で自己肯定感が高まって、良いこと尽くめだったのに……。
これではダスト様も、肝心なところで役に立たないクズだと落ち込んでしまうでしょう……。
私はなんてことを……。
やっぱり私はダメな娘です。戦闘でも器量でもお姉様に勝てる要素は1つもないし、空気まで読めないなんて私、やっぱりいない方がいいんじゃ……。
うぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜私のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバーカ!
マーリンさん、ごめんなさい……私、ダスト様のお役に立てる為に来たのに……むしろ私のせいでダスト様が……。
――はい、そのダスト様も精霊との戦いに幕を閉じてから10日ほど経ちましたが、未だに彼は瞼を開けてくれません。
命に別状はないようですが、どういうわけか意識が戻らないのです。
『ダスト様……』
病院のベッドの上でダスト様は眠る。側で私は見守る。
窓から入る風が妙に心地が良くて、それが私にはどうも重苦しくて、悲しくもあって涙まで出そうだ。
『早く目を開けてください、このままずっと目覚めないなんてブロンズさん達が悲しんでしまいますよ』
なんて耳元で囁いてみるが、その声が届くことはない。
目の前に貴方はいるのに、返事1つ返ってこない。これでは、まるでただのしかばねのようだ。
――あぁ、実に空虚だ。
この部屋に命が2つあるのに、まるで1人でいるみたいで、夢の中にいるようなふわふわとした感覚。
ちょっとでも気が狂ってしまえば、叫びながら窓の外へ飛び降りるくらいのことはしてしまいそうだ。
でも、ここは現実。それではダメです。
私は私の任務を途中で放り出すわけにはいかないのです。
新井さんという方とパーシヴァルさんに頼まれました。どうか、できるだけダスト様の側にいてほしいと。
パーシヴァルさんは学院の他の研修を受けているそうなので、あまりこちらには顔を出せないようです。新井さんもそちらの研修に関わっていたり、他にやることがあったりと、多忙を極めているそうです。
なので、私は時間の許す限り、ダスト様の病室へ赴くことにしました。
通常の病院では面会時間というものがありますが、ここは何でも学園直属の特殊な病院だそうなので、時間の制限は基本的にはありません。ただし、本格的な治療が始まれば、さすがに退去を命じられますが。
私の時代では、普通のケガくらいならお姉様のような治癒魔法使いを呼んで治して頂けるのですが、この時代では人の医療知識と技術だけで治すしかないのです。
やはり1万年前なだけあって、未来と比べて不便な事が多い。これから1万年先までこの生活に慣れないといけないとなると、ダスト様とパーシヴァルさんもストレスが重くのしかかることでしょう。
もちろん私自身もですが、私は腐っても騎士です。弱音は吐いてはいけない。むしろお二人を支える立場にならなければ。
そのためにも、この時代の事をよく知っておく必要があります。
この時代に来る前にマーリンさんから、この時代のある程度の常識と知識は身につけましたが、まだまだ分からないことが多い。
まず1番の目的である私達人間が1万年も生きられる方法、次にゼウスを打倒するだけの力を得ること。
それらを模索した上で、目の前の任務をこなすこと。
その任務とは、ダスト様とパーシヴァルさんの場合は私立東都魔法学院の教師として生徒を導くこと。
マーリンさんによると、どうもそれが未来を開く鍵になるようなのですが、因果関係はさっぱりです。
私もダスト様達と同じく教師でも良かったのですが、3人が同じところにいると情報の入手が効率的じゃないので、駅前の店のバイトやバーテンダー等で働くことにしました。
ダスト様とパーシヴァルさんは学院で、私はそれ以外の所で情報を集めていきます。
『今日も目覚めそうに無いですね……もう少しここにいたいところですが……仕方ありません、ダスト様また明日来ますね』
――今は夕刻。私はパーシヴァルさんと一緒に飲食店に行く約束があるので、そろそろ向かわなければ。
そう思い、病室をあとにしようとスライド式の扉を引こうとした……その時だった。
『ぅぅ……あ、あれ……ここ、は……?』
――その声を聞いた瞬間、私の中の不安な感情は遥か彼方へ消え去った。
心のどこかで、もう二度と聞けないと思っていた声が私の耳の中へ確かに届いた。
『あ、あぁ……!』
目尻が熱くなる。目から温かい汗が出てくる。
この感情は何だ?
やっと目を覚ましてくれた歓喜と、彼に対する罪悪感で私の心は、色々な色が混ざったように混沌だ。
ああ、でも私が今言うことはただ1つ――。
『ダスト様、おはようございます。良い夢は見れましたか?』
――ここから私達は進んでいく。膨大で、壮大な険しい道を――。
全ては、皆さんと魔王城で過ごしたあの日々を取り戻す為に――。
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