第318話『真夜中の闇』
大変お待たせしました。
また更新が大幅に遅れてしまい申し訳ございませんでした。
第318話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※このままでは矛盾しかねないような文章だったので、少し修正しました。申し訳ございませんでした。
――夜の街並みは綺麗だ。
家の光。車の光。街灯の光。ビルの残業。
そのどれもがゲームによる技術の一部ではあるが、かつて地球人が過ごしてきた高度な文明そのものを写し出している。
それは、もはや本物と言っても差し支え無いだろう。
――過去の事は忘れよう。きっとアレはただの夢だ。
世紀末な世界に取り残された、そんな漫画のような夢を見たんだ。
そんな戦場に、僕は、私は、俺は、アタシは、自分は――
立っていたんだ。
誰もがそのように思っている。それほどまでに前の世界は残酷で恐ろしい。まさに悪夢のような出来事。
でも、それは全て偽物だから。
悪夢から覚めたのなら、もうそんな思いをしなくていいのだから――
しかし、時折思い出す。
たとえ記憶から抹消されたとしても――あの出来事を、血に染められたあの毎日を、身体が、魂が覚えている――
――痛い。痛い。痛い。
――辛い。辛い。辛い。
助けて。もう嫌だ。死にたくない。
そんな悲鳴を毎晩毎晩聞かされていた。
だがそれは、生き残るためには必死だったから。
誰かから食べ物を奪わなければ生きてはいけない。
便利な道具が無ければ、誰かから奪うしかない。
――だから■した。■した。■■た。■■■。■■■。
だって、仕方がなかったんだ。そうするしかなかったんだ。
許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
あ、夢だった。さっきまで見てたのはそういう悪夢だった。
そう笑う。笑う。泣く。
偽りの世界の住人は未だに夢を見る。
無惨な■し合いを繰り返していたあの現実を――この世界の中で――
――――――――――――――――――――
夜の帳が下りる頃、とある高層ビルの入口に美女が1人。
闇から姿を見せたその人物はカツカツと待ち合わせの場所まで移動する。
その場所に行くにはある方法を用いないと行くことは不可能だ。
その方法とはエレベーターだ。エレベーターで地下まで行けばいいだけだ。
しかし、ここのエレベーターには地下のボタンはない。ではどうやって行くのか?
それは意図的にあるボタンを順番通りに押していくと、地下へ行くようになるのだ。
『…………ふふっ』
不敵に笑いながら、いくつものボタンを押していく。
するとエレベーターは、光るボタンの数字のフロアに行くわけでもなく下降する。
意志のない鉄の箱は女を存在しないはずの地下へ連れて行く。
僅かな揺れが収まると共に扉が開く。
その先にあるのは、コンクリートで作られた通路。しかし、あまり手入れをしていないのか、少し錆びている箇所がいくつか。
その通路を進んでいくと9つの扉がある。
その扉のどこかに■■■■■がいる。
『ふふふ……』
女は■■■■■に会える喜びで思わず微笑んだ。それほどまでに、その人物に惚れ込んでいる。
彼女は普段はここには来ない。別の与えられた任務があるからだ。その役割を完全に果たすまでは変装したままの姿でいるだろう。
今回は定期報告をしにきたのだ。月に一度、新しい情報を閉鎖的な生活をしている■■■■■に仕入れるために。
閉鎖的とは言っても、テレビやパソコンはある。そこからある程度の情報を拾うことはできるが、それだけでは足りない。
■■■■■はある願いを叶えるために世の中を平和にする必要がある。そして、その上で■■■■■は――。
『■■■■■様。アキモトです。定期報告に参りました』
■■■■■は上下3つずつあるモニターを見つめながら、カタカタとキーボードを打っている。
■■■■■が具体的に何をしているのかは、アキモトにも分からない。ただその仕事ぶりに敬意の視線を送っている。
『アキモトか、調子はどうだ?』
『はい、特に問題はございません。……ただ』
『ただ、なんだ?』
『本日昼頃、“神秘の森”に異世界の精霊が現れました。それを討ち果たしたのは私達ではなく、オーガスト・ディーンという男でして』
『ほう、それがどうかしたのか?』
『男は恐らく“例のアレ”を持っております』
『だろうな』
『ご存知でしたので?』
『ああ、俺も画面で見ていたからな。ただその男がなぜそれを持っているのか不思議でならないがな』
『えっと、それはどういうことでしょうか?』
『そもそも、それは“壊れた歯車”という名の兵器だ。この世界の人間に取り憑く悪魔のようなものだ。しかし、取り憑かれたとしても発動しない、あるいは気が付かない内に消滅している。だから心配はいらないのだが、それが覚醒したとなれば話は別だ。覚醒してしまえば一時的にとんでもない力を手に入れることができるからな。だが今は違う。本来であればそれは覚醒するはずのないものだ。なぜなら俺がそのように設定したからな』
■■■■■は普通の人間には無い権限を持っている。それは即ち、この世界の管理者であることを意味している。
やろうと思えば、モンスターのレベルを無作為に上げたり、破壊不能オブジェクトである建物ですら消すことも、さっき■■■■■が言ったように“壊れた歯車”を覚醒しないようにすることもできる。
その設定は神の裁定そのもの。誰一人として逆らうことはできない――が、それを突然この世に現れた男が、何の細工も無しに壊れた歯車を発動した。
それは絶対にあるはずのない現象。
改造ですらねじ伏せる管理者権限が一切通用しない、まさに異端者。
だが、そんな異端者は今までに存在しなかった。
管理者はアキモトとその他大勢の協力者と共に、この世界に存在する全ての人間の情報をデータベースに収めている。
その情報に漏れはなく、確かな信頼がある。
だからこそ、今回の異端者が現れた事自体が常軌を逸する何かが起こったと言える。
『では、あの男は……?』
『ああ、おそらく未来から来たんだろうな』
『未来から……!? そんなことが可能なのですか……?』
『まだ可能性の話でしかない。とにかくそのオーガスト・ディーンという男……監視する必要があるな』
『それでしたら、こちらで見張りの者をこちらでご用意させて頂きます。意外と彼の近くにいるようなので』
『頼んだぞ』
『はっ、この秋本春奈ことダーク。貴方様のお役に立てるように常に最善を尽くさせて頂きます!』
『良い心がけだ。今日はもう下がれ』
『もう……ですか?』
アキモト改め、ダークは首を傾げながらつぶらな瞳でそう言った。まるでまだ帰りたくないと言っているようだった。
『ん? どうしたのだ?』
■■■■■はダークの仕草に戸惑いを覚えている。こちらとしては仕事に集中したいので、さっさと帰って欲しいと思っているのだが、ダークはこんな自分をずっと支えてくれた仲間だ。無下に扱うわけにはいかないと、そう思っている。
『わたし……まだ■■■■■様とお話したいのです……ダメ……ですか?』
ダークは頬を染め、第二ボタンと第三ボタン、次に第四ボタンと次々と肌と下着を顕にする。これはお話と言いつつ、完全に誘っている合図だ。
ダークはいつどんな時も■■■■■の事を想っている。■■■■■の為ならどんな汚れ仕事だろうとどんなに人を■すことになろうと喜んでやるだろう。それほどまでに惚れ込んだ者に情欲を抱くのは不自然ではない。
『はぁ……仕方がない。少しだけだぞ』
『はい! ありがとうございます!』
2人は寝室のベッドへ移動し、身体を重ね合わせ――ることはなく、この後めちゃくちゃゲームをした。
(もう、■■■■■様ったら照れ屋なんですから〜)
ダークはピンク色の妄想通りにならなかったのは残念だが、まあこれはこれで楽しいと思ったのであった。
第318話を見て下さり、ありがとうございます。
次の展開の構築もだいぶ整ってきたのですが、やるやると言ってあまり手を付けてない改稿作業があるのと、日々の疲労がなぜか増してきてるのでまた更新が遅れるかもしれません。
楽しみに待って下さっている皆様には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
前も言ったように放置はせずに必ず完結させますので、どうか信じて頂けると幸いです。
こんなダメ作者で恐縮ですが、何卒宜しくお願い致します。




