第317話『特別な力を持った少女達』
大変お待たせしました。
実はまだ話の構成は完全に構築できてませんが、冒頭の部分は公開して大丈夫と判断したので投稿させて頂きます。
宜しくお願い致します。
かくして勇敢な戦士達の奮闘により、精霊との戦いは幕を閉じた。
直に新井零士が目を覚まし、早急に、且つ粛々と後始末をつけてくれることだろう。
新井零士以外の倒れている戦士達も次々と意識を取り戻し、自身の回復の為に休息に入るなり、重傷者を手当するなり、それぞれの役割を全うするだろう。
――禁忌の力に手を出した者は除いて。
その一方で、この精霊襲撃事件を遠くから傍観してる者達がいた。
遠くから、というのは離れたところから遠目で観察していたわけではない。
肉眼では見ることができないほどの超小型カメラを、使い魔のように操れるプランクトンサイズのハエに取り付けて、事件が起きた森周辺を彷徨かせて、ダスト達や精霊の様子をカメラに収めていた。
そのカメラの映像を監視していただけである。
その者達がいる所は、この国のどこかにある建物のある1つの部屋。
誰もが過ごしているような、至って普通の内装でありながら、人間が立ち入ることはできない領域。
それは、人間ごときが神の聖域に足を踏み入れるなど烏滸がましいから……というわけではなく、人間だからこそ、その領域に入ることができない。
そういう結界を張っているだけに過ぎない。
何故、人間避けの結界が張られているのかと問うてみると、その者達はあっさりと答えてくれる。
それは――“毎日のように私達だけで女子会がしたいから“。
つまり、男いらずで恋バナしたいだとか、一緒にお茶やお菓子を頂きたいとか、そんなありきたりな理由である。
現在、その部屋に居るのはそれぞれ髪色が全く違う美女が6人。
人の姿をしながら、人ならざる力を持つ特別な少女達。
この世界の人間達は異世界転移した瞬間から、誰しもが平等にステータスを割り振られる。
経験値を稼いだり、魔法を巧みに使いこなして日常生活を送ったり、人によって様々だ。なので多少の実力差があるものの、得られる魔法とステータスが極端に偏ることは現状ない。
しかし、彼女達は別だ。
だが、選ばれし少女達も至って普通の参加者だ。異世界転移する前は普通の女の子として日常を過ごしていた。
では他の一般人と何が違うのか?
それは――異世界転移前の事を覚えているのだ。
本来はゲームとして開発する予定だった異世界転移装置は転移した代償として9割の確率で記憶を失う。つまり1割の人間には前の世界の記憶があり、何らかの“特別な力”に選ばれた者でもあるのだ。
その“特別な力”を持った内の6人がその少女達だ。
その6人の場合、特別とは具体的に何がすごいのかと言うと、それぞれ6人が炎、水、雷、氷、光、闇の6属性のいずれかの内の1属性の適性が異常すぎるほどに高い。
つまり、その適性が高すぎる属性の威力を超える魔法を使える者はこの世には存在しない、世界最強の魔法使いとも言える。
そんな大層な少女達だが、言動・思考は普通の人間と何ら変わらない。端から見たら、ただの姉妹か女友達の集いとしか思えない。
『チッ、あの強そうな精霊消えちまったな』
朱色の髪の美女は液晶モニターを見ながら怒り混じりにそう言った。
『マジでー? 思ったより早かったねー、もっと時間かかるかと思ってたー』
タンクトップ短パン姿の金髪の美女はダストの持つ力に少し驚いている様子。それはそれとして氷菓子を美味しそうに食べている。
『ちょっとサン! それ私のアイスじゃない! 何勝手に食べてるのよ!』
青い髪色の美女はあとで食べようと思っていたアイスを勝手に食べられて憤慨している。
『れーぞーこに入ってたの見て、なんか美味しそうだったからー、でも名前書いてなかったよー』
『書いてあるじゃない! 裏に!』
『裏なんて誰も見ないよー、表に書きなよー』
『裏も見なさいよ!』
『はいはい、ごめんねー』
『反省する態度じゃない!』
誠心誠意を込めてごめんと謝ったところで青い髪色の美女は文句を言い続けるが、最終的にはこの事は水に流してくれるだろう。
しかし、金髪の美女の軽くあしらうような謝罪は誰の目から見ても心の底から反省する者の態度とは思えない。
その態度に青い髪色の美女は更に怒り狂った鬼神のような圧をかけて、やがて大規模な大喧嘩になるだろう。
そうなると色々と面倒だ。誰かが止めなければならない。
そこで1人の少女が立ち上がった――
『マリン。私のアイスあげる』
表情が硬い白い髪色の美女は、自分のアイスを青い髪色の美女に渡した。
『いいの?』
『いいの。マリン、笑顔がいい』
『あ、ありがとう。フー』
青い髪色の美女は頬を少し染めて目を逸らしつつ、お礼を言った。
『全く……サンもマリンもフーもいつもそんな感じね。もっと違う話とかしないの?』
銀色の髪色の美女はいつも通りすぎる会話に飽き飽きとしている様子。だが、それ自体に不快感を覚えているわけではなく、純粋な疑問を呈しているだけだ。
『マリンの器が小さいからだよー』
サンと呼ばれている金髪の美女は本人の前で愚痴を堂々と喋った。むしろ、わざと目の前で言っているように見える。
『何ですって! あなたが私のアイスを勝手に食べなきゃいいだけの話でしょう!』
『ほんと胸と態度だけはデカいよねー、マリンってー』
サンは、マリンの重力に抗わんとする揺れる大きな胸を見て、羨望でも嫉妬でもなく、ただ無情で感想を述べた。
『うるさいわね! 確かに私の胸は大きいけど、態度は別にデカくないし、何ならサンの方が態度デカいじゃない!』
『いや、そんなことないでしょー、マリンの観察眼イカれてるのー? もっと自分を客観的に見たほうがいいよー』
『イカれてるのはアンタの倫理観でしょ! それと自分を客観的に見れてないのは貴方でしょ! ダークほどじゃないけどさ!』
『そういやダークの奴、どこ行ったんだ?』
『さあね、きっとダークのことだから、またろくでもないこと考えてるんじゃないの?』
『ないの? って……シャイ。あなたたち幼なじみなんでしょ? だったら何か知ってるんじゃないの?』
『知らないわよ。幼なじみだからって何でも知ってるわけじゃないし』
と、まあこんな感じで、この6人(1人いないけど)はいつもこういう日常を繰り返している。
たとえ異世界の精霊が強襲しにきたとしても、彼女達は滅多に動くことはない。
彼女達が動くのは最終手段。この世界の誰もが敵わない敵が現れた時、彼女達は初めて出撃するのだ。
それは別にルールとして定められている訳ではないが、世界最強クラスの自分達が現れるとすぐに終わってしまうから、つまらないのだと彼女達は言う。
今回の精霊襲撃事件の場合、画面の中のダスト達がワンチャン精霊を討伐できる可能性があったから行かなかったが、もしダスト達が精霊を討伐できなかった場合は代わりに彼女達がすぐに赴いて業務的に親精霊を片付けていただろう。
『ま、何にせよ、退屈なのには変わりねえよな』
朱色の美女はそう愚痴を言いながら、立ち上がり、ドアノブを回す。
『フレイ、どこ行くの?』
『ああ、ちょっとな』
フレイと呼ばれた美女はそう言い残し、その場をあとにした。
『どうしたんだー? フレイのやつー』
『さあ、どうせ暴れたいんでしょ』
廊下に出て、少し離れたところで、フレイは――
『精霊共をボコボコにしたあの男――許さねえ……よくも俺の獲物を……!』
第317話を見て下さり、ありがとうございます。
前書きでも言った通り、まだ話の構成が不完全なので次の更新にはまだ時間がかかります。
楽しみにして下さってる皆様には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
何回も言ってますが、なるべく早く更新できるようにはしたいと思います。
何卒宜しくお願い致します。




