第316話『精霊襲来編〜決着〜』
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――神聖な森に血を流して横たわる12人の戦士。既に瀕死状態の大きな精霊が2柱。そして先程まで大暴れしたであろう俺が1人。
『うっ……』
意識がはっきりと戻った瞬間、重りをつけられたかのように身体が疲労感に支配される。
壊れた歯車を発動する前よりもはるかに強い痛みと異常なまでの倦怠感を覚えている。
これは禁忌の力を使った代償なのか、それとも単純に身体を酷使したからなのか、あるいはその両方なのかは定かではない。ただ、あれだけあった魔力が尽きかけてる時点で異常なまでに魔法連射して暴れ回っていたのは明白。
『やば……』
あまりのしんどさにまた意識を失いかけたが、ルカちゃんやみんなの事を想ったら、ここで倒れるわけにもいかないと何とか耐えることができた。
しかし、長くは保たない。俺がどんなに根性論を振りかざしたとしても、本格的に力尽きるまであと1分がいいところだろう。1度でも目を瞑ればそのまま眠ってしまうくらいに瞼が重い。
そうなる前に早く決着をつけよう。
『はぁ……はぁ……』
ちょうど目の前にいるのは、膝を崩して踞ってる親精霊2柱。さっきまでの俺に一体何をされたのかは分からないが、肉体的にも精神的にも相当なダメージを負っているのはなんとなく分かる。
『!!!』
親精霊達は俺が元の状態に戻っていることに気づいて、俺も思わず身構えたが、死にかけてるからか反撃する素振りは見られず、むしろ逃げるようにその場をあとにしようとする。
今の親精霊には異次元ホールを作るだけの力はない。巨体が仇となり隠れられるような場所もない。故に逃げ切ることは不可能なのだが、それでも尚、俺という脅威から逃げて生き延びようとしている。
『逃がすか……よ……』
といっても俺も虫の息だ。親精霊を追うことはおろか一步踏み出すことすらできない。
攻撃魔法であればなんでもいい。あと一撃ずつ与えればとどめを刺せるはずだ。
『これで……とどめ……だ…………』
残り僅かの魔力を絞り出し、2つの魔法を形成する。あとは、今手のひらの前に浮かんでいる球状の魔法を放って親精霊達に当たれば俺の勝ちだ。
『は……はやく……あいつらを……倒さないと……』
今親精霊を見失えば、もうとどめを刺せる機会は無い気がする。
だからここで決着をつけなくてはならない。それなのに身体が言うことを聞いてくれない。
魔法を放つために腕を伸ばす行為すら満足にできない。なので腕を下げたまま、僅かに動かすことができる手のひらで、ほんの少しだけ払うように2つの攻撃魔法を放った。
しかし、ちゃんと腕を伸ばしてから魔法を発動しないと、撃った魔法の速度は人が歩くくらいのスピードにまで落ちてしまう。
だが、親精霊達も歩くので精一杯でちょっと身体を避けることすらできない状態だ。しかも今は俺に背を向けて無防備な状態だ。すぐに気づかれなければこのまま被弾して終わりだ。
頼む、これで決まってくれ。
球状の魔法はゆっくりと軌道を描き、そして――
『グゲッ!』
気づかれることなく見事に被弾した――のだが、それは片方だけ。もう片方の親精霊は気づいて、ギリギリのタイミングで避けられてしまった。
『嘘……だろ……』
被弾しなかった方の親精霊はまた攻撃されると思ったのか、被弾して倒れてしまった方の親精霊を置いて逃げようとした。
あちらも走る余力が無いので、ゆっくりとゆっくりと奥へ、更に奥へと俺から離れるつもりだ。
『ま……待て……』
ダメだ。魔力がもう殆ど残されていないから、もうこれ以上魔法は撃てない。追いかけることもままならない。
パーシヴァルも新井さんも忍の人達もみんな意識を失って倒れている。ルカちゃんS‘やカレンちゃんも既に遠くへ逃げてる。他に頼れる人がいない。
みんなの回復を待った頃には、親精霊も回復してる可能性があるし、また襲われでもしたら……今度こそみんな死ぬかもしれない。だからここでとどめを刺しておきたいのだ。
でも……あぁ、どうしよう。あの厄介な親精霊を仕留められる絶好のチャンスを逃してしまう。
他にいないのか? 誰かいないのか。あいつにとどめを刺せる奴はいないのか……?
――いや、いる。いるよな1人だけ。
すぐにそちらへ駆け付けると言ってくれた悲観的だけど可憐で頼もしい仲間が――。
――刹那、木々がざわめき、大量の木の葉が落ちて舞うほどの力強い突風が吹いた。
まるで生命を宿っているような突風は、海のような美しい髪色の美少女を運んできた。
青い髪を靡かせた彼女は俺の方に顔を向けて、優しい笑みを見せてくれた。
『あおい……ちゃん……!』
あおいちゃんはその後何を言ったのか、口を動かしていた。声は聞こえなかったが、きっと“あとは任せて下さい”と言ったような、そんな気がした。
信頼できる仲間が来てくれたからか、俺の身体が安心感に支配され、この神聖な緑をベッドのように穢していく。
――俺は寝転んだまま重い瞼を開けた。あおいちゃんの勇姿をその眼に焼き付けるために。
あおいちゃんは状況を察し、剣を抜き、未だ吹き止まぬ突風と共に空を駆け抜ける。そして親精霊の目の前に回り込む――。
『はあああああああああああああ!!!』
あおいちゃんは剣を水平に描くように親精霊の胴体を真っ二つにした。
『グエエエエエエエエエエエ!!!』
親精霊は悲鳴を上げると同時に身体は塵と化して、突風と共にこの世の果てへ消えていった。
ざわざわと揺れていた森も静けさを取り戻し、残されたのは人類と精霊の戦場跡だけだった。
――こうして親精霊との戦いは終わり、ルカちゃんは親の呪縛から解き放たれたのだ。
あおいちゃん、あなたがいなければ、精霊との戦いは終わらなかったでしょう。ルカちゃんの人生も親精霊に囚われたままだったでしょう。助けてくれて、ありがとうございました。
俺はあおいちゃんにそう言おうと口を開ける前に、瞼が幕を閉じたかのように下ろされた。気がつくと俺は夢の世界へ招待されていたのだった。
遊び疲れた子供のように眠った俺にあおいちゃんが微笑んだ。そして天使のような優しい声で、彼女は――。
『ダスト様、本当にお疲れ様でした。良き夢を――』
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