第311話『精霊襲来編⑤』
更新が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
大変長らくお待たせ致しました。
第311話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
ダメだ。無理だ。勝てない。
親精霊が覚醒してから、奴らはこの世のものとは思えないとんでもない力を振るった。
するとどうなったかって?
簡単に言うと、一瞬にして俺以外の戦闘員全滅。
俺とカレンちゃんとルカちゃん以外は皆倒れた。親精霊からの砲撃の嵐に襲われてから、為す術もなく蹂躙されてしまった。
なんとかまだ立っている俺も死にかけている。
『はぁ……はぁ……はぁ……』
頭から垂れる赤い液体が閉めきれてない蛇口のようにポタポタと神聖な森を汚していく。
身体のあちこちが痛い。転移魔法“オート”のおかげで、まともに攻撃が当たらなかったから良かったものの、掠ることは何度かあった。一般人以下のクソ雑魚の俺はそれだけでもかなりのダメージを負った。
忍の人達、新井さん、そしてパーシヴァルは親精霊の攻撃をまともに受けて倒れてしまった。立ち上がる気配もなく、息があるかも分からない。それを確かめに行くことすら、今の俺には叶わない。
『あ、あぁぁぁぁ……』
膝を落として、倒れたパーシヴァルを見つめるのはもう1人のルカちゃん。パーシヴァルと再会した時、彼女はパーシヴァルにベッタリだった。どういう過ごし方をしていたかは分からないが、きっと仲の良い姉妹のような関係だったのだろう。そうじゃなきゃ会ったばかりの人にあそこまで悲しむはずがない。
本当なら今すぐパーシヴァルや新井さん、忍の人達も全員助けたいところだが、今の俺にはそんな余裕はない。
しんどい。もう立ってられない。辛い。誰か助けて。嫌だ死にたくない。早く逃げたい。
そんな気持ちを堪えて、なんとかルカちゃんとカレンちゃんだけでも遠くへ逃がそうとするが、親精霊の追撃は耐えない。
依然として奴らは砲撃しか撃ってこないが、その砲撃の威力は先程までのものとは桁違いだ。
一撃でもまともに受けてしまえばパーシヴァルや新井さんのような超人であっても――このザマだ。
ならば超人を超えた化物がやるしかない。
もうこうなったら最終手段だ――
『ディーンさん……』
『オイ、オマエ……』
『ルカちゃんとカレンちゃんは逃げてくれ、ここは俺が食い止める』
『でもディーンさんが……!』
『俺のことはいい』
『ディーンさん……』
『行ってくれ』
『……』
『……行コウ、ルカチャン。コイツノ勇気ヲ無駄ニスルナ』
『でも……!』
『行コウ』
少しの沈黙の後、ルカちゃんはやっとうんと頷いた。
自分で言うのもなんだが、彼女にとって俺は自分を救ってくれた英雄だ。ここで自分達だけが安全な所まで逃げるということは、恩人が殺されるのを黙って見過ごすのと同義だ。そんなの真面目で賢いルカちゃんが気にしないはずがない。
しかしルカちゃんにあの親精霊をどうにかする力はない。自分の精霊に関する力をフルで使ったとしても勝てる見込みは無いどころか足止めすらできないだろう。というかそんなことができるのならとっくにやっている。
『くっ…………………………!』
ルカちゃんは己の無力さを痛感しているのか、拳を強く握り、涙ぐませている。
『………………行こカレンちゃん』
『……アア』
カレンちゃんは絶望してその場から動こうとしないもう1人のルカちゃんを“精霊の力“を使って身体ごと浮かしたあと、ルカちゃんと一緒に逃げる準備を整えた。
『ディーンさん、どうかご無事で』
『…………うん、またあとで』
踵を返したルカちゃんは俺の方を何度か振り向きながらも、カレンちゃんともう1人のルカちゃんと一緒に深く、より深く森の中へ去っていった。それに対して親精霊からの砲撃が何回か入ったが、俺の防壁魔法で全てかき消した。
親精霊の殺意が止まらない。俺がルカちゃんを逃したことでそのイライラがより憎しみへと変わっていく。
親精霊は俺に砲撃を放ち続ける。まずはお前を防壁ごとうち砕いてやる。そんな意志を感じた。
『…………………………』
俺は言葉を発することすら面倒に感じるほど、疲弊している。魔力がそろそろ無くなるぞという警告だ。
そんなの分かってる。でも防壁魔法を張り続けていないと俺が死ぬ。
ルカちゃんもカレンちゃんもまだ十分遠くまで逃げていない。せめて俺がもっと時間を稼がなければ……。
まあそもそもの話で言うと、あの親精霊ならルカちゃんを捕まえるためなら、この世界の文明すら破壊しそうだ。
ルカちゃんに最初から逃げ場なんて無かった。あの親精霊が束縛してる限り……いや、あいつらが生きてる限り。
何様なんだよ親精霊は。
何でお前らなんかのストレス発散のためにルカちゃんが苦しまなきゃいけないんだよ。
何の権利があって、お前らはルカちゃんを傷つけてるんだよ!!!
――ああ、いつもそうだよ大人は。
大人の都合で平気で子供を踏みにじる。傷つける。
大人みたいなのがいるから……!
『ふざけんな!!!!!!!!!!!!』
今の俺は冷静じゃない。ルカちゃんを傷つけた親精霊が許せないのもあるが、俺も大人に対して思うところがある。
だからかな、俺は今怒り狂って、一線を超えようとしている。
決してやってはいけないと言われたり、やれと言われたりでうんざりしていたからずっと無視してきたが、今俺はこれをやる時が来たのだ。
――おい聞こえるか?
――全て聞こえておりました。壊れた歯車を発動しますか?――
ああ発動する。
――かしこまりました。壊れた歯車のご利用ありがとうございます――
『…………』
――噛み合っていた歯車が軋む音が聞こえた。不快だ。
――やがて軋む音は聞こえなくなり、代わりに歯車の割れる音が次々と弾けるように聞こえる。気持ちいい。
――そして歯車は全て粉砕した。まるで世界の中の秩序を壊すように、封印されていた力を解放するように。
――■■■■■様の壊れた歯車発動。準備は宜しいですか?――
ん? あ、ああ。
――それでは行ってらっしゃいませ■■■■■様。ご健闘をお祈りしております――
『壊れた歯車発動。タイプは……“■■■■■”』
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