第310話『精霊襲来編④』
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――あれから戦いは数時間に渡って繰り広げられた。
精霊の群れへと飛び出して行った新井さんと、既に何百もの精霊の屍を築いた(死体は消滅するけど)忍の人達のおかげで精霊の数も大幅に減り、砲撃の雨も小雨くらいに弱まった。
砲撃の雨のせいで防壁魔法を張り続けなければいけなかったが、その砲撃の雨も頻度が下がっている上に威力も弱まっているのでわざわざみんなに対して防壁魔法を張り続ける必要が無くなった。
どうやら精霊達も無限に砲撃できるわけでは無さそうだ。まあそりゃそうか、無限に出来たらそれもうチートだもんな。もし出来てやがったら俺が嫉妬で死にそうだ。
まあこれで俺もパーシヴァルも安心して親精霊の元に攻め込む事が出来そうだ。パーシヴァルも剣を構えたまま、よしっと呟いている。一応、親精霊に対して少しは怯えてはいたけれど、早く戦いたいという闘争心もあったんだろうな。
やはりパーシヴァルは戦闘狂だった。
あとカレンちゃんだが、少し話し合って、ルカちゃんの防衛に入ってもらうことにした。
カレンちゃんは親精霊がいるからか戦闘にはあまり自信が無さそうだったが、ルカちゃんを精霊から守ることくらいはできるみたいだ。それで、もし防衛が難しそうになったら、俺かパーシヴァルまたは新井さんを大声で呼ぶようにも伝えた。
もしその3人が来れなくても、忍の人達の誰かは来てくれるだろうと新井さんは言った。
忍の人達の凄いところは、上司の指示が無くても、常に視野を広く持って、必ず臨機応変に対応してくれるところだ。しかも素早く、確実に任務をこなしていく。
正直俺とパーシヴァルとカレンちゃんだけではルカちゃんを守りきれなかっただろうし、新井さんや忍の人達が味方になってくれるのはすごくありがたい。
――よし、これで攻め込む準備は完了した。
あとはあの親精霊をぶちのめすだけだ。
『行くぞパーシヴァル!』
『おうよ!』
俺は防壁魔法を外し、パーシヴァルと共に親精霊の元へと走り出した。
『どけどけえ!!』
俺達の行く道を塞ぐ有象無象の精霊達。俺達はそれらを容赦なくなぎ倒していく。
新井さんや忍の人達も着々と精霊を倒しているので、親精霊への道を作るのにそう時間はかからなかった。
ある程度近くまで行くと、俺はあらゆる攻撃魔法を親精霊に向かって放つ。しかし親精霊も俺にずっと攻撃を集中させているので、俺の放った8割の攻撃魔法は親精霊の砲撃によって相殺される。残りの2割はちゃんと親精霊に直撃するも、全く効いていない様子。この程度の威力ではダメージすら与えられないようだ。
それならば魔法の威力を上げればいいと思った。
しかし、魔法の威力を上げる方法は現状ない。元の時代であれば精霊達を倒して魔法レベルを上げればいいのだが、この時代ではそういうステータスは存在しない。
……いや今が元の時代だとしても、そもそも魔法レベルという概念は、謎の管理者によってよく分からないまま廃止されてしまったんだったな。
まあつまり、それぞれの魔法の威力は全て平等に固定化されているということだ。
この事を踏まえると、同じ魔法を繰り返し発動しても魔力の無駄だということが分かる。ならば次にやることはシンプルに1つ。もっと殺傷能力の高い魔法を使うことだ。
『武器生成魔法“日本刀”』
いや何だよジャパニーズソードって……、そのまま英訳しただけじゃねえか。思いつかなかったからって適当に名をつけるなよ……誰だよこんな名前つけたやつ……まあ俺なんだけどな。
ネーミングセンスはともかく、この魔法は多少魔力は消費するし、かつてアミさんが経営していた武器屋の武器よりはかなり劣るけど、ある程度のクオリティは保証されているので、武器が欲しいだけならこれだけで済む。食事で例えるなら、武器屋の武器は1から調理された料理で、魔法で生成する武器は冷凍食品やインスタントラーメンのようなものだ。
質にこだわるか、効率を重視するか、選ぶ基準としてはその2つのどちらかだ。
だが今の状況を考えると、武器の質を高める方法は現状ない。なので必然的に効率……つまり冷凍食品レベルのクオリティが保証された武器を大量生成することを選んだ。ただそれだけのことだ。
で、次はこの大量生成された刀をどうするかって話だが、俺はまずその刀を浮遊魔法で垂直に浮かせる。それからその無数の刀の刃先を双方の親精霊に向けて、大砲のように撃って撃って撃ちまくる!
『喰らええええええええええええ!』
無数の刀が2柱の親精霊の身体にザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクと次々と刺さっていく。その刺さりっぷりは、まるで針山に刺さった針のようだ。
グエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!
これはさすがに効いたのか、精霊とは思えない怪物のような悲痛の叫びを上げた。
親精霊からの砲撃も止んでいるので、どうやらダメージは通っているようだ。
しかし、これだけでは親精霊を止められない。なんと、やつらは自分の身体に刀が刺さったままなのにも関わらず砲撃を再開しやがった。特に回復もせず痛みが続いているはずなのに意識朦朧ともせず、正確に俺に狙いを定めている。もちろん俺もその砲撃を受けてやるわけにはいかない。
『転移魔法“オート”』
この魔法は相手から攻撃を受けそうになる時に自動で別の場所へ転移する魔法だ。とても便利だが、転移できる範囲が半径5メートルと制限がある上に、広範囲の攻撃は避けきれないという弱点がある。
まあその弱点も、“ダストの記憶”が解放されれば無くなるかもしれないがな。
まあ何にせよ、これで俺の身はほぼ守られた。親精霊が広範囲の攻撃をしなければこの魔法だけで充分だ。もし広範囲の攻撃をしてきたとしても、防壁魔法に切り替えればいい。そうすれば俺だけではなく一気に皆を守ることもできるので、むしろそうしたほうがいいだろう。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
なかなか攻撃が当たらない俺にイライラしてるのか、親精霊は癇癪を起こした時みたいにドタバタと暴れ始める。刀刺さったままなのによくそんなに動けるな。
『隙だらけだ!』
『貰いましたよ』
ただ無造作に暴れ回る親精霊達にパーシヴァルと新井さんがそれぞれの親精霊に攻撃をしかける。
パーシヴァルは陸上選手もビックリの速さで走り込み、親精霊の元に着くとすぐさま剣で何度も斬りつける。
『まだまだぁ!』
それだけでは親精霊は倒せないと思ったパーシヴァルは飛び跳ねて、親精霊の肩から斜めにかけて剣で斬った。
グエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!
と親精霊は叫んだ。血が噴き出るわけではないが、多量出血するくらいのダメージは負わせたと思われる。
新井さんもパーシヴァルに劣らないくらいの速さで走り、親精霊の元まで着くと、すぐに飛び跳ねて、鳩尾部分に拳をめり込ませる。親精霊は少しグラッと揺れたが、これだけではまだ倒せない。親精霊はすぐに反撃しようと新井さんに砲撃をしかけるも、殴り返され、せっかく放った砲撃が自身に当たる。
親精霊が自分の攻撃で少しのけ反ったその隙に、新井さんはすかさず更に右フック、左フック、ストレートと、まるでガトリングのように連続で拳を突きつける。
『うおおおおおおおおおおおお!!!!!』
グエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!
と、もう1柱の親精霊も叫んだ。それと同時に尻もちもついた。
精霊軍も崩壊寸前にまで陥っている。
親精霊が生み出した残りの精霊達も数が少なくなっているにも関わらず、全く精霊を追加召喚しないのは何か理由があるんだろうが、それをしない限りは精霊の群れも間もなく全滅するだろう。
そうなれば、あとはあの手負いの親精霊のみだ。自身を回復する行為も取らないことから、回復手段はないと見た。ならば、あとはこのまま畳み掛ければ俺達の勝利だ。
この場の誰もがそう思ったであろう。親精霊を知るルカちゃんとカレンちゃん以外は――
『ん? なんだ?』
――その時、親精霊に異変が起きた。
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