第309話『精霊襲来編③』
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『新井さん、助けてくれてありがとうございます。あの何でここに?』
『謎のホールから白い何かが降りてくるところを目撃しましたので、様子を見ようと来ただけです。そうしたらオーガスト様が命の危機に晒されてましたので、それを防いだまでです。間に合わないんじゃないかとヒヤヒヤしましたがね』
新井さんは、そう言って少し微笑んだ。
当たり前のように言っているが、普通の人だったら怖くて近寄れないし、なんとか恐怖を押し殺して様子を見に行けたとしても、なかなか人を助けようなんて思える余裕があるはずもない。一般人ならな。
『なるほど……新井さんって、戦える人だったんですね』
これまでの振る舞いを見ると確かに只者ではないとは思っていたけれど、とはいえそれは由緒正しい(?)学院の長であるスーパーなんとかマーリン様の執事だから、多少訓練された人程度にしか思ってなかったからだ。まさか精霊の砲撃を殴って弾き返せるレベルの超人だとは微塵も思うまい。
『はい、戦闘には多少の心得があります』
おお、それは頼もしい。かなり強い戦力を手に入れたぞ。
一時ではあるが、催眠でルカちゃんをここに連れ出した容疑者後補に入れてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
そもそも新井さんを容疑者後補に入れてたのって、2日目の夜に急に連絡が取れなくなったからなんだよな。でもよくよく考えたらそれって多分“異次元ホール“が出来た影響なんだろうな。空間が歪むと空気も歪む……のかはちょっと分からないけど、多分そういう感じなんだろう。知らんけど。
新井さん、心の中だけど謝罪をさせて頂きます。
疑ってしまい、本当に申し訳ございませんでした!!!
『新井様』
新井さんの背後に突然ワープしたかのように黒ずくめの集団が現れた。密かに発動してた探知魔法で何となく気づいていたが、気配を感じなさすぎてちゃんと捉えられなかった。昨日から何で捜索隊の気配感じないんだろうと思ったら、そういうことかと納得した。
集団の先頭には黒い忍び装束を纏った男がいた。その更に後ろに同じような格好をした者が10人くらいいる。その中には俺が好きそうな“くノ一”らしき人も3人くらいいた。
『捜索隊としての任務は完了したが、この光景を見れば次に私が何を命令するか、下さなくても解せるだろう?』
『御意』
そう返事をすると、さっきまでカレンちゃんの捜索隊だった忍び装束の者達は瞬間移動したかのように姿を消し、いつの間にか迫りくる精霊達を排除しに行っていた。
精霊達は俺の排除とルカちゃんの奪還を優先にしているようだが、邪魔者が目の前にいては先にそっちを攻撃するしかない。その程度の知性は精霊達にもあるようだ。
『……』
精霊達は忍び装束の者達に砲撃を放ち続けるも、あまりにも速すぎて攻撃が当たらない。かすり傷すら作ることができない。
連射しても当たらない。忍にとって、精霊の砲撃など目を瞑っても避けられる。
そうやって精霊達を翻弄しつつ、忍者らしいクナイのような物や手裏剣のような飛び道具を使って1柱また1柱と確実に仕留めていく。またはナイフを使って高速で精霊を次々と仕留める忍もいた。
このまま攻めていけば彼らの勝利は確実――に見えるが、そう簡単にもいかない。なぜなら、単純に精霊の数が多すぎて彼らだけでは対処しきれないということと、無数の精霊よりも遥かに強いであろう親精霊が俺とルカちゃんにしかターゲットにしていないのもある。もし親精霊が彼らを本気で駆除しようとすれば、せっかく戦ってくれている忍達はあっという間に全滅するだろう。
『ボアウルフ程度の相手であれば、彼らだけで充分ですが……あの精霊が相手となると我々も動かなければなりません』
新井さんはそう言って、上着を脱ぎ、ワイシャツの袖を上げて気合を入れている。新井さんも戦る気のようだ。
俺やパーシヴァルですら、あれほどの重圧を放つ親精霊相手に怯えてしまっているのに、新井さんや忍びの人達には一切怖気づいた様子がない。
身体能力だけではなく精神面でも強いということが見て取れる。
例えるなら赤髪ちゃんや魔王が一緒に戦ってくれるくらいの頼もしさがある。
新井さんはどんな戦い方をするのだろうか? さっき精霊の砲撃を殴っていたところを見ると、格闘家のようなスタイルなのだろうか。
でも、それだけでは説明がつかない。
『あの新井さん、こんな時に申し訳ないんですが、さっき精霊の攻撃を拳で跳ね返してたましたがあれはどうやったんですか?』
新井さんによると、なんとただ拳だけでビームを跳ね返したそうだ。砲撃を殴っただけでボールを打ち返すみたいに相手に反撃を与えたのだ。
ちなみにその拳には魔法をかけたわけではないようだ。でも魔力を帯びているようだった。
どうも新井さんには魔力を使ったもう1つの戦い方を会得しているようだった。
『魔力を拳に流す……ですか?』
『はい、魔力というのは何も魔法を使うだけではなく、自分の身体に使うこともできるのです』
魔力を自分の身体に……と言うと、魔力というエネルギー源を特定の部位に流し込むといったところか。それは所詮イメージでしかないが、多分そんな感じなんだろうな。
新井さんの話だと、それを身につければさっきのように砲撃を跳ね返したり、身体能力を上げることもできるようだ。
でもそれを会得するには、やはり練習が必要なようだ。試しに魔力を身体に流そうとしたが、うまくいかなかった。
まあいい、それは後だ。
今はあの親精霊をなんとかする方が先決だ。
しかし俺は今防壁魔法を貼っているから動けない。もし今防壁魔法を外せば無数の砲撃が俺達を襲う。
砲撃を跳ね返せる新井さんや、砲撃を避け続けられる忍びの人達ならまだしも、俺やパーシヴァル、カレンちゃんは恐らく無数の精霊の砲撃を避けきれない。
なので新井さんと忍びの人達にある程度まで精霊の数を削ってもらうしかない。それまでは防壁魔法を外す事はできない。
――さあ、まずは耐久戦と行こうじゃないか。
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