第307話『精霊襲来編①』
お待たせしました。
第307話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
ルカちゃんが生まれた世界線での橋本家の祖先は元々はただの人間だった。特に人格にも素行にも問題はない至って善良な人間だった。
しかし、ある日突然、精霊の力がその祖先に取り憑いた。それによりただの人間から、人間でありながら精霊の力を操る、あるいは精霊そのものになれる力を得る化物になってしまった。
俺達の世界での精霊というと神秘的なイメージがある。現実世界では存在しないだろうが、アニメやゲームの世界でよく出てくる種族だ。だから精霊という単語自体は馴染み深いものだ。
――だが、ルカちゃんの世界での精霊は在り方がまるで違う。
あちらの世界での精霊、それは人類の外見を模していながら人外的な力を持つ種族。人類と共存しながらも一部の人類に嫌われている種族。あちらの政府が橋本家に必要以上に関わらなかったのは、その政府の人間が精霊を嫌っていたからだ。
それにはルカちゃんの両親も憤りを感じている。彼らは精霊そのものではあるが、普段は人間の姿で人間と同じように生活しているし、犯罪にも手を染めないように自制も当たり前のようにしている。にも関わらず精霊が嫌いだからという理由で冷遇される事もあるのだ。それだけでも多少のストレスは溜まってしまう。
彼らは愛情という感情をあまり持たない。個人差はあるものの、あちらの精霊は基本的に感情という概念が薄い。だから娘であるルカちゃんに感情を持たない。ルカちゃんがどうなろうと彼らには何も感じないのだ。だからルカちゃんの両親はルカちゃんを見放していたのだ。
ところが、政府からの命令となると話は別だ。政府には精霊を滅ぼせる力がある。長い歴史を辿ると、ルカちゃんが生まれる数百年前、人類の全てを奪ってこの世界を精霊だけにしようと企む過激派が全精霊の9割にまで増強した。
そんな強欲な精霊達に滅ぼされそうになった人類は、ある化学兵器を作った。それは精霊にのみ効果がある毒素をガスとして排出できる兵器だ。
人類はそれを使い、人類滅亡派の精霊達を滅ぼした。残り1割の人類共存派の精霊達に関しては、精霊とはいえ彼らには人類に対する殺意も無ければ、人類に対して略奪をしたいという強欲さも傲慢さも一切無かったのだ。
当時の政府のトップの温情により、残り1割の精霊は生かしておくことにした。
……のだが、この大事件によって精霊に恐怖を抱いた者たちが勝手に芽生えた正義感で精霊を殺しかねないのではないかと疑問が浮かんだ。
そこで政府はそうならないために、精霊に対する抑止力として、その精霊を殺した化学兵器を残しておくことにした。そうすればもし精霊がまた悪さをしても、この兵器を使えば精霊を簡単に滅ぼせるからだ。
それは精霊にとってもあってはならない、絶対に避けておきたい事態だ。だから人間よりも力がある精霊は悪さを働くことができない。
要するに力関係が上だった精霊が、人類の兵器所持により、人間よりも力関係が下がったというわけだ。
抑止力とは言ったものの、違う言い方をすれば人間が精霊を操れるようになってしまったことだ。
兵器を持つ人間側が精霊に何かを命じたとして、精霊がそれを断われば、精霊を殺す兵器を撒くぞと脅して実質、精霊が強制的に人間の奴隷のような扱いになってしまうのだ。
それを知って尚、精霊を操ろうとする人間は当時の政府にはいなかった。彼らはあくまで心の底から平和を願っているからだ。争いもない血も涙も見なくてもいい世界にしたかったからだ。
――だが、それから数百年が経つと、政府にはそんな考えを持つ人間はいなくなってしまった。今の政府にいるのは、傲慢に利益を得ようとする者、何でも利用して自分達の都合の良い方へ国を持っていこうとする者、ただ自分が人の上に立ちたいと支配欲が膨れ上がってしまった者と様々な人間がいるが、その誰もが精霊をあまり良くは思っていなかった。
だからといって一方的に精霊を殺すこともできない。なぜならその時代での精霊には人権のようなものが存在しており、もし傷つけたり、殺めてしまえば罪に問われる。それは政府の人間だとしても例外ではない。
だからルカちゃんが精霊を操れる能力を開花させても、政府は特に何もせずに、ただ彼女の両親に監視命令を下した。人間よりも遥か上の力を有すれば政府としても警戒せざるを得ない。しかし、こちらから迫害することも常に第三者が監視し続けるという人権を蔑ろにすることもできない。だから彼女の1番近くにいる両親に彼女を監視することを命令することしかできない。
一方ルカちゃんの両親も、その命令には逆らえない。なぜなら政府の人間は兵器を盾に両親を脅していたからだ。だから両親も従わせざるを得なかったのだ。
両親は当然憤慨した。だが政府に盾突くこともできない。その命令には報酬がない。興味もない自分の子供を監視するなんて面倒すぎる事をやらされれば彼らの怒りは最高潮に達することになる。
精霊は抱えきれないストレスを爆発させてしまえば、人ならざる姿へと変貌してしまう。
そう、今のルカちゃんの両親のように――。
ルカちゃんが両親の元に帰りたがっていた理由はこれだ。自分が両親のストレスの捌け口になることで、ストレスを発散させていたのだ。
まともな神経を持った人間であれば、女の子を■るという行為なんて到底できるわけがないし、許容できるものでもない。
しかし、ルカちゃんの両親であれば話は別だ。娘に対する感情を持たないのなら、それをモノ扱いしたとしても、何も思わないのだから。
なんとも胸くそ悪い話だが、ルカちゃんが犠牲になることによって、世界の平和が保たれていたということになる。でもそれをカレンちゃんはよしとしなかった。傷ついてるルカちゃんを助けたかった。
だが自分の力だけでは到底彼女の両親には勝てない。返り討ちに遇うだけだ。
だからルカちゃんはカレンちゃんに手を出さないように言った。カレンちゃんに傷ついてほしくないから、カレンちゃんを守りたかったから――
――はい突然ですが、そこで問題です。
そんな重すぎる話を聞かされた俺が次にすることは何でしょう?
正解は……あの化物になった両親をぶちのめして、ルカちゃんを解放する!
その為なら俺は――
どんな手段だって使ってやる。
第307話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




