第306話『研sei修rei編syurai?』
遅れてしまい申し訳ございませんでした。
第306話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※サブタイトルが文字化けしてるように見えますが、普通に入力しただけなのでご安心下さい。
カレンちゃんから全てを聞いた。カレンちゃんが元々ただの人形であったこと、ルカちゃんの能力によってカレンちゃんが精霊になったこと、俺がルカちゃんから聞かされた話も含めて話してくれた。
ここにいる2人のルカちゃん。そうなった原因は異世界の扉を開けたことによる空間の歪み。その影響でルカちゃんの心と身体は2つになった。多分パーシヴァルが消失したのはそのタイミングだろう。原理は分からないが空間が歪めば位置関係もバグるみたいだ。
俺と最初に出会った方のルカちゃんは冷静沈着な少女。一方パーシヴァルと出会ったルカちゃんは常に何かに怯えている弱気な少女。
この2人が融合したのが本来のルカちゃんだ。
……さて、ここで問題だ。
2人に分かれたルカちゃんを元に戻すにはどうすればいいでしょう?
答えは……分かりません!!!
いやホントマジでこればかりはどうしようもない。俺の豊富な魔法レパートリーを以てしても、2人を元に戻す手段はない。そもそも2人に分かれる原理が理解できない時点で、どのように手段を講じればいいのかもさっぱり見当もつかない。
でもだからといって、このままルカちゃんを2人にさせたままでいいのかと言われると……。
ルカちゃんS'はこの状況に関してどう思っているのだろうか? どちらかが偽物というわけでもないから、どちらの意見も尊重しなくてはならない。
『それでルカちゃんはこれからどうしたい?』
『……戻らないと』
『あっちのルカちゃんと融合して1つになりたい?』
『それもあるけど……元の世界に帰らないと……』
『え』
ルカちゃんから思いも寄らない回答が帰ってきた。
なぜだ、ルカちゃんの境遇を考えると元の世界に戻りたいなんて1ミリも思わないはずだが……。
それともやはり両親の事を考えているのだろうか?
『どうして? だってルカちゃんは――』
『私はやっぱり、あの人達といないとダメだから……』
血縁者でありながら、あの人達、とルカちゃんは自分の両親の事をそういう風に呼んでいる。その時点で彼女に両親に対しての感情など持ち合わせていない。つまり一緒に居たいわけではない。にも関わらずなぜ両親の元へ戻ろうとしているのか。
その理由もさっきカレンちゃんから聞いた。確かにそういうことならルカちゃんもあの両親の元から離れられないのは分かる。俺がルカちゃんの立場でも離れるのはなかなか難しい。
だってあの両親は――
『でもルカちゃん、君はそれで――ん?』
――突如、肌が焼けるようなピリピリとした感覚に襲われた。この感覚は……そうだ。何かとてつもない力を持った敵が現れる前兆だ。
ピリピリピリピリピリピリ。
痛みが尋常じゃない。俺の本能が訴えている。
逃げろと。
俺1人ならすぐにこの場から退避していた。今すぐ逃げれば、無駄に強敵と戦わずに済むと。
しかし、俺以外の4名はとてつもない気配に戦慄してるのか、逃げることすらできずにその場で硬直してしまっている。その中でパーシヴァルだけはニヤリと笑っていた。これは完全に戦る気だ。
俺の転移魔法を使えば1人くらいなら少し遠い場所へ避難させられるが、その方法だと時間がかかる上に魔力消費も激しい。この中で避難させる優先順位を考えるならルカちゃんとあっちのルカちゃん、次に精霊の力で多少は戦える (はず)カレンちゃん、最後に戦闘能力の高いパーシヴァルだ。
こっちのルカちゃんもあっちのルカちゃんも、同じルカちゃんだ。考えたくもないが、もしどちらか片方のルカちゃんが消えてしまった場合ルカちゃんにどのような影響を及ぼすのか……。
ルカちゃんの死という最悪の事態は避けなければならない。もちろんカレンちゃんもパーシヴァルもだ。
もしかすると、6属性以外の魔法も使わなければいけない場面が来るかもしれない。まあルカちゃんもカレンちゃんも異世界から来たんだ。俺の事をこの知り合いが1人もいない世界の人達にバラすなんてことはしないだろう。ルカちゃんの性格を考えても口は堅い方だろうし、大丈夫だな。
――さあ心の準備はできた。来るなら来い。襲いかかってくるのなら、俺が……いや俺達が返り討ちにしてやる。
『……』
ざあざあと風に木が揺られている音が煩い。まるでこの森自体が恐怖で震えているようだ。
『……クルゾ、ヤツラガ』
ん? 奴ら?
――上空からブラックホールのような真っ黒なホールが現れた。それは何かを吸い込まないただの穴だ。空間の乱れを引き起こすそれは即ち異世界へ通ずる入口。
それが意味するものは、異世界からの転移。何者かがこの世界にやってくるということだ。
俺が感じていたピリピリとした危険本能はこれの事だ。
『みんな! 俺の近くに来てくれ! 早く!』
俺がそう言うと、パーシヴァルは動けなくなったあっちのルカちゃんを抱き抱えてすぐに俺の元へ連れてきた。
こっちのルカちゃんとカレンちゃんは既に俺の元にいる。
よし、今から防壁魔法を発動する。
来襲者からの突然の奇襲に備えるのもあるが、今は異世界ホールが空いたことによる空間の歪みも発生している。昨日のパーシヴァルのようにこの中の誰かが突然消失してしまうなんてこともありえる。今俺達がバラバラになるのは危険だ。だからこの防壁魔法で空間の歪みからみんなを守る選択を取ったというわけだ。これで完全に空間の歪みの影響を受けない保証があるわけではないが、やらないよりはマシだろう。
もう誰も離れたくないから――
『あれは――』
ホールの中から“白い何か”が2体降りてきた。それはこの世のものとは思えない何か。生物と呼ぶのもおこがましい何か。そこにいるだけで周りに負のエネルギーを与える何か。人類との共存など許されない。絶対に討伐しなくてはいけない何か。
『……』
全長3メートル程の白い何かはこちらを静かに見下ろしている。
『……』
表情が読み取れない。底なし穴のような目が2つと口が1つ。虚ろな表情にも見えるそれは生物という範疇には収まらない。
慧眼魔法で全体を見通してみると、どちらも魔力量が乏しい。あれだけの威圧感を持ちながら魔力が無いとなると、魔法は得意ではないのは確か。おそらく物理戦が主となるだろう。
――いや違う。あの魔力量の乏しさには覚えがある。そうあれは……ルカちゃんだ。
『あ……ああ……』
『ああああああああああああああああああ!!!!!』
こっちのルカちゃんも、あっちのルカちゃんもそれぞれがあの白い何かに怯えている。
そうか、ルカちゃんのその反応と――
『ナンデアイツラガココニ……!』
カレンちゃんの反応を見て、俺は確信した。
それはルカちゃんが嫌々両親の元へ帰りたがっていたことと関係がある。
そもそもただの少女であるはずのルカちゃんがなぜ精霊召喚という能力を得たのか。それは決して偶然ではない、必然だ。両親の血筋だったからだ。
あの白い何かはモンスターではない。モンスターすら超えた神秘的な存在。ファンタジー世界でよく聞く精霊だ。
カレンちゃんの話では精霊召喚とは精霊以外が行えるものではない。精霊の王としての資格を持っていなければ持ち得ないものだ。
ここまで言えばもう分かる。
そう、あの白い何かの正体は――
『お、お父さん……お、お母さん……』
第306話を見て下さり、ありがとうございます。
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