第303話『研修編⑭』
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第303話の執筆が完了しました。
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今、目の前で起きたありえない事象に俺の頭の中に思い浮かんだいくつもの情報が渦を巻いているように激しく回っている。要するに混乱してるってことだ。異世界に来たというだけでも頭がどうにかなりそうだったが、同一人物が2人いるのも、それはそれで頭が死ぬ。
プシューと頭から煙が出そうだ。もちろん比喩だが、そういうイメージが頭に浮かぶくらい頭がオーバーヒートしている。
いや頭に浮かんで頭がオーバーヒートってなんだよ、すごくワロスwww
あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは……。
……さて、狂い終わったところで真面目に情報を整理しよう。
①ルカちゃんが2人いる。
②こっちのルカちゃんとそちらのルカちゃんは容姿服装共に瓜二つ。
③しかし性格は違う模様。
④そちらのルカちゃんを見ると■■された痕がくっきりと分かる。
⑤そちらのルカちゃんが俺に人見知りしてることから記憶を共有できるわけではないと断定できる。
⑥どちらのルカちゃんも何が起きているのか分かっていない。どちらかが魔法を発動したわけではない?
⑦昨日パーシヴァルが突然姿を消してから、ルカちゃんが現れた。
⑧偶然かもしれないが、パーシヴァルの消失に関係があるのかもしれない。
⑨そもそもルカちゃんはどうやってここに来たのか。
⑩この森の全てを知っているわけではないが、少なくともこんな危ない森に子供が出入りできるようにするわけがない。
⑪ルカちゃんは誰かに導かれた可能性が高い。
⑫導けるとしたら新井さんくらい? (怪しい点としては、現在連絡がつかない状態なのと新井さんが派遣したと言っていた捜索隊とすれ違うどころか気配すら感じない)
⑬だが新井さんがそれをするメリットが思い浮かばないし、さっきは怪しいと言ったが、そもそも全部偶然かもしれない。
⑭ルカちゃんを導いたのが新井さんではないとなると、他に思い当たる犯人は■■■■■■。
⑮その犯人はルカちゃんを知っている者であり、ルカちゃんの環境を思い浮かべると、おおいにメリットはあると思われる。
これらの情報を考慮した上で俺が出した結論は――
それを確かめるためには――仕方がない。試してみるか。
俺はルカちゃん達にバレないように一瞬だけ慧眼魔法を発動した。すると大量の魔法を使った跡がくっきりと残っている者が目に映った。
――あぁ、やっぱりそうか。思った通り、ルカちゃんが2人になったのは君の仕業だったか。
俺はルカちゃんをこの場所へ誘った犯人を見つめた。
『――ミタナ』
どこかから声の低い成人男性の声を加工して禍々しくしたような声が聞こえた。どこからかとは正確に言うとそちらのルカちゃんが抱いている人形から。
『カレン……ちゃん……?』
もう1人のルカちゃんは腕に抱き抱えられているカレンちゃんに目線を落としてみると、人形は誰に操られているわけでもなく独りでに浮き出し、ルカちゃんの元を離れた。
『ア……アアアアアア……』
ゾンビのようなデスボイスを出している人形は身体を浮かせたまま、俺の元へスーッと動いた。
それだけでもだいぶホラー展開でこれまでに無いほどの鳥肌が立った。ぎゃあああああと叫びたくなるほどの恐怖が俺の心を支配するも、俺はそれを飲み込んで人形に立ち向かおうとする。
なぜならルカちゃんの前で泣き叫んで逃げるなんて、これから教師になる身としてはそんなみっともないことはできないからだ。何よりそのルカちゃんを守らなければと、気づいたら俺の身体はルカちゃんを守るようにカレンちゃんの前に立っていたのだ。
無意識とはいえ俺にこんな度胸があるなんてな。少し前の俺がもしカレンちゃんのように動く人形なんて見たら、キャーキャーと叫びながら全力疾走していただろう。お化け屋敷という遊園地にあるアトラクションだとしても喚き散らかす自信がある。なんとも情けない話だが。
『アア……アアア……』
動く人形は俺の目の前で停止し、身体を浮かせたまま俺に話しかけてきた。
『ミタナ? ワタシヲミタナ?』
『君か? ルカちゃんをこの世界に連れてきたのは』
『え……カレンちゃんが……?』
こっちのルカちゃんがそう呟くと、人形はルカちゃんの方へスーッと動き出した。
ルカちゃんに危害を加える気か――と一瞬思ったのだが、人形から殺意は感じられず、むしろ抱かれたそうに友達の胸に飛び込んだ。
『ルカチャン! アイタカッタヨ!』
今俺の目に映っているのは、動く人形がルカちゃんに愛を求めている絵だ。
なんて尊いのだろう、先程のホラーじみた雰囲気は完全に消え失せた。ホラー番組を見てたら、癒し系のペット番組にチャンネルを変えられた気分だ。
『ガレンちゃん……』
ルカちゃんもカレンちゃんに触れたことで抑えていた感情が溢れ出し、必死に言葉を発しながらヒクヒクと泣いている。
『カレンちゃん……もう……今までどこ行ってたの……わたしカレンちゃんがいなくなって……もう不安で不安で……もうどこにも行かないで……』
『ルガヂャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
人形の方もどこに涙腺があるのか、ドバーッという擬音がしっくりくるくらいに滂沱の涙を流した。
『ゴメンネ……ゴメンネ……!』
『でも無事で良かった……』
『ルカチャンモブジデヨカッタ……!』
ルカちゃんとカレンちゃんの感動の再会シーンを見て俺も目尻が熱くなりそうだったが、1つの疑問が湧いた。
そもそも人形は動かないはずなのに、めっちゃ動いているが、ルカちゃんはそれに対して恐怖を全く抱いているようには見えない。まるでそんなもの全然珍しくないかのように普通に抱きしめている。
いくら大切な人形とはいえ、勝手に動き出せばそれはもう怪奇現象だ。にも関わらずルカちゃんはあまりも早く受け入れすぎている。いくら何でも切り替え早すぎないか……?
『あのルカちゃん……感動の再会のところごめんね、ちょっと聞きたいことがあって……』
『ナンダオマエ、サテハワタシノダイジナルカチャンニケッコンヲモウシコムキダロ!!?』
『カレンちゃん!?』
俺はルカちゃんに話しかけたつもりなのだが、なぜかカレンちゃんが邪魔をしてルカちゃんに結婚を申し込むつもりかと聞いてきた。確かにルカちゃんは可愛くて将来有望な女の子だけどそんなことしねえよ。
『いや違うよ、そうじゃなくてカレンちゃんの事だよ』
『カレンちゃんのこと……?』
『ワタシノコトダト……? ハッ、マサカワタシニケッコンヲモウシコミニ……?』
『なんでだよ、違うよ、そうじゃなくて』
『ハッ、マサカ、アチラノキレイナオネエサンニケッコンヲ……?』
カレンちゃんはキレイナオネエサンと言ってパーシヴァルの方を向いた。つまりキレイナオネエサンとはパーシヴァルの事のようだ。
『とりあえず結婚から離れろ』
『え……? 私と決闘?』
『ちげえよ結婚だよ! あ、いや結婚じゃないけど!』
『ホラヤッパリケッコンジャナイカ』
『だから違うって言ってんだろうがああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
30分はこんな感じで話が進みませんでした。
第303話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




