第302話『研修編⑬』
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昨日と同じようになるべくモンスターに遭遇せずに森の中を進んでいったのだが、どういうわけかモンスターの数が異常に多くなっている。どれくらい増えたかというと、研修1日目の時の10倍くらいだろうか。とにかく5メートル程進む度にモンスターを見かける。そして目が合うと、まるで人間を襲う義務でもあるのかと思うくらい必ず俺かルカちゃんのどちらかに襲いかかる。
その代わり、ボアウルフのような強靭且つ爆速といった厄介なステータスを持つモンスターは現状出てきていない。ただ数が多いだけでモンスター単体ならば魔法1つ放てば大抵は倒せる。ルカちゃんでも攻撃魔法さえ覚えさせれば一匹くらいは倒せるんじゃないかとさえ思えてしまう。
現状俺一人でもなんとか全部捌ききれている。これでパーシヴァルが居てくれればもうちょっと余裕が生まれるが、仕方がない。カレンちゃんを回収するまではなんとか耐えよう。
その道中でパーシヴァルと再会できれば最高だが、果たしてどうなるかな……?
『これでとどめだ!』
俺はルカちゃんを守りながら、6属性の魔法をうまく活用し、襲いくるモンスター達を順調に無双していく。
『よし、ここら一帯のモンスターは倒した。今のうちに行こう』
『うん!』
ルカちゃんはモンスターに襲われているという事実に怯えながらも、俺から離れないようになんとかついていっている。
俺ももちろんルカちゃんから離れないように走る速度を落としている。俺は運動神経ゴミカスとはいえ、さすがに一般の10歳の女の子には劣らない。俺が今から全力疾走をしてしまえば、ルカちゃんとかなりの距離が空いてしまうだろう。
『はぁ……はぁ……』
ルカちゃんも頑張っているとは思うが、息が切れ始めてスピードも遅くなっている。
――だが。ルカちゃんの目は諦めていない。彼女のカレンちゃんに会いたいという気持ちが彼女に走り続ける力を与えている。これが根性というやつなのだろうか? だとしてもそれは結局、痛みや疲労を後回しにするために一時的に誤魔化しているだけに過ぎない。要するに後でそのツケがやってくるということだ。カレンちゃんを回収して小屋に戻った直後にルカちゃんが溜め込んだ疲労に襲われて立っていられなくなって、カレンちゃんを抱きしめながらベッドの上で眠る未来が容易に想像できる。
『もうすぐだ、もうすぐでカレンちゃんがいるところに着くよ!』
『!』
そう言うと途端にルカちゃんは歯を食いしばり、更なるスピードでカレンちゃんの元へ走る。それはまるで学校行事のマラソン大会で下位だけどゴールに向かって懸命に走っている思い出の1ページを見ているようだった。
――しかし、そのカレンちゃんの元に“強い気配”を感じた。その気配はそこから離れようとはせず、どういうわけかその場に留まっているようだ。
もしかして強いモンスターか何かがカレンちゃんに興味を示して触れようとしているのか? だとしたら今カレンちゃんには防壁魔法が張ってあるから、触れてくるモンスターを弾いてくれるが……。
それなら一応攻撃する準備はしておいた方がいいか。ルカちゃんにも俺から少し離れるように合図しておこう。
カレンちゃんの元へ着くまであと10秒。俺は光魔法の発動準備をした。光魔法なら他の魔法と比べて標的を1つに狙いやすいから、カレンちゃんを傷つけずに攻撃ができる。
よし、これでいつでも奇襲できる。
あと5秒。ルカちゃんは俺の真後ろに追いすがっている。もし戦闘になる場合はもっと後ろに下がっていてもらう必要がある。だから俺はルカちゃんにもうちょっと下がっていてもらうようにジェスチャーした。するとルカちゃんは俺の言う通りに少し距離を置いてくれた。
4秒。問題なし。
3秒。問題なし。
2秒。問題なし。
1秒。問題なし。
――今だ!
俺はカレンちゃんと“強い気配”がいる場へ着いた。
俺は早速その“強い気配“に向けて光魔法発動の準備をする。
『覚悟しろ! 光魔h……ってあれ?』
俺が攻撃しようとした“強い気配”はモンスターなどではなく――
『主人!!!』
今俺の目の前にいるのは紛れもなくパーシヴァルだった。良かった。思い描いていた最高の展開が来た。
パーシヴァルも同様に向こうから俺という“強い気配”が来ると思って警戒していたのか、既に抜刀して、戦闘態勢を取っていた。
そのパーシヴァルの後ろには知った顔の少女が1人。ビクビクしながらパーシヴァルの身体に隠れたり、ちょこっと顔を見せたりしている。
『え、いやちょっと待て――』
俺はそのもう1人の少女の顔を見て驚愕した。
こんなことってあるのか……? 一体何がどうなっているんだ!?
『あの娘は……!?』
俺が目を疑っていたその時、念の為少し距離を置いていたルカちゃんもちょうどその場に顔を出した。
『ディーンさん、大丈夫です……か……え?』
当の本人も、もう1人の少女の顔を見て驚きを隠せない表情となった。
『カレンちゃん……え?』
そのカレンちゃんを……カレンちゃんという金髪の人形をもう1人の少女が抱いていた。
俺もルカちゃんから話を聞いたとき驚いたが、ルカちゃんにとって、カレンちゃんは友達であり人形でもあった。幼い頃に人形を与えられから、ずっと幼なじみのように一緒だったという。そんな大事な人形を目の前の少女が大切そうに持っている。まるでその少女にとってもカレンちゃんは大切な友達であるかのように。そしてその意味とは――
『え、あ? 主人これは……なぜルカが2人もいるんだ?』
パーシヴァルも当然この状況が理解できず、脳に混乱をきたしている。
俺も何がなんだか分からない。
なぜルカちゃんが2人もいる? 俺の側にいるルカちゃんとパーシヴァルの側にいるルカちゃん。どちらも同じ顔で体格も髪型も全て同じだ。ただ異なる点があるとしたら、こっちのルカちゃんに比べて、あっちのルカちゃんは人見知り……というか常に何かに怯えていて、パーシヴァルの後ろに隠れている。
せっかくパーシヴァルと再会できて、カレンちゃんも回収できそうだったのに、2人もいるルカちゃんという謎に俺の頭が翻弄されていて、それどころではない。
こっちのルカちゃんもあっちのルカちゃん自身も驚きのあまり言葉が詰まって口をパクパクさせている。2人共何が起きているのか理解できていないようだ。
パーシヴァルと同様に相当な混乱をしていて思考をまともに巡らせることもできないだろう。
――ならば俺がこの謎を、絡まったイヤホンを少しずつ解いていくように解明していくしかない。
考えろ俺。きっとどこかにヒントが――
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