第22話『今日は、私と1日中デートしなさい』
遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
第22話できましたので、宜しくお願い致します。
※改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
※2022年2月13日改稿しました。
※文字数多めです。
おはよう4日目の朝。
昨日はアースちゃんとシルバーちゃんと夜まで話し込んでいた。
もちろん昨日の事は3人だけの秘密である。
特に魔王には内緒にしてほしいと、アースちゃんから釘を刺されている。アースちゃんはどうも魔王の事を信用していないらしい。
『さて……まずは火の女神と水の女神を探すんだったな』
俺はアースちゃんからある面倒な事を頼まれた。
それは火の女神と水の女神という世界のどこかにいる女神達を探してほしいとの事だった。
その女神達はどこにいるのかとアースちゃんに聞いてみたが、行方不明でどこにいるのか分からないとの事だ。しかも手がかりも一切なし。
『そんなのどうやって探せと……』
そもそもなぜ火の女神と水の女神を探しに行くのか……理由を聞いてみたのだが話してはくれなかった。
しかしどうやらアースちゃん曰く――――
『ファイちゃんもアクアちゃんも、きっとダスト君の味方になってくれるよ。……魔王なんかよりもよっぽどね』
と言っていた。ちなみにファイちゃんは火の女神、アクアちゃんは水の女神のあだ名というかアースちゃんが勝手に呼んでる名前である。
『さて、とりあえず、外出できる状態になるまでは、ここで待機か……』
どうやら魔王はまだ俺に外出させたくないらしい。
まあ、あんなことがあったし、心配してるんだろう、というのが表面上だけで、本当は何か別の理由があるに違いないと疑ってしまう。
魔王は全ての事情を知ってそうだけど、全部は話してくれない。確かにアースちゃんが言ってた通り、そんな魔王を完全に信頼できるかと言われたら微妙だな。
――でも、悪い奴じゃあないんだよな……。
『てか、この世界ってなんか不安定だよな……色々とごちゃごちゃする……!』
もし、この世界がアニメや漫画もしくはライトノベルの世界だとしたら、その創造神さぁ、ごちゃごちゃした設定付け足しすぎだろ。頭が追いつかねえよくそったれ。もっと許せないのはなぜ俺にチート能力を与えなかったかだ。俺だってチート無双して美少女とイチャイチャしたいぜ畜生!
まあ、そんなこと思ったってどうせ届かぬ思いなんだけどな。
いや、それよりも。
『今は魔王が気になるな……あいつは、俺の事を知ってるし、この世界の権限とやらを持ってたりするらしいし……だけど、さすがにこの世界までもが、偽りの世界だとは、知らない可能性があるし……』
魔王……本当は何者なんだ?
あまりにも情報が無さすぎて正直お手上げだが、魔王に関して俺が1番驚いたのは、頭のおかしい爺さんだと思っていたんだが、その実態はただの残念美少女だったことだ。
『ん、待てよ……? てことは、この魔王城の中での俺って……ハーレムじゃね?』
今更だがすごいことに気づいてしまった。誰もが憧れたハーレム……そのハーレムに、どれだけの夢と希望が溢れていることか……。ああ……俺には見えるぜ……誰もが入ろうとしたが、断念せざるを得なかった、あの輝かしい画面の中の……夢!
『俺は……今……ハーレムだ……今ハーレムなんだ! ひゃっほほおおおおおおおおおおおおい!』
俺は心の中で溢れていた思いを抑えられず、つい叫んでしまった。俺は慌てて口を押さえた。扉の奥の廊下にまで聞かれてないだろうか? 聞かれてたとしたらうるさくなかっただろうか?
『おはようお兄ちゃん、うるさいよ』
『ブロンズちゃん!? いつの間に!?』
ここは俺の部屋のはずなのに、いつの間にか3姉妹の末っ子であるブロンズちゃんが、俺の背後に立っていた。
一体いつから入ってきたんだ?
『一体いつから入ってきたんだ? って顔してるわね。夜中からずっといたわよ』
『夜中から!? うそでしょ!?』
つまり夜中に俺が寝てる間に、部屋に侵入してからずっとここに居たってこと!?
なぜそんなことを……一体何が目的なんだ……?
『一体何が目的なんだ……? って思ってるでしょ? それはね……私がお兄ちゃんをいじめたいからだよぉ?』
ブロンズちゃんはそう言ってニヤニヤと笑みを浮かべた。
ああ……ブロンズちゃんって、そういうタイプの女の子だったか。
まあ確かに2次元には、こういうタイプの美少女は居そうだけどさ……我々の業界ではご褒美ですとかよく言うけど……いざ、現実で見ると困惑が半端じゃない。
いくら美少女でもいきなり俺をいじめたいから来たなんて言われてもどう反応すればいいか分からない。
『急に黙っちゃってどうしたのぉ? 頭大丈夫?』
『そりゃ、いじめたいからなんて言われたら困惑するでしょうに……あと話したばかりなのに酷いディスだなぁ……』
『そんなことはどうでもいいわ。それよりもあなたにお願いがあるの』
いやどうでもよくないでしょ……。
はぁ……急にすげえ扱い悪くなったな……。俺、この娘に何かしてしまったのか……?
じゃなきゃこんな風に突っかかってこないだろうし、もう俺がこの娘に何かしたとしか思えない。でも心当たりは無いんだよな……。
『お願いって何?』
『今日は私と1日中デートしなさい』
『へ?』
今なんと言った? 毛糸? ヘイト? デッド? それともデート? いやデートだとして何で俺と? ギャルゲで言うならまだ好感度0の状態なんだが……。
『……じゃ、そういうことだから、朝食食べ終わったら、速やかに娯楽施設に来てね』
『いや、ちょっと待って! 何でそんな俺とデートなんて……』
『だから言ってるじゃない……あなたをいじめたいからって……』
ブロンズちゃんは、まるで獲物を見た時のライオンのように目を光らせた。
『ひ……ひぇぇ……』
俺は恐怖を感じた。俺の本能が死にたくなければ逃げろ! と言っている。そうだ、アースちゃんが居る幻の図書室に匿ってもらおう――――と思ったのを読まれているかのように、ブロンズちゃんが釘を刺してきた。
『念のため言っておくけど……もし、可愛い私とのデートをすっぽかして別の女のとこへ行ってたら……その時は覚悟してね?』
そんな可愛い顔で圧をかけてきた彼女から獰猛な毒蛇のような気配を感じた。
そんな……さっきから俺の思惑が読まれてる……。
あ……あぁ……もう……逃げられない……。怖い。まるで俺は蛇に睨まれた蛙のようだ。怖いケロ。
『うふふ、じゃあまたあとでね』
『う、うん、また後で……』
ブロンズちゃんは無邪気で可愛い笑顔を向けて、そりゃもう怖いくらい無邪気で可愛い笑顔を見せてから俺の部屋を後にした。
これは、まさしく“怖可愛い”。
味わった事のない新しい感覚を覚えてしまった。
それから1人になっても心が安らぐことはなかった。まるで俺の心がクモの巣のように纏わりついている。さっきは彼女を蛇と例えたが、蜘蛛でもしっくりくるかもしれない。
『はぁ……とりあえず……食堂に行くか……』
その後、俺という名の獲物は、いつも通り朝食を食べてから娯楽施設に向かった。その間俺の身体は武者震いなのか震えが止まらなかった。
『そういえば、この世界に戻ってきてから、娯楽施設に入ったことないな……』
俺の記憶上でもアレンとよく娯楽施設で遊んでたな。
最初入る前はなんで“娯楽室”じゃなくて“娯楽施設”なんだ? って思ってたが、入ってみたら、想像よりもはるかに広かった。
どれくらい広いかって言うと、例えるなら都内にある大きなゲーセン専門店って感じだな。クレーンゲームやメダルゲームみたいなものもいっぱいあったし。
そしてもうその娯楽施設の扉の前まで来てしまったわけだが……。
食堂から娯楽施設まではそんなに時間はかからない。同じ1階にあるからだ。ちなみに俺の部屋は1階にある。魔王以外の皆の部屋は2階にあるようだ。
魔王の部屋ってどこにあるんだ? と考えていたら、ブロンズちゃんがトコトコとやってきた。
『やっほーお兄ちゃん、じゃあ入ろうか』
美少女の姿をした蜘蛛? がやってきた。いや女王様と言った方が正しいのかな?
『う、うん。そうだね』
俺は不安を抱きながらもうどうにでもなれ! と思いつつ、ドアを開けた。
すると、その先には確かに娯楽施設があったのだが、俺の記憶と比べて、内装が異なっていた。
『あれ?』
クレームゲームやメダルゲーム以外にも、見覚えのない台がいっぱいあった。いや、正確には見覚えはあるにはあるが、これはまるで……。
『カジノじゃねえか』
『ええ、カジノよ。ただお金は賭けられないわ。子供はやっちゃダメだからね。内装だけ、それっぽくしてるだけ』
そういえば俺の記憶上では、この世界のどこかに狂った奴ばかりが居ることで有名な賭博の街がどこかにあるらしい。できれば行きたくねえな……。
『ここで何をするの?』
『情報を賭けてもらうわ』
『え? 情報を賭ける?』
『ええ、私は、お兄ちゃんの事をよく知りたいの。でもただで教えてもらうんじゃつまらないじゃない? だから、賭け事で遊ぶことにしたの』
この娘は本当に何を考えているんだ……? 何でそんなに俺の事を知りたいんだ……?
『うふふ、何で知りたいかって顔してるわね』
さっきから俺の心読みすぎじゃね!?
『あはは、お兄ちゃん、さっきから顔に出過ぎなのよ~』
『え? そんなに顔に出てる?』
『えぇ、出てるわよ』
いくら顔に出るって言ったって、そんなに心は読めないだろ……メンタリストかよ。
『で、何で俺の事知りたいの?』
『それは、私が勝負に勝ってから教えてあげるね。逆に言えば、お兄ちゃんの知りたい情報を私から聞けるチャンスでもあるのよ?』
『!!』
俺の知りたい情報をブロンズちゃんは、知っている……?
――なるほど。デートと称して俺の情報を盗む気だと一瞬思ったが、この勝負は俺にもちゃんと利があるわけか。
まだ年端のいかない娘だが、ビックリするほど用意周到じゃないか。俺の心も的確に読んでくるし、ブロンズちゃんって実はすごく頭がキレるんだな。
『ああ、分かったよ。ブロンズちゃん、その勝負受けたよ!』
『うふふ、そうこなくっちゃね』
第22話を読んで下さり、ありがとうございます。
第23話の方も、出来次第、投稿していきたいと思います。
宜しくお願い致します。




