第298話『研修編⑨』
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《パーシヴァル視点》
さっきまで私はあの猪のような狼みたいなよく分からんが倒しがいのあるモンスターと一戦交えていた。
昨日の奴よりかは骨があったが、結局あっさりと倒してしまった。
奴がもうちょっと賢かったら、もっと良い勝負をしていたのだが、奴の攻撃がただ憎しみのままこちらへ突進してくることただ1つだけ。
何の捻りもないただの攻撃。感情に任せただけの突進。
これでは攻撃パターンも完全に読めてしまう。だからどんなに足が速くても力があっても、攻撃を防がれてしまう。
つまらない。なんて退屈なんだ。
他のボアウルフはどうなんだろうか。もっと賢く立ち回って戦えるのだろうか?
ここから少し遠くにさっきと同じモンスターがいる気がするが、主人に命令されてるわけでもないのに無断で離れるわけにはいかない。
仕方がないが、主人のところへ戻ろう。主人のことだ。もう既にさっきのモンスターを倒しているのだろう。
――しかしそう思った頃にはもう遅かった。
近くに居たはずの主人が、いつの間にか姿を消してしまった。辺りを見渡しても影も形もない。まるで最初からいなかったかのようだ。
『あれ、主人……?』
私は主人の気配を探ってみたが、全く察知できなかった。代わりに察知したのは子供のような小さな気配。
ただの子供がなぜこんなところに……?
あ、もしかして主人が子供になる魔法を使ったということか? 主人の領域なら子供の身体に変身できる魔法くらいあってもおかしくはない。だがこのタイミングでやる意味があるのか?
まあ私がそれを考えたところで結論は出ないが。私は主人ほど頭が回らないのでね。
――というか、これ主人の気配じゃない。そもそも主人なれ小さくなっても魔力の量がその辺の有象無象よりも桁違いだ。だからすぐに主人だと分かる。
『誰だ……?』
しかしこの気配はあまりにも小さく、弱い。
幼い子供ならこんなものだろうが、このモンスターが蔓延る森に1人で来るにしては、無謀がすぎる。
『まったく……しかたないな』
一刻も早く主人と合流しなければならないが、子供の方が心配だ。助けに行こう。
――もうあんな惨劇を繰り返すわけにはいかないからな。
ん?
わたし、いま……何かを思い出したような気が……?
……まあいい、早く小さな気配を探しに行こう。
今は私の記憶よりも優先すべきものがある。
私は“思い出しそうな記憶“を一旦飲み込み、小さな気配を探すことに専念する。
――それからたった1分で小さな気配を見つけた。
ずいぶんと愛らしい女の子だった。年齢は10歳くらいだろうか?
『だ……誰ですか……?』
私を敵だと認識しているのか、怯えたような目でこちらを見ている。
『安心しろ、君に危害を加える気はない』
そう言っても女の子は私を信頼していないのか、私が近づく度に距離を取ろうとする。
これは相当怯えているようだ。一体何があったのだろうか?
こんなモンスターばかりが出る森で人間と会えば普通は安心感を覚えるはずなのに、人間にすら怯えるなんて異常だ。
――私は昔から子供達と関わってきた。だから子供の扱いくらいは分かる。
まただ……、また昔の記憶が一瞬だけ蘇った。
でもそうか、私はかつて子供とよく相手にしていたのか。
その時の感覚はなんとなくだが身体が覚えているようだ。今の私が使いこなせるか分からないが、その記憶を活かそうじゃないか。
『……本当に私は君に何もしない。ただ何で君がここにいるのか話を聞きたいだけなんだ』
『……』
女の子は距離を取る。
『信じてくれ』
『……』
女の子は更に距離を取る。
このままじゃ、女の子は私に疑念を抱いたまま一生信頼してくれないだろう。
一体何がダメなんだと思っていると、女の子の目線をよく見ると私ではなく私の剣の方に送っていた。
つまり女の子からしたら、その武器で私を殺す気なんだと思っているのだろう。しかも私の剣はさっきモンスターと戦った時についた返り血がところどころに付着している。これでは端から見ればただの殺人鬼のようにも見えよう。私がこの娘の立場なら同じようにそう考えてしまうかもしれない。
なので私は武器を一旦地面に置いてから両手を上げ、絶対に危害を加えないという意思表明をした。
『この通りだ』
『…………分かった』
私の誠意が通じたのか、女の子は距離を取ることをやめた。
だが女の子から私に向ける怯えた目は変わっていない。信頼はしきれていないが、とりあえず自分に危害を加える存在ではないと思ってくれたようだ。
女の子は自ら私の方へ恐る恐る近づいてきた。
『すまない、ありがとう』
『…………ううん、こちらこそ疑ってしまってごめんなさい』
女の子は申し訳なさそうに頭を下げた。
『謝らないでくれ、こうして私の話を聞いてくれただけでもありがたい』
私がそう言うと女の子は僅かだが私に近づいてくれた。少しは心を開いてくれたと見てもいいのだろうか。
『……それで君の話を聞かせてくれないか。何で君はここに?』
『分からない。気づいたらここに居て……』
『気づいたらここに……?』
ほうほう、この娘は己の意志でここに来たわけではないと。あくまで誰かに導かれてここに来たということか。
つまりそれは魔法によるものか。魔法は色々な種類がある。催眠魔法とか使って洗脳もできるらしい。
あ、でもこの時代では魔法は6種類のみだってマーリンが言ってたな。
あれ? どういうことだ? ということはこの時代の魔法が増えたということか?
うむ、よく分からんな。
もう少し話を聞いてみるか。
『1人でここに来たのか?』
『……友達とはぐれたの』
『ふむ、友達と一緒に来てたのか……その友達は強いか?』
喧嘩したいからそう聞いたわけじゃない。もしその友達がこの娘と同じくろくに戦闘ができないなら、モンスターに襲われてしまえば一巻の終わりだ。
そうなる前に急いで探さなければならない。
『……強いって?』
『あ、ああ、そのままの意味だ。この森のモンスターと戦えるだけの戦闘力は有るか否かだ』
どちらにせよ探すつもりだが、もしその友達が戦えないのなら――
『……無いですね。私達はモンスターと戦える程の力を持ってないです』
『――分かった』
『……え?』
私はすぐに女の子を抱きかかえ、女の子がリアクションをする間もなく森の中を飛び回った。
『え、えええええええええええええ!!!??』
さっきまでたどたどしい声で喋っていた女の子とは思えないくらいの叫び声を発した。
だがそれを気にしてる場合じゃない。
一刻も早くこの娘の友達を見つけなければ……私は……私は……。
――もう後悔なんてしたくない!
第298話を見て下さり、ありがとうございます。
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