第295話『研修編⑥』
皆様
大変お待たせしました。
第295話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
女の子に話を聞いてみると、どうやらさっきまで友達と手を繋ぎながら一緒に森の中を歩いていたのだが、いつの間にか繋いでいた手の感触が突然なくなり、友達は最初からいなかったかのように姿を消してしまい、周辺を探してみてもどこにもおらず、見つけることはできなかった。
女の子は涙目になりがならも友達を探すことを諦めずに歩いていたら、ちょうど俺を見かけて協力してほしいと思い、俺に声をかけたということらしい。
しかも女の子はモンスターを撃退するための武器も持っておらず、外見を見る限り、ただの10歳くらいの少女で筋力も並以下だ。その細い腕ではゴブリンを殴り倒すことはおろかダメージを与えることすら叶わないだろう。
慧眼魔法でも見る限り、魔力量も乏しく魔法による攻撃も防御もまともに展開できない。例えば炎魔法ならマッチ棒レベルの小さな灯火、雷魔法なら静電気レベルだ。この程度ではせいぜい理科の授業か友達にいたずらするために使うのが精一杯だろう。
とてもではないがモンスター1匹すら満足に倒せるとは到底思えない。むしろ逆に餌食にされてとても口では言えないような凄惨な事になるかもしれない。
本当に危ない。確かにここはゲームの世界でモンスターも所詮データではあるが、襲われれば普通に痛みはあるし、最悪死ぬことすらあり得る。
今のところ近くにはモンスターはいないようだが、もし俺と会う前にこの娘の近くにモンスターが居たかと思うと、震えが止まらない。
そうなる前にモンスターを撃退できる力を持つ俺と出会えたのはこの娘にとってかなりの僥倖だろう。友達の方は心配だが。
『ねえ、君と一緒にいたのは友達だけ? 大人と一緒じゃないの?』
『うん、友達だけだよ』
ということは子供達だけでこの危ない森に入ったということか。まだ子供だからこそ未知の領域に冒険をしてみたいという好奇心が芽生えるのはよく分かるが……。
ここは大人として危ないことをするなと叱るべきかと一瞬迷ったが、なんの事情を聞かずに否定から入るのは良くない。何事も話を聞いてからどう接するか判断するべきだ。
俺は女の子の目線に合わせるように屈み、怯えないように責め口調は使わず優しい口調で話した。
『ここがモンスターが出る危ない森っていうのは知ってる?』
『うん、知ってる』
『何で入ったの?』
『うーん、分かんない』
『分からない……?』
『なんかね、気づいたらここに着いたって感じなの』
どうやら女の子の方もここに来たくて来たわけではなくて、何かに操られているみたいにここに吸い寄せられたらしい。
大人に怒られたくなくて言い訳を発しているようにも聞こえるが、嘘を言っているようには見えなかった。……根拠もないただの直感だが。
そうだとしたら何者かが何らかの目的で魔法を使って、この娘とその友達を操ってわざわざここに導いたということか?
いやそれならさっき慧眼魔法を発動した時に、魔法がかけられた形跡が分かるはずだが、今彼女には特に魔法をかけられた形跡がない。そもそもこの時代に6属性以外の特殊な魔法はまだ開発されていない。
ということは催眠術とかの類だろうか? それならまだ現実的……と言えなくもないような気もしないでもないが……でもだとしても、なぜこんな子供をこんなモンスターの出る森の中へ誘う必要があるのか……。
なんだかよく分からないが、どちらにせよこの娘を1人にしておくわけにはいかない。早くその友達とも合流してから、新井さんに報告して家に帰して貰おう。
『なるほどね、君の事情はよく分かった。俺が君と君の友達を会わせて、君の家に送り届けてあげるよ』
『ホントに?』
『ああ!』
『ありがと、お兄さん!』
女の子は天使のような満面の笑みを向けてくれた。
なんと可愛らしいのだろうか。――いやそういう意味じゃない。
確かにこの娘の顔立ちは整っていて異性からモテる事間違いなしだろうが、別に恋愛感情を抱いているわけじゃない。
なんというか……妹のようなものだろう。
俺に実の妹がいるわけではないが、多分妹ができるとこういう守ってあげたいという感情が込み上げてくる。うまくは言えないがそういうことなのだろう。
え、ブロンズ様三姉妹やシュタインはどうなのかって? あの娘達は……まぁ……色々と特殊な娘達だから妹というよりは――。
『君の友達はどこら辺ではぐれたのかな?』
『えっと、多分あっち』
女の子が指を指した方角は、小屋がある方とは真逆の方向だ。ということは俺もまだ行ったことがない未知のスポットだ。
昨日とは違うモンスターが出現している以上、一層警戒心を高める必要がある。
ボアウルフよりも強いモンスターが出てくれば今の俺といえど容易には倒せない。しかもこの娘を守りながら戦わないといけないから余計に難易度が上がる。
これは思ったよりも骨が折れそうだ。でもこの娘をちゃんと守らないとな。そう思うのはこれから教師になるからとか大人としての義務だとかそういう理由じゃない。
ただ助けたいだけ。数多くの年下の女の子に関わってきたからなのか、どうも放っておくことができないようだ。
『あっちか、よし行こうか』
『うん!』
『あ、ところで君の名前を聞いてなかったね。俺の名前はダス……オーガスト・ディーンっていう名前だよ。君は何ていうの?』
『私は橋本ルカっていうの』
『ルカちゃんね。よろしく』
『うん、よろしくオーガスト・ディーンお兄さん』
『あ、名前は好きに呼んでいいよ。フルネームだと呼びづらいでしょ?』
『じゃあディーンさん、よろしくね』
『うん、よろしく』
こうして俺達はルカちゃんの友達を探しに森の奥深くへ足を踏み入れたのであった。
パーシヴァルの事も気がかりだが、今はルカちゃんを放っておくわけにはいかない。一刻も早くルカちゃんとその友達を安全な場所まで送ってからパーシヴァルを探しに行こう。
パーシヴァル、どこにいるか知らないが無事でいてくれよ……。
第295話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




