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第292話『研修編③』

皆様

大変お待たせ致しました。

第292話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。

 俺達はあれから未知のスポットを調べては無双して調べては無双を繰り返していたが、残念ながら特に新種のモンスターが出たわけでもなく、パーシヴァルの飢えを満たしてくれるような強いモンスターも出なかった。


 ――気がついたら夕方になっていた。


 暗くなると迂闊に動けなくなるので、その前にさっきの小屋へ戻らなければならない。


 だが地図もなしに小屋まで戻るのは至難の業。


 だから俺はあらかじめ自分の靴に塗装魔法をつけて、足跡にペンキが長時間且つ分かりやすく残るようにした。


 つまり、さっきまでつけていた俺の足跡を辿るだけで簡単に小屋までたどり着くことができる。


 ただし暗くなると見辛くなる上、朝になればその塗装は消えてしまう。だから暗くなる前に戻らなければならなかった。


 もし暗くなる前に小屋に戻れなかったら、モンスターが出るこの暗い場所で何の仕掛けもないただのテントを張って野宿をしなければならない。


 寝込みを襲われないように結界魔法を発動し続けるのはさすがの俺も骨が折れるし、魔力の消費も激しい。まあ最悪それでも大丈夫なのだが、出来れば魔力は少しでも残っていた方がいいので、この方法は取りたくない。


『今日はもうさっきの小屋へ戻ろう』


『そうか…………まあ仕方ないよな………………』


 パーシヴァルは強敵に出会えなかった失望と虚無感に襲われながら、つまらなそうに小屋へ戻る。


 それから俺達は軽く雑談をしながら適当に夕食を済ませて、風呂に入った(風呂はもちろん別々で)。


 その後、また少し雑談をして、眠くなった所でそれぞれベッドの上で横になり(部屋も別々)、やがて夢の世界へダイブした。


 ――俺はまた夢を見た。今回はダークネスが現れるわけでも、誰かが夢の中に干渉するわけでもないただの夢。頭の中にある全ての記憶というピースをぐちゃぐちゃに散らかして適当に1つにまとめたかのような混沌とした映像を見るのが大抵だが、今回の場合はこれから俺に関わるであろう全ての戦いが終わり、魔王城のみんなと幸せに暮らす夢。まさに理想郷。今俺が1番欲するもの。平穏の夢。


 ――ブロンズちゃんとシュタインと桐華の3人のアイドル活動をマネジメントしたり。


 ――シルバーちゃんと幻の図書室に行ってアースちゃんと3人で楽しく話したり。


 ――ゴールドちゃんやマーリンとパーシヴァルも交えてこの旅の話をしたり。


 ――赤髪ちゃんのセクハラを苦笑いしながら眺めたり。


 ――あおいちゃんのネガティブトークに付き合ったり。


 ――アミさんに武器を作ってもらったり。


 ――猪のみどりちゃんに跨って夜に外を疾走してもらったり。


 ――フランやケン、ケイデスとそれぞれの過去の話を語り合ったり。


 ――怖い顔をしたバレスさんと本音で語り合ったり。


 ――レッドと一緒にルキウスやガラードとケイに剣術でも教わったり。


 ――ブラックとプラチナと、あとミユウとダイゴとかつて会ったかもしれない世界線での思い出を思い出せる範囲だが話し合ったり。


 ――ケールさんと神様に強くなった自分を見せてもらったり。


 ……あとは魔王と――――


『――ん?』


 目を開けると、まだ見慣れない天井があった。


 あぁ、そうだった。ここは小屋の中だ。俺はまだ研修の最中だった。


 使命を完全に思い出した俺はあまりにも濃い現実を受け止めながら、あの幸せな光景は全て(ゆめ)だったという虚しさに軽く心を壊されそうになっている。


 だが同時に叶えたい夢、たどり着きたい未来を改めて確認することもできた。


 さっきの夢を夢で終わらせない。正夢にしよう。そのためにやれることは全てやろう。


『よし』


 気合を入れた俺は気分良く朝を迎えられ、軽い足取りで朝食の準備をした。


『おはよう主人』


 パーシヴァルも俺とほぼ同じタイミングで起きたようだが、しっかりと目が冴えて、元気いっぱいだ。


『おはようパーシヴァル』


 俺もパーシヴァルも女子力皆無なので、昨日と同じく冷蔵庫からてきとーに食べ物を出してそれぞれ食べた。


『どうする? 今日はあっち方面行ってみるか?』


『ああ、新しいスポットに行きたい! 強い奴に会えるかもしれないしな!』


『分かった。今日はどんどん進んでいく形で行こう』


 今日の方針を決めるのに時間はかからなかった。俺も特にパーシヴァルの意見に反対する理由はなかったからな。


 なぜなら、この森のモンスターはあまりに弱い。もちろん未知のモンスターには警戒する必要はあれど、これでは相手にするにしてもあまり緊張感を持って臨めない。


 それに俺も教師になる者としてこの世界のモンスターの事を色々知っておく必要もある。ここでただダラダラと食料を取ってくるだけでは知識は深まらないだろう。


『そうと決まれば早く行こう!』


 昨日と全く同じ子供のようなキラキラとした目をしている。


『分かった分かった。少し準備するから待っててくれ』


 俺は昨日と同じ手順を踏んで、ここに戻って来られるように魔法をかけた。


『待たせたな。行こう』


『ああ!』


 パーシヴァルはそんなに強い敵と戦いたいのか、朝だというのにテンションマックスで扉をバンッ! と勢いよく飛び出した。


『まったく……』


 俺はそんなパーシヴァルをまるで手のかかる生徒のように見て少し微笑んだ。


 また昨日と同じようにパーシヴァルを見張ってないとな。


 ――しかし外に出た瞬間、空気が変わった。


 光景そのものは変わっていない。だが昨日とはまるで何かが違う。


 ――肌で感じる。強い生物が近くにいる。それも一匹や二匹じゃない。もっとだ。数十……いや百はいる。


 こちらに向かってくるわけではないが、もし出くわしたら少し骨が折れるかもしれない。


『主人……これは……』


 パーシヴァルもこの異変を感じて、さすがに足を止めている。


『ああ……強いモンスターか何かが近くにいっぱいいるな』


 しかしどういうことだ? なぜ急に強いモンスターが……?


 詳細は分からない。ただあまり会うべきではないのは分かる。


 この研修でモンスターを倒せとまでは言われてない。ただ3日間生き残ればいい。食料も昨日モンスターを倒した分と小屋の中の冷蔵庫にまだいっぱいある。


 ならばここは無闇に戦わずに、モンスターとの戦いを極力避けるべきだ。まあ2、3匹くらいなら相手しても大丈夫だと思うので、それだけ倒して小屋に戻ろう。俺はパーシヴァルにそう伝えようとしたのが――


『よしっ! 面白くなってきた! 片っ端から喧嘩売ってやる!』


 パーシヴァルは俺の考えとは真逆に、1人で強いモンスターのいる所まで走っていった。


『おい、ちょっと待て!』


 そう言った時にはもう遅く、パーシヴァルは50メートル先くらい離れていた。


『ったく……!』


 俺はパーシヴァルの後を追った。


 パーシヴァルの足は陸上選手顔負けの速さを誇る。体力クソ雑魚の俺ではとてもではないが追いつけないし、一瞬にして見失ってしまうだろう。


 だが今の俺ならあらゆる魔法を使えば、簡単にパーシヴァルに追いつくことができる。


 例えば筋力増強魔法で力をつけてから、俊足魔法で文字通り速く走る事もできるし、シンプルに風魔法を使って自分に追い風を立てることもできる。


 今回は転移魔法“瞬間移動(テレポート)“を多用して、体力を使わずに前へ前へとワープするやり方でパーシヴァルに追いつくつもりだ。


 しかしこの移動方法だと、わりと魔力を喰ってしまうが、パーシヴァルから目を離すわけにはいかないので、やむを得ない。


 俺はパーシヴァルが視界内から完全に消える前にその方法で決して見失わないように追いかけた。


 転移魔法を使う際に気をつける事は、転移先に障害物がないかちゃんと確認してから使おう。じゃないと障害物にぶつかって大きなケガに繋がる事があります。気をつけてね、お兄さんとの約束だよ☆


 ――さて、そろそろパーシヴァルとモンスターが接触する頃だ。


 結局、転移魔法を使っても50メートル以上距離を取ったままパーシヴァルには追いつけなかったが、はぐれてしまうなんて事が無かったのは幸いだ。というかむしろ見失わないようにするという目的はちゃんと達成しているのだから上等だろう。


『居たぞ! 喰らいやがれ!』


 そんな気合いの入った声が聞こえた。次に剣と何かがぶつかり合うような金属音が聞こえた。どうやらもう戦闘に入っているようだ。


 俺もあと5秒ほどでパーシヴァルに加勢することができる。


 まさかパーシヴァルに限って5秒以内に倒されるなんて事はないだろうが、油断は禁物だ。


 それに昨日出会ったモンスター達はどれも一撃で倒せるのに、今パーシヴァルが戦ってるモンスターは一撃で倒せなかったのか、まだ剣と交わる音が連続で響き渡っている。これは簡単に倒せる相手ではないという証明だ。


『今行くぞパーシヴァル!』


 戦場にたどり着くと、そこには強敵と戦えて嬉しそうなパーシヴァルと――


『あれ……パーシヴァルと戦ってるあいつ……どこかで見たような……?』

第292話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。


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