第288話『スーパーハイパーウルトラ超絶美少女マーリン様』
大変お待たせしました。
第288話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※文字数多めです。
わぁ〜これがこの時代の最先端の魔法が学べる私立東都魔法学院か〜!
とても大きくてかっこいいな〜!
怪しさを感じさせる黒々しい闇色の色合い。
見る者に緊張感を与えるような厳つい造形。
厨ニ心をくすぐられるようなかっこいいデザイン。
学校というより、まるで魔王城みたいだな〜。
……まあ、あの魔王城そのものなんですけどね。
違う箇所があるとすれば、特に結界等を張っていないのと、大樹に囲まれていない事だ。代わりに車を停める駐車スペースや体育館、それと校庭があることくらいだ。
『あちらが入口でございます』
俺達は車から降りて、新井さんが指し示す入口へ足を踏み入れた。
よく見ると入口もあの魔王城とは違って、透明の自動ドアになっていた。
その先も魔王城の内装とは大きく異なり、ドアの先には大きな下駄箱がいくつか並んでいて、いくつもの教室や上へ連なる階段もあり、学校というイメージを完全に守りきっている。
懐かしい。もちろんこことは違うが、俺が学校に通っていた時の甘酸っぱい青春を過ごしていた時の事を思い出してしまう――――と、まともな学校生活を過ごしていた陽キャはそう思うだろう。でも俺は違う。むしろ嫌な出来事がどうしても頭に浮かんでしまう。
今にも怒そうだ。今にも泣きそうだ。
暴れたい。
学校の窓も机も椅子も教室も職員室も何もかもを壊したい。
そう思ってしまうが、とはいえここで暴れたってしょうがない。
俺のすべきことはここの学院長であるマーリン(?)に会って少しでも多くの情報を入手すること。
俺とパーシヴァルを何らかの手段によって今から1万年後まで生きられるようにすること。
そして、ブロンズ様やみんなともう1度会いに行くことだ。
目的を忘れるなダスト。
しっかりしろ。堪えろ。
過去に復讐したいのは分かる。だがそれよりも大切な事があるだろう。
ダストが1番気にしなければいけない事は過去じゃない。現在だろ。そして未来だろ。
そうだ。そうだな。
自分、俺にそう言い聞かすことで、なんとか暴走せずに済んだ。
『来客用の下駄箱はこちらです。スリッパをご用意させて頂きました』
『ありがとうございます』
俺とパーシヴァルは靴を来客用の下駄箱に置いて、代わりに履き心地抜群のスリッパを使った。
外装は完全に気味の悪い魔王城なのに、この対応力といい雰囲気といい、魔法を学ぶ所以外は日本の学校とほとんど変わらない。
しかしこのラスボスの居城みたいな外観といったら……この学校作った奴、完全に趣味でやってるだろ。
ここの生徒の親御さんもよくこんな外装がヤバい学校に行かせようと思ったな。
……といっても俺の親みたいな思考の奴だったら、子供の事なんてどうでもいいと思って、こんな学校に入っても何とも思わないんだろうな。
少し嫌な事を思い出してしまった。
忘れろ忘れろ。俺にはもう家族同然の仲間がいるじゃないか。
『学院長室は最上階である5階にあります。エレベーターがございますので、どうぞこちらに』
エレベーターの横にある上向きの三角形のボタンを新井さんが押すと、誰も使ってないのかすぐに人を乗せる箱が到着した。
『これがえれべーたーというやつか? これに乗って行けば上にたどり着くということか?』
『はい。パーシヴァル様のおっしゃる通りでございます。あとは行きたい階数のボタンを押せばすぐに目的地に行くことができます』
エレベーターも分からないパーシヴァルに、新井さんは丁寧に説明してくれた。
そんなイケメン執事は5と記されたボタンを押すと、すぐに扉は閉まり、命令通り従順に5階まで俺達を運んだ。
そしてエレベーターは目的の5階にたどり着き、扉が開かれると、まるで高級ホテルのような豪華な内装になっていた。
あまりにも学校とは思えない風景に俺達は来るところを間違えたのかと思ってしまった。
『こちらが5階となります。学院長室はこれより奥の方にございます』
しかし新井さんの表情はまるで変わらず、トコトコと豪華なカーペットを踏んでいる。
どうやら、ここで間違いないようだ。
俺はこの見るからに高そうなカーペットを、新井さんが用意してくれた来客用のスリッパとはいえ、踏んでしまっていいのかと葛藤した。
もし弁償することになったとして金額はいくらになるのか。とてもじゃないが一文無しの俺には払えそうにない。パーシヴァルも金なんか持ってなさそうだし……。
『ダスト様、どうかされましたか?』
『主人?』
俺がそうこう考えている内に2人はカーペットを踏んで先に進んでいた。
……うん。パーシヴァルも全く気にしてなさそうだし、俺もあまり気にしない方がいいか。
『すみません、今行きます』
俺は弁償 (なんてされるとは思わないけど)覚悟でカーペットを踏み、2人の後に続いた。
このフロアには生徒はおろか他の教員らしき人もいない。いるのは魔法を巧みに操って掃除をしている清掃業の方々や、新井さんのような執事と思われる人達くらいだ。誰も彼も来客が来ている事に気づかないくらい忙しなく動き回っている。
『こちらが学院長室です』
新井さんはそう言って、ドアにコンコンとノックをした後、俺とパーシヴァルを連れてきた事を扉の向こう側にいるであろう学院長に伝えた。
すると、入ってきてー! と学院長とは思えない陽気で可愛い声が聞こえた。
俺もパーシヴァルもその声には聞き覚えがある。
完全にマーリンだ。偶然名前が同じとかではなく、マーリンそのものだ。
あのマーリンがこの先にいるのだ。
さっきの明るい陽キャみたいな声のトーンを聞く限り、性格までも俺達の知るマーリンだろう。
まあ、そもそもスーパーハイパーウルトラ超絶美少女マーリン様なんて呼ばせている時点で、あのマーリンなのはほぼ確定だったか。
『失礼致します』
扉を開けると、そこにはどこかで見たことがある白髪の美少女が、この学院の1番地位が高い者が座る事が許される椅子に腰掛けている。
机の上には、今にも崩れそうな山積みの書類。
よく分からないデザインのペンや僅かしか残ってない複数のペットボトル等の私物が散乱していることから、ずさんで普段から整理整頓もできないタイプの女だと理解した。
そんな彼女だが外見はやはり可愛い。まあマーリンと同じ顔で同じ声だから当然だが、格好が元の時代と違って、女性用のスーツを着ている。
『やあやあ初めまして! 私の事はそこにいる新井君に聞いてもらったと思うんだけど、改めて自己紹介させてね。私の名前はスーパーハイパーウルトラ超絶美少女マーリン様って言うんだ! この私立東都魔法学院の学院長さ! よろしくね! ダスト君にパーシヴァルちゃん!』
俺達は今、目の前にいるテンション高めのマーリンに自己紹介もした覚えもないのに、なぜか俺達の名前を当然のように知っている。
じゃあこのマーリンは元の時代のマーリンが実は俺達と一緒に過去に戻ってきたのか?
それとも未来のマーリンとなんらかのインチキ魔法で情報を共有したのか?
いずれもありえない話ではない。チートが存在するこの異世界なら。
『初めまして。もう先に名前を言われてしまったが俺はダスト。ここでの名前はオーガスト・ディーンだ』
『私の名前はパーシヴァル。ここではパーシー・ヴァルキリー? という名前になっているらしい』
『君達の事は未来の私から聞いてるよ! これからは私がダスト君……いやオーガスト君とパーシーちゃんのサポートをさせてもらうよ!』
聞き間違えでなければ、俺達の事は未来の私から聞いてると言ったな。
どうやら、やはり時代と時代を繋ぐ大魔法を使って、現在のマーリンと話していたようだ。
『いや〜、未来の魔法すごいよね。なんたって未来から通信するという世紀の大発明のような魔法が使えるなんてね!』
『いや、そんなすごい魔法を使える人はあっちのマーリンくらいしか使えんよ』
ダスト的には使えない事はないが、俺自身が時空通信魔法の適正がいまいちなので使いづらい。繋がってもまるで電波が不安定な状態のようにプツプツと音声が途切れて、イラつく事間違いなしだ。
『それでもすごいよ〜! いや〜魔法って6種類しかないものだと思ってたから、まさか数百いや数千以上の魔法があるなんて凄すぎるよ!』
未来の魔法に大興奮の様子。
まあそりゃそうか。魔法は全6種類が常識になっているこの時代にとっては、まさか未来ではこれほど魔法が増えているなんて思わないし、想像もつかないだろう。
現代人で例えるなら、2100年代から来た未来人に飛んだり透明になったり変形するようになる車を実際に見せられてるようなものだろうな。
『ねえねえ、オーガスト君とパーシーちゃんも未来の魔法使えるの?』
『あいにく私は物理戦闘専門で魔法は炎魔法くらいしか使えない』
『俺はほぼ全部覚えてるが、適正によっては使えない。例えば今マーリンが――』
『スーパーハイパーウルトラ超絶美少女マーリン様!』
私を呼ぶ時はそう呼べと圧をかけてきた。めんどくせえ。
新井さんはそんなマーリンに呆れて後ろでため息をついている。きっと新井さんも何言ってんだこいつと思っているだろう。お互い苦労するよな。
『はぁ……えっと話を戻すとだな、スーパーハイパーウルトラ超絶美少女マーリン様がさっきすごいって言ってた時空通信魔法は俺には適正が無いので使えねえ。他にも適正があまりにも無いものは全て使えないんだ』
俺は俺の知る限りの魔法の情報を話した。
過去の人間に話すべきではないのは分かっている。だがスーパーハイパーウルトラ超絶美少女マーリン様は未来に何が起きるのかを把握しているし、タイムパラドックスについても、未来のマーリンが釘を刺してくるはずだ。未来を変えうるような情報を外に漏らすようなマネはしないだろう。
こんな現実的じゃない話を聞かされた新井さんも、さっきからずっと表情を1ミリも変えておらず、当然のように頷いていることから、おそらく彼も未来の話は聞かされているのだろう。
一応慧眼魔法でこの学院長室を調べてみたが、特に盗聴器や変な魔法等はしかけられてなかった。というかこの時代だと魔法による盗聴は無理か。そもそも種類が少ないからその点ではありえない。あるとしたら、それをしかけた奴は絶対俺達のような未来人だろう。
『ほうほう……やっぱり未来は凄いね。魔法の先導者なんて呼ばれている私ですら舌を巻くよ』
この時代でのスーパーハイ……もうめんどくさいから心の中では過去のマーリンと呼ばせてもらうが、まだ魔法が少ない中で彼女は自分でも言っていたが、魔法の先導者と言われている。
おそらく魔法を扱う事に関しては彼女の右に出る者はあまりいないだろう。
『そんな君達に頼みたい事があるんだ』
マーリンは急に落ち着いたトーンで真面目な表情になった。
ここからが本題というやつか。
一体何を頼まれるのやら。
『頼みたい事って何だ?』
『この学院に関わることなんだけど……』
『この学院に関わる……? 俺達をこの学院に転入させるとか?』
『いや君達には、ぜひ先生になって生徒たちを導いてほしいんだ』
『え?』
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