第273話『自白(?)』
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『犯人が……複数人だと?』
誰もが犯人は1人だと思い込んでいただけに動揺を隠せず、食堂中がざわめいた。
『どういうことなんだ? エレック』
『まあまあ皆さん、落ち着いて下さい。そんなに焦らなくても1から話しますから』
エレックはブロンズちゃんの両手首を手錠のように掴んだまま推理を披露した。
『犯人の正体を明かす前に、犯人はどうやってダストさんを殺したのかをお教え致します』
『ん? どうやってもなにも刃物……包丁でダストを刺したんじゃないのか? ちゃんと刺された跡があったんだろ?』
『確かにそうですね。ですが本当にそれだけだとお思いですか?』
『なんだと?』
『考えても見て下さい。皆さんご存知の通りダストさんは私の想像以上に強くて警戒心がお強い方ですよね。我が母国で幹部だった私でも多分まともに戦えば勝ち目はないでしょう。そんなレベルの人を慣れない刃物で殺すにはあまりにも難易度が高すぎると思いませんか?』
『確かに……』
エレックの言っている事は正しい。ここにいるエレック自身は知らないが、事件が起きる前にループ現象に囚われていたダストはループを脱するためにエレックを何回も何回も倒している。何か細工でもしない限りダストを倒すのは不可能だろう。
つまり何かしらの罠をしかけて、うまく嵌めれさえすれば、どんなに戦闘力が低くても倒すことは容易だ。
しかし、これもエレックの言った通りだがダストは警戒心が強い。ダスト自身も実際に何回か殺された事があるので余計だ。少なくとも会ったばかりの人物を簡単に信用しないし、いつ奇襲されてもいいように常に保険をかけている。
そうなると犯人は必然的にダストと比較的長い付き合いで信頼関係が深い魔王城の幹部の誰かということになるが、その中で唯一アリバイがあるのは赤髪ちゃん。更に魔王は厨房には入った形跡はないので凶器を持っていくのは不可能。よって犯人はゴールドちゃん、シルバーちゃん、ブロンズちゃんの中の誰かだ。
エレックは犯人が何人で誰なのか……刃物を刺す以外に行った細工も全て知っている。
『ではそろそろ皆さんお待ちかねの犯人の暴露ショーを始めるとしましょうか! 犯人の正体は――』
犯人の正体を悪人のような醜悪な顔で暴露しようとしたその時――
『はっ! じゃあつまり犯人は相当強い人ってことか!』
フランがひらめいたように突然立ち上がって、エレックの犯人の暴露ショーに割り込んだ。
ただフランのその推理は間違っているのだが、“その線もあるよね〜“と言えるようなものであった。しかもそれが可能である人物がいるだけに完全に否定することは誰にもできなかった。
これにはエレックも困惑した。まさか推理が苦手なフランがここでこんなタイミングでそんな発言をするとは想像もつかなかったのだ。
『え、いや違――』
それは違うと否定しようとしたエレックの発言は流され、みんなはそれぞれこの中で1番強い人を思い浮かべた。すると、ほとんどの人がケールの方を向いた。
『ん〜、私〜?』
ケールは自分に指を指して首を傾げた。
『ケールさん、何か弁明はあるだろうか? あなたのようなお美しい方を俺は疑いたくないよ』
ケイは悲しそうな顔をしながらケールの手を握った。
『う〜ん、無い』
『え、無いのですか?』
ケールはケイの手を払って、こう言った。
『うん、もうしょうがないから自白します。はい私がダスト君を殺した犯人で〜す』
ケールはもう降参と言わんばかりに両手を上げてそう言った。
『やけにあっさり認めるんだな』
『だってもう反論のしようもないし〜、諦めるしかないね〜』
ケールのあまりにもあっさりした自白ぶりに、みんなどこか腑に落ちてない。むしろ不自然極まりない。
『え、本当にケールさんがやったんですか?』
この中で1番ケールとの付き合いが長い桐華はどうしてもケールが殺人を犯したとは思えないようだ。いや桐華だけではない。ケールと少しでも関わった事がある者達も、ケールがダストを殺す動機があるとは思えなかった。
『そうだよ〜、ごめんね桐華ちゃん。せっかくダスト君と仲良くなれそうだったのに』
『でも何でケールさんが?』
『なんでかって言うとね〜』
ケールがダストを殺した動機を話そうとすると、エレックはお構いなしにこう口を挟んだ。
『ちょっと待ってください! 本当にあなたが犯人なんですか? 何か別の事件と勘違いしてませんか?』
『別の事件なんかないし勘違いなんてしてないよ〜、さっきから私が自白してる通りだよ〜』
『いやいやいや、あまりにもあっさりすぎるでしょう!』
『いや〜だって〜、みんなとせっかく仲良くなったのに軽蔑の目で見られるのが嫌だったからさ〜』
『いやいやいや、そんな風に考えているのなら殺人なんてするはずないでしょう……?』
『そんなことないよ〜! ダスト君はね、私がミニスカ履いてるのをいいことによく私のパンツを見ようとするし、ブロンズちゃんに妄想越しでセクハラするし、アミちゃんの胸ばかり見たりするし……こういうことする危険人物を同じ乙女として見過ごせるわけないでしょ〜!』
『は? セクハラ……おんなのてき……?』
『うん〜』
エレックは本当の犯人を知っているので、彼の中ではケールは犯人ではないのでこれは嘘の自白と断定している。
『ふざけるな! そんな理由が認められるわけがない! あなたは嘘をついている! 私は実はもう犯人は分かってるんだ! 教えてやりますよ! 犯人は――』
『うるさい黙って』
ケールはエレックに殺意を込めて睨みつけた。
『ひ、ひぃ……!』
エレックはケールの殺意の目に恐怖を覚え、思わず尻餅をついた。その際にブロンズちゃんがエレックから解放されるとすぐにプラチナとブラックの元に逃げ出した。
エレック以外にも殺意を向けたわけではないのに他のみんなも同じように威圧するケールに恐怖を抱いた。ガールズトークをして仲が深まったブロンズちゃんや、少し前まで同僚だった桐華も例外ではない。
『あ、みんな怖がらせてごめんね〜、続き話していい?』
みんなを怖がらせてしまったと反省をしたケールは湧き上がった殺意を一旦しまい、いつもの無表情な顔で続きを話した。
『えっと〜、エレックさん? 私はさっきからずっと自白してるのに何であなたは私を犯人だと認めないの? というか何でそんなに焦ってるの?』
『あ、焦ってなどいませんよ! さっきも言った通り私は本当の犯人を知っているんだ! だからあなたが犯人ではないことはもう分かっているんだ!』
『いやいや私が犯人なんだって〜』
『それが嘘だと言っているんだ! そもそも死体解剖したあなたなら分かってるはずだ! ダストさんの死体にはしびれ粉が入っていたことに!』
『しびれ粉……?』
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