第271話『手がかり』
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『ねえ、そういえばさっきルキウス達が帰ってきた時に手がかりになりそうなものを見つけたって言ってたけど、何を見つけてきたの?』
『ああ、これだよ』
アミはポケットから、先端に血がついている銀色の歪な三角形の尖った破片のようなものを出してきた。
『何これ? 破片? 血がついてるけどもしかして……?』
『おそらくダスト君を殺した凶器の破片だよ』
『どこで見つけたの?』
『実は私達、マーリンさんを探すついでに、どうしても現場が気になってもう1度行ってみたんだ。それで足元をよく見たらそれが落ちてたんだよね』
『ふーん……』
水の女神はマジマジとその破片を見つめた。
『……そんなに見てどうしたの?』
『あ、いや何かしら……これどこかで見たことあるのよね』
『どこかで?』
『いやそりゃ刃物なんだから普通に見たことくらいあるだろ』
ゴールドちゃんは破片を見ながらそう言った。
『いやそうじゃなくて……刃物は刃物でもこの質っていうの? 何か最近どこかで見たことがある気がするの』
水の女神は破片に突くように触れた。
『う〜〜〜〜〜〜〜ん』
その後、水の女神はしばらく自分の海馬に問いかけ続けたが、思い出せそうでなかなか頭の中に浮かんでこなかった。
『あーもう! 全然思い出せないいいい!!!』
『ねえ水の女神様?』
『あ、はい。えっと、プラチナさん? 何かしら?』
頭を抱える水の女神を見兼ねたプラチナはある提案を持ってきた。
『どんなに思い出そうとしても思い出せないなら無理する必要はないわ。こういう時は頭をリラックスさせましょ』
『え? リラックスって……今はそんな時じゃ……』
『いいえ、そんな時だからこそよ。そうだ、一緒にお風呂入りましょ』
『えぇ……私さっき入ったばかりなんだけど……いやいやそうじゃなくて――』
『いいからいいから♪』
プラチナは水の女神の背中を押して半ば強制的に大浴場まで行かせようとした。
『あ、せっかくだからもう1人……マゼンダ……いいえ赤髪ちゃん、私達の見張り役も兼ねて一緒に来てくれないかしら?』
『私ですか? 別に構いませんが……』
『わーい、ありがと〜。それじゃ浴場へレッツゴー』
水の女神とプラチナと赤髪ちゃんは、浴場でリラックスのために食堂をあとにした。
『えぇ……捜査はどうすんだよ?』
『残った俺たちでやれってことじゃないかな? でも兄貴はそういうの苦手だろうから座ってて』
『なんだよそれ! まあ確かに苦手だけどさ!』
『認めるんだ……』
『でもよ……俺だってダスト兄ちゃんともっと話したかったのに……もう会うことすらないって考えると悔しくて悔しくて堪らないんだ……! このまま黙っていられるわけがないだろ!』
ダスト兄ちゃんを殺した奴を許さない。そんな思いがフランを掻き立てる。……だがケンの言う通りフランはこういう頭を使う事は苦手だ。彼にできることがあるとしたら誰かが妙な真似をしないように見張り役をすることくらいだ。
『まあ落ち着けよフラン。気持ちは分かるけど』
『だけどよ……!』
フランも本当は分かっている。自分の頭では事件解決に役に立たないことを。だからこそ悔しくてもどかしい気持ちになっている。
そんなフランの気持ちを理解しているケイはフランの頭を撫でながらこう言った。
『大丈夫だ、フラン。お前にはお前の役割がある。それは誰かが勝手な行動しないように見張ることだ』
『ケイ兄ちゃん……』
『それも重要な役割だ。フランがやってくれるなら俺としても助かる』
『お、おう、そうか重要か。分かったよ』
『みんなで力を合わせて必ずダストの仇を取ってやろうぜ!』
『ああ、そうだな!』
ケイに説得されたフランは見張り役という重要な役割を担うこととなった。
『それなら俺も見張り役をやろう。フラン1人だけじゃ手に余るかもしれないからな』
おそらく自分もあまり役に立たないだろうと思ったケイデスも見張り役を申し出た。
『分かった。それじゃあフランとケイデスは見張りを頼む。あとは捜査する班を決めたいが……』
『それはやっぱりさっき浴場に行った水の女神達を待ってからでも良いんじゃない? どうせ儂らがここで固まっていれば犯人も下手な行動はできないだろうし』
『うーん、確かにそうだな。よしじゃあ待つとするか』
こうして食堂に残った者は大人しく水の女神達を待つことにした。
それから30分後……。
『……遅くね?』
『確かに遅いよな』
『え、普通に長風呂じゃないの?』
人によっては30分の風呂を長いと感じる者もいれば普通という者もいる。それに対する反応は様々だ。……だが今の魔王城には殺人犯がいる。そんな中で30分も戻ってこないとなると長風呂の可能性は十分にあったとしてももしかしたら誰か殺されているのではと不安になるものだ。
現在食堂以外の所に行っているのは、水の女神、プラチナ、赤髪ちゃん、ルキウス、マーリンの5人だ。
それぞれに監視の目があるものの、幻術魔法や霧魔法といった視界を奪う魔法があるこの世界ではそんなものはあまり意味を持たない。
どんなに相手を見張っていても、その相手が既に幻術魔法を使っていれば、見張っていないも同然だ。その間に殺人が発生する可能性も十分ありえる。
もちろんそんな魔法を覚えているのはこの魔王城の中でも少数だが、実は犯人がみんなに内緒で使えていたりするかもしれない。そもそも誰がどの魔法を覚えているか誰一人として把握しきれていない。
犯人に関してあまりにも情報不足だ。
だからこそ綿密な捜査が必要なのだ。
少しでも犯人の手がかりを見つけるため。みんなを安心させたいため。そして……ダストの仇を取るために。
『皆さん、遅くなってしまい申し訳ございません。ただいま戻りました』
食堂の扉を開けて戻ってきたのは、ルキウスとこっ酷く叱られて今も身体が震えているマーリンだった。
『お、おかえり』
マーリンは戻ってくるなり顔が見えないように机に突っ伏した。
もしかしてルキウスの説教が凄すぎて泣いてるのかなと誰もが思った。
その直後に水の女神達も湯上がりの良い匂いを醸し出して帰ってきた。
『お、帰ってきた帰ってきた。おかえり』
『ただいま。みんな待たせたわね……』
『待たせた……?』
『思い出したのよ。あの破片について』
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