第269話『それぞれのアリバイ②』
お待たせしました。
第269話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※文字数多めです。
霧の女神と幻の女神の2神が怪しいムーブだったが、修練場メンバーの証言の矛盾により、一斉にガラードに疑いの目が向けられた。だがその中でルキウスだけはガラードに絶大な信頼を置いていて、証拠は無いもののガラードはそんな事をするようなやつじゃないと反論した。
しかし桐華、レッド、ケイデス、ブラックの4人からすれば、ガラードは完全に嘘をついていて、アリバイを偽っていたのではと、決してガラードを疑いたいわけではないが、どうしてもそう思ってしまう。
だが、逆にガラードからすれば、修練場には自分1人だけなのに、他の4人が修練場にいたと嘘をついて私を陥れようとしているのではないかと思いたくはないがそう思っている。
証言が合っているかどうかはさておき、どちらも嘘をついているようには見えない。ダストを殺す動機があるとはとても思えない。
実は魔王城には修練場が2つあるのでは? と言われたが、魔王城に修練場は1つだけだと家主である魔王にはっきりと否定された。
更にいうと似たような内装の部屋があるわけでもないし、修練場の場所も食堂から近く分かりやすい場所にあるので間違いようがない。
ここで赤髪ちゃんが思い出したかのように、桐華とガラードの目撃情報を話してくれた。まず桐華が最初に入ったところを見て、その後また修練場近くまで来てみると、ガラードが同じ修練場に入っていた瞬間を見たらしい。
ちなみにその赤髪ちゃんも魔王城を掃除しながら通りかかる女の子を盗s……撮影していた所を何人かに何十回というレベルで目撃されているので犯行は不可能だ。目撃情報についても嘘はついていないだろう。
赤髪ちゃんの発言により、ガラードの疑いは晴れた。ただ、なぜ同じ修練場に入ったはずなのにガラードだけが誰にも気づかれなかったのかは謎のままだった。
――そして、更に赤髪ちゃんから有益な情報を得た。それは、ガラードが修練場に入る瞬間、何かしらの魔法が発動したような気がして、しかもその近くに霧の女神と幻の女神の姿が一瞬見えたそうだ。
再び霧の女神と幻の女神に疑いの目が向けられた。
無論2神ともその時の事を覚えてるはずもなく、私達はやってない! の一点張りでまともな反論もできなかった。
水の女神はそんな中でまだ聞いていない他の人のアリバイを聞いてみた。
第1発見者である魔王はダストの死体を見つけるまでは、結界内の範囲で外の様子を見ていたので目撃者はいなかった。嘘をついている可能性もあるので白にはせず白よりのグレーとした。
次にみどりちゃんはバレスの部屋でバレスとずっと2人きりで話していたらしい。バレスもそうだと言っている。実は2人で手を組んでいたなら話しは別だが、犯行可能時刻に2人がバレスの部屋以外に誰にも目撃されてないということでみどりちゃんとバレスを白とした。
次にケールは何をしていたのか与えられた自室で1人でこもっていたらしい。アリバイ証明ができない上に、ケールの身体能力なら誰にも見つからずに廊下まで行ってからダストを殺すこともできるのではないかと疑われてしまった。よってケールは黒よりのグレーとなった。
次にエレックは何となく娯楽施設の方へ歩いていたところを死体となったダストを抱えた魔王とばったり会ったようだ。魔王も確かにそうだと言っていたし、死亡推定時刻の5分前くらいまで赤髪ちゃんと廊下で話していたようなので犯行は不可能と断定された。
最後にルキウスは実はまだ身体が回復しきっておらず、身体を休めるためずっと1人で自室にこもっていたようだ。いくらルキウスの身体が丈夫だとしても、奥の廊下にいるダストを殺しに行ける余裕なんてない。もしできたとしても息切れや動悸がする等の症状が現れるはずだ。だが今のルキウスにはそういった症状は一切なく、その間は身体を動かしていないのは確実だと看護婦のケールがそう断言したので犯行は不可能と断定された。
あとアリバイを聞いていないのはマーリンとパーシヴァルだが、パーシヴァルは生きる源であるダストの魔力が送られなかったため、どこかに死体として転がっているだろう。
マーリンに関しては、先ほど解散したマーリン捜索隊を再び結成して、魔王城中を探させることにした。パーシヴァルの死体ももし途中で見つければ回収するように水の女神が命じた。
これまでの情報をまとめると、犯行が可能なのは水の女神、霧の女神、幻の女神、ゴールドちゃん、シルバーちゃん、プラチナ、魔王、ケール、マーリンの8名だ。この中に犯人がいる事が確定した。だがそれは1人で犯行を起こし、協力者がいないことが前提の話しだ。複数人による犯行になるとまた容疑者が増えてしまう。
……ここには探偵も殺人事件の捜索に手慣れている警察もおらず、どう捜査したらいいのか誰も分からない。とりあえず今は犯人が1人と仮定して進めている。
まず容疑者の8名の中から更に絞るために現場検証だ。
まず水の女神とケイとバレスの3人が現場で捜査する事になった。
じゃああとはこのまま解散……と言いたいところだが、犯人がいる中で人をバラけさせるのも危険なので、マーリン捜索隊と現場捜査組以外のみんなは、たとえ犯行不可能の人であっても食堂から出させないようにした。トイレに行きたい場合は他の誰かと行動するようにルールを決めた。
『それじゃ儂らはマーリンを探してくる。みんな、あとは頼むぞ』
『おう、行ってらっしゃい』
マーリン捜索隊の魔王、ルキウス、アミ、アリス、ケイデスの5人は再びマーリンを探すために食堂をあとにした。
『なあ、今思ったんだが、あの魔王は容疑者なのに行かせて大丈夫なのか?』
マーリン捜索隊が行って食堂の扉が閉まってから直後にフランが疑問を呈した。
『同感だね。そもそも魔王なんて信頼するに値しないよ』
元々魔王嫌いのバレスも、赤髪ちゃんやゴールドちゃんがいるにも関わらずそう言った。
それを聞いて、赤髪ちゃんは癇に障ってはいたが、こんな状況なので仕方ないとも思ったし、何よりバレスは親友であるため一言も反論できなかった。
しかしゴールドちゃんは、魔王を悪く言ったバレスを睨みつけ今にもハンマーで殴りかかろうとするも、赤髪ちゃんに静かに止められた。
『赤髪ちゃん放せよ、あいつまーちゃんを……!』
『ゴールドさん、落ち着いて下さい』
『これが落ち着いていられるかよ!』
『ゴールドさんは、魔王様がダスト様を殺害したとお思いですか?』
『そ、そんなわけねえだろ! だからまーちゃんの事を知りもしないあいつが分かったような口を聞いてんのがめちゃくちゃ腹立つんだ!』
『その通りです。誰がどんなに疑っていたとしても、魔王様が犯人なわけがありません。だからこそここは大人しく、信じましょう私達の主を』
赤髪ちゃんがそう言うと、ゴールドちゃんは冷静になったのかハンマーを置いた。
『……分かったよ。カッとなって悪かったな』
ゴールドちゃんはそう言うと、腕を組みながら静かに椅子に座った。
『私も言い過ぎたな……』
バレスが気まずそうにしながらゴールドちゃんに謝ろうとすると、そのタイミングで食堂の扉が開く音がした。
『ん? ずいぶん早いな。もう戻ってきたのか?』
マーリン捜索隊が早くも帰ってきたのかと思ったら――
『あれ? シルバーちゃんにブロンズちゃんじゃん』
扉を開けたシルバーちゃんは、失礼しますと言わんばかりに、みんなに軽く頭を下げてから、ブロンズちゃんを前に通した。
『みんな……ごめんね』
顔に涙痕がくっきりと残っているブロンズちゃんは頭を下げて謝罪した。
『ブロンズちゃん、本当に大丈夫なの?』
娘を心配するプラチナは、ブロンズちゃんの元へ駆け寄り、そう言った。
『ママ、もう大丈夫よ。……大丈夫じゃないけど、でも今はみんなと話し合わないといけないと思って』
ブロンズちゃんは決して意地を張っているわけでも無理をしているわけでもなく、心からそう思い、眼差しも真剣そのものだった。
『そうなのね、偉いわブロンズちゃん』
プラチナはブロンズちゃんの頭を撫でた。
『ママ……!』
泣きそうになったブロンズちゃんだったが、なんとか涙を堪えてただ優しく撫でる母の手を受け入れた。
『それでねママ、みんなに言いたいことがあるの』
『なに?』
『うん……マーリンお姉ちゃん、出てきて』
『え? マーリン??』
第269話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




