表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
272/726

第263話『握手してもらってもいいですか?』

お待たせしました。

第263話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。

『ん? ダストさん、どうかしたのですか?』


 顔色が悪くなった俺を見兼ねて、そう聞いてきた。


『いや、なんでもない』


『そうですか。あのダストさん、握手してもらってもいいですか?』


 エレックは、そう言って手を差し出した。その手には一切の魔力を感じないことから、魔法による細工はしていないことが分かる。


 だが――――。


『握手?』


『ええ、これからあなたと……あなた方と仲良くしていこうと思っていまして』


 ルキウス達と同じ意志を持っていたからか、俺達魔王軍の味方になることを宣言している。


 大抵の人間ならばこいつを信頼するだろう。それだけ印象の良さが大きく出ている。


 でも俺はエレックを信頼していない。


 なぜなら――――


 俺はこの後の展開を()()()()()


『おお、よろしくな』


 俺は普通に手を差し出し、エレックと握手をする。


 ここまでは問題ない。


 問題はここからだ。


『握手ありがとうございます……()()()()!!!』


 エレックは突如、悪人のような醜悪な顔に豹変し、俺の身体ごと手を引っ張り、左足で俺の横腹を蹴り上げようとした。


 この展開は、先程俺が未来予知魔法を発動したことで読めていた。


 まあ今の俺の実力なら未来予知なんてしなくても、エレックに勝てるがな。


 とはいえ蹴られて痛い思いをするのはごめんなので、俺は全身に氷魔法を発動し、俺ごとエレックを凍らせようとした。


『な――』


 ちょうどエレックの蹴りが俺の横腹に入る頃には、お互いの身体はもう既に氷の中に閉じ込められていた。


 そうなれば大抵は指1つ動かすこともできないし、意識も失うだろう。


 しかし俺だけはこういう時に都合の良い魔法を使っていたおかげで意識もあるし、新たに別の魔法も発動できる。


 俺はかなり難しいが自分を覆っている氷のみを溶かそうと、炎魔法を発動しようとした。


 すると――


『――――あれ?』


 気がつくと、エレックはいなくなっていた。


 瞬時にいなくなったというわけではなく、痕跡そのものが無かった。


 俺もさっきまで氷漬けになっていたので体温がかなり下がってるはずだが、まるで何も無かったかのように平温だ。


 まさかまた時が戻っているのか……?


 でもそれなら、あの時計だらけの部屋に連れてかれるもんだと思うんだがな。


 俺は状況を理解できず、しばらく立ち尽くしていた。


 すると――


『おや、あなたは……ダストさんですね!』


 先程まで俺と話しを……いや戦っていたエレックが何食わぬ顔で俺の前に現れた。


『……』


『ん? どうかしましたか?』


『さっき俺と会わなかったか?』


『私とダストさんがですか? いいえ初対面だと思うのですが……?』


『本当か?』


『は、はい本当ですよ!』


『……嘘をついているわけじゃ無さそうだな』


 どうやら、本当に時が戻っているようだ。


『分かってもらえてありがたいです!』


『……だがお前はこの後、俺に握手を求めてそのまま俺の身体を引き寄せて、横腹に蹴りを入れるつもりなんだろ?』


 俺がそう言うと、エレックの表情に僅かに焦りを感じた。本当に僅かなので見逃すところだった。


『いいえ、私はそのようなことはしません。確かに私達はつい先日までは敵対関係でした。しかし今はそんな場合ではありません。我々が協力しなければこの世界は破壊されてしまいます』


『うるせえよ、嘘ばっか言ってねえでさっさと俺に攻撃してこいよ、ほら魔法でも何でもいいからよ』


 俺はエレックの本性を出させるために挑発をした。


『ダストさん、どうして……私はただ皆さんと共に戦いたいと思っただけで……』


 本心ではそう思っていないだろう。きっと今でもどうやって俺に不意をついて攻撃するかで頭を働かせているに違いない。


『いいからかかってこいよ。俺はお前を今ここで殺すつもりだ』


 俺は殺傷能力の高い魔法を放とうとしたその時――


『――――あれ?』


 気がつくと、エレックはいなくなっていた。


 瞬時にいなくなったというわけではなく、痕跡そのものが無かった。


『また時が戻ったのか……?』


 それを確かめるため、再び俺はエレックがここに現れるまで待ってみた。


 すると――


『おや、あなたは……ダストさんですね!』


 やはりエレックは現れ、俺と初対面した時と一字一句同じ事を言っている。


 さっきは攻撃的になってしまったので、今度はフレンドリーに尚且握手をしないようにしよう。


『ああそうだ。俺はダストだ。あなたは?』


 もう知ってるけどな。


『申し遅れました! 私は正義教団の幹部エレックです。どうぞお見知りおきを!』


『宜しくな』


『はい! 宜しくお願い致します!』


 1回目と同じく丁寧な挨拶をしてくれた。


 問題はこの後だな。


『あ、あの……それでなんですが……私と握手してもらえませんか?』


 はいきた、握手。


『そういえばさ、エレックは何で正義教団の幹部になったんだ?』


 俺はエレックと握手することだけは避けるために話しを逸した。少し露骨すぎたような気もするが、なんとしても避けたいので多少は仕方ない。


『それはもちろん、私の家族や友人、国民の皆様が安心して笑って暮らせるようにしたかったからです! ……でも今はそれどころではなくなってきましたね……』


 と、心から悲しそうに言っているが、本当にそんなこと思ってねえだろ。


『だから私はあなた方と一刻も早くこの危機的状況をどうにかして、再びこの世界に平和を取り戻すのです!』


 それらしいことを言っているが、全部嘘だ。


 全く、よくもまあこんなキレイな言葉をベラベラと並べられるもんだ。あたかも自分を綺麗な人間に見せたいという心がバレバレだ。俺をカス野郎と言って不意をついてきたこと忘れてねえぞ。



 ――故郷(にほん)でもそうだった。どうしても生徒(こども)を服従させたい大人(きょうし)は皆そう言っていた。


 綺麗事を次から次へと並べて、まるで宗教みたいに生徒を教育(せんのう)していく。


 それが教師というものだ。自分の評価を下げたくない。そのためなら生徒がいじめられてるのにも目を瞑る。


 所詮、そういう奴らだ。


 教師も人間。本当に心の底から生徒を思う教師なんて漫画の世界にしかいない。いやもしかしたらそういう教師もいるのかも知れないが、少なくとも俺が見てきた教師はどいつもこいつも自分の保身ばかり気にするクズばっかだ。


 それどころか教師が生徒をいじめることすらある。裏で俺をいじめるように指示してたもんなぁ?


 ……とまあ嫌な事を思い出して話しが脱線してしまったが、とにかくエレックにはそういう大人の匂いがする。


 絶対に信用してはならない。


『……やっぱお前ダメだ』


『はい? どうかされましたか?』


『お前殺すわ』


『え――』


 エレックが抵抗する前に俺は瞬時に闇魔法で闇の剣を創造し、それでエレックの首を胴体から綺麗に切り離した。


 エレックの首は地に着き、床に血をつけながらコロコロと転がっていった。


 ああ初めてだな、人を殺したのは。でも不思議と初めてやった気がしなかった。


 “ダストの記憶”では何人も何十人も何百人……いや千を飛ばして万単位で人を殺しているらしい。


 ということは多分、俺のダスト化がだいぶ進んでいるんだろう。だから思考も想いも経験もダストそのものになりかけている。だからこうして今、人を殺しても、まるで俺が本当にダストで人を殺し慣れているかのように心が騒ぐことなく落ち着いていた。


『さて、これからどうなるんだ? また時が戻――』




『――ああやっぱりか』


 エレックの死体も血痕も跡形もなく消滅していた。無論俺がやったわけじゃない。 


 やはり、またしても時は戻っていた。


 そして――


『おや、あなたは……ダストさんですね!』


 こうして3回目のループが始まってしまった。


 どうすればこのループは止まるんだ?


第263話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ