第18話『魔王の災難』
お待たせしました!
第18話できましたので、宜しくお願い致します。
※改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
※2022年2月6日改稿しました。
※文字数少し多めです。
『……あれ?』
俺は目を覚ますと、全然知らない場所に居た。
ここはどこだ? 何で俺は、ここで寝てたんだっけ? そして、なぜ見知らぬ美少女に、膝枕をしてもらっているんだ……?
『ダスト君、起きたー?』
その見知らぬ美少女が、まるで知り合いのように俺に話しかけてきた。いや本当に誰だよ。
状況があまりにも意味不明だ。俺にはこんな美少女の知り合いはいないし、この場所も全く見覚えがない。
ということは……夢だな。これは夢の中の世界だ。美少女に膝枕をしてもらいたいという欲望があったが故に再現した夢なんだ。
そうに違いない。
このままもうちょっと愉悦に浸りたいところだが、現実にも俺好みの美少女はたくさんいるんでね。この娘には悪いけど、俺は夢からログアウトさせてもらうよ。
『……ふぅ、どうやらまだ夢の中のようだ、よし寝よう』
『ちょっと待って、夢じゃないよ! もう……起きて……ダストお兄ちゃん』
『お兄ちゃんですと!? って君は誰なの?』
『私はね~誰だと思う~?』
『ああ、なんだ魔王か』
『なぜ分かった!?』
『そのうざい言い方に、見覚えがありすぎた』
あの時のうざさを、俺は生涯忘れることはできないだろう。思い出してみるとなんかまた腹が立ってきたな。
それにしてもこいつは美少女になっても、このうざさは変わらないんだな……。うーん、この残念美少女。
『うざいとは何だ! ダスト君好みの美少女に向かって何てこと言うんだ!』
この自称美少女は(まあ本当に俺好みの美少女だけど)、ポカポカと俺の背中を殴ってきた。地味に痛いな……。
『はいはい、美少女美少女』
『なんだその適当な感じは! 噛みついてやる!』
残念美少女が可愛らしく激昂すると、獣のように歯を立てて俺の肩に噛みついてきた。
『痛てえ! 何すんだ! この残念美少女が!』
『うるさい! 誰が残念美少女だ!』
『こんな会話してる時点で、もう既に残念だ……ろう……』
会話の途中で突然やべえくらい重い疲労に襲われ、俺はパタッと倒れてしまった。
敵と戦ってこれならまだしも、まさかこのバカ魔王と子供染みた言い争いをして、死ぬことになるとは……ふっ……悪くない死に方だな……楽しかったぜ……。我が生涯に一片の……。
『って、まだ悔いだらけだ! 死んでる場合じゃねえぞ!』
死を悟った俺だがなんとか生き返った(?)。しかも、あれだけ流血してた? っぽい気がしたが、傷が塞がっていた。どうやら、残念魔王がいつの間に治してくれたようだ。
あれ、そもそも何でこんなに流血してたんだっけ?
『君のせいだからな……残念美少女とか言いやがって……これでもな……儂は魔王なんだぞ……』
残念美少女魔王は目に涙を浮かべながら、そう言った。そんなこと言われても残念なものは残念なんだよ。
『そんなことよりさ、何で今まで悪人面の爺さんに変身してたんだ?』
『だって、その方が魔王らしいじゃん』
まあ確かに俺のイメージ的にも、魔王といえば、悪人面のじいさんの方がしっくりくるけど……。俺は美少女の方がいいな。
『でも、美少女の魔王が居てもいいと思うけどな』
『そうかい? でも威厳が無いかな……って思ってさ』
いや、爺さんになっても威厳が無かったような……。部下であるはずの赤髪ちゃんによく説教されてるし、ゴールドちゃんからもまーちゃんなんて呼ばれてるし、もう舐められてるだろ。
それを言ってしまうと、また魔王が怒り狂って噛まれる未来は見えているので、心の中で消化する事にした。
『まあ、確かにこれだけ美少女だと、あまり強そうに見えないのも事実だな』
『でしょ? これだけ美・少・女だと、威厳が無いからな~』
美少女って言われた事が、そんなに嬉しかったのか、美少女の部分を強調した。
『でも、そのうざさはな……』
『何か言ったかね? 親愛なるダスト君』
『何も言ってはおりませぬよー、超絶可愛い魔王様』
この超絶うざ魔王……マジめんどくせえ。
『それで本題に入るが、何で俺はこんな所で倒れてたんだ?』
『え、そ、それはね~そ、そうだ、君がここに入った瞬間ね、落ちてたバナナの皮を踏んでスリップしてしまったんだよ。いたずら好きのブロンズちゃんが、仕掛けたのかもね~全く困ったものだよ~あはははは……』
この嘘下手残念美少女は、あからさまに目をそらして、訳の分からない事を言っている。バナナの皮を仕掛けるって、どこのレースゲームだよ。
『そんなわけねえだろ、嘘つくなら、もっとマシな嘘をつけ』
『な、何の事かな?』
『で、何があった?』
『う、そ、それは……』
答えると都合が悪いのか、目が泳ぎ出した。
このまま問い詰めて、真実を吐かせてやろうと思ったその時、魔王の運が良かったのか狙ったかのようなタイミングで扉が開いた。
『失礼します。魔王さま、ダストさま』
なぜか鼻にティッシュを詰めた赤髪ちゃんが、こっちの様子を見に来たようだ。
『赤髪ちゃん、それどうしたんですか?』
『何でもございません。お気になさらず』
そういえば、さっき食堂で、やたら百合百合してたな……それと何か関係が……。ゴクリ……あとでkwsk聞いてみようかな……。
『ダスト様、何か変な事考えてます?』
『あ、いえ、何も考えてないです』
『くれぐれも、変な事は考えないで下さいね』
赤髪ちゃんは、よほど聞かれたくないのか、ヤンデレのようなこわ~い目をしながら、口元だけ笑顔で釘を刺してきた。怖い。
その威圧感だけで俺は美少女同士の百合の事など考えられなくなるくらいの恐怖で硬直してしまった。赤髪ちゃんマジ怖い。
『それはそれとして、魔王様のそのお姿……久々に見ましたね』
『そ、そうだね』
なにやらこの嘘つき残念魔王は、赤髪ちゃんにこの姿を見られて焦っているようだ。一体どうしたんだろうか?
『ちょっと、私の部屋から、投影機と衣類を持ってくるので、そこで待っていてくださいね』
赤髪ちゃんが何か良からぬ事を企んでそうなニヤニヤ顔で、扉を閉めた。一体何をする気だ……。
『あわわわわ……私は逃げる!』
『あ、おい!』
残念アホ魔王は、慌てて修練場の裏口から逃げようとしたが、その先にあおいちゃんが先回りしており、既に逃げ道を封鎖されていた。
『あおいちゃん、そこどいて~』
『魔王様、ああなったお姉様は満足されるまで止められませんよ。まさかあの事件を、お忘れになられたのですか?』
『あの事件?』
『結構前の話ですが、ある日魔王様が、お姉様との大切な約束をすっぽかして、お姉様は怒り狂い、八つ当たりで、モンスター達の群れを荒らして森を血で染め上げた挙げ句、危うく街の人達にまで被害を及ぼしかけた、あのおぞましい事件を!』
なにそれ怖っ! 人災ってレベルじゃねえぞ!
『……』
この能天気バカ魔王は、何を思い出したのか、虚ろな目でこちらを見てきた。いや、そんな目で見られても……てか、赤髪ちゃんってそんなバーサーカーだったの?
『どこへ行くのですか~魔王様~?』
そうこうしている内に、赤髪ちゃんがはぁはぁと吐息を漏らしながら戻ってきてしまった。
あの顔はまずい。完全に獲物を狙う目だ。
なるほどな。確かにこれはより魔王としての威厳がなくなるわけだ。爺さんの時の方がマシだ。
『ひ、ひぃぃ』
『さぁ……魔王様の撮影会の始まりですよぉぉぉ』
この後ナントカ王様は運命から逃れられず、赤髪ちゃんの着せ替え人形と化した。それも何回も何回も撮影して、投影機具によるフラッシュの連射は俺からみても鬱陶しくて、しかもそれがありえんくらい長く、いつこの撮影会は終わるんだろう……と思った。
――その時の魔王の目は……死んでいた……。
『誰か……タスケテ……』
すまない、邪魔すると赤髪ちゃんからどんなことされるか……だから、こればかりは頑張ってくれとしか言えない。
『まーちゃん! 可愛いぞ!』
『魔王様、可愛いです……』
『あらあら……』
いつの間にかゴールドちゃん達3姉妹もやってきて、着せ替え奴隷の魔王の撮影会を楽しんでいた。
あの魔王の苦しむ顔を見ても助けもしないどころか盛り上がってるなんて、君達も可愛い顔して案外悪魔だね……。
『魔王様! ああ……魔王様! 可愛いですよ!』
『あの、これいつまで続くんだ?』
――3時間後――
『魔王様! 魔王様!』
あれから3時間くらい経ったはずだが、赤髪ちゃんは飽きもせず美少女魔王を撮りまくっていた。
『あはは……目が……目が……』
魔王は異常な数のフラッシュに耐えられなくなったのか目から赤い液体がツーと流れてきた。見ていて痛々しすぎる。これ以上は流石にまずい。
『あの、もう止めに入った方がいいのでは……?』
『……そうですね、そろそろ止めさせましょうか』
あおいちゃんもさすがにまずいと思ったのか、大好きなお姉ちゃんであっても、地獄の撮影会を止めるよう赤髪ちゃんに要請した。
『もうそんな時間ですか……まあそうですね、今日のところはこれくらいにしましょう』
こうして赤髪ちゃんによる、赤髪ちゃんのための、着せ替え美少女の魔王様の撮影会は終了した。
この後、魔王はフラッシュを浴びすぎて、赤い髪の妖怪の幻覚を見たようだ。その妖怪は常にカメラを持っており、フラッシュを無限に浴びせるというとんでもない嫌がらせをする妖怪だ。
俺はこれを後に“血の撮影会”と呼んだ……。
『魔王って大変なんだな……』
俺は少しだけ……ほんの少しだけ魔王に優しくしようと思った。
第18話を見て下さり、ありがとうございます。
第19話の方も、なるべく早く投稿していきたいと思います。
宜しくお願い致します。




