第257話『霧の女神は話したい』
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結局何て答えればいいか分からなかったので、適当にはぐらかした。
霧の女神は、俺から期待通りの解答が出なかったのか少し不満気だったが、すぐに別の話題に切り替えると、先程の事など忘却の彼方へ消え去り、談笑するくらいには場が盛り上がった。
悪いな、霧の女神。こればかりは色々と複雑すぎて答えられない。
今、答えられるとしたら、ダストとしてはアミさんが好き、としか言えない。
ただ俺としても、アミさんは美人だし、一緒に居て悪い気はしない。しかしブロンズ様……彼女の事がどうしても頭から離れない。一緒に居たい。デートしたい。抱きしめたい。でも念願のアイドルデビューもさせてやりたい。など様々な思いがある。これがダストではない俺としての感情だ。
だが、今の俺には“ダストの記憶”というファイルデータがある影響か、ダストに染まろうとしている。その代わり、魔力が秒刻みに上がっていて、使えなかった魔法もどんどん使えるようになっていってる……と思う。
なるほど、これが代償というやつか。
このままでは俺はダストそのものになって、俺自身の感情や思いはキレイ消え去る。そうなると、俺からのブロンズ様への好意も消えて、アミさんが俺の1番になるだろう。
でも、ダストでなければ、俺がルシウス・ペンドラゴンに勝つことも神の居城の守護神の猛攻を対処することもできない。そうなれば、ブロンズ様だけではなく、他のみんなも守れない。
だから、俺は……。
『……』
『ん? ダスト君、どうしたの?』
『え、あぁ、なんでもない』
『そう? じゃあ続きを話すけどさ――』
霧の女神はそれからぺちゃくちゃと色々な話をした。5割くらいただの雑談だったが、残りは正義教団の国に居たときに、霧の女神や他のみんなが何をしていたかを話してくれた。
ゲームに参加する前にランスロットによって、特別な檻に入れられたガラード達は、どうにかして水の女神だけは檻の外に出させることができた。そして水の女神は分身ケールさんと会い、2人でネヴィアを探しに行ったが、どこにもいなかった。しかも王妃室も、もぬけの殻だったという。
ネヴィアは、まるで空がこうなるのを予測して逃げ出したかのようだ。おそらく今回の黒幕なんだろう。そこにすらいないということを考えると、あの稲妻の嵐を巻き起こしたゼウス率いる神の居城と繋がっていると予想できる。俺達にゲームをさせたのも、もしかしたら俺達を安全な場所へ避難させないための時間稼ぎなのかもしれない。
だが、だとしたらなぜネヴィアがゼウスと協力関係にあるのかが分からない。
ゼウスがやろうとしているのは世界の破壊だ。その世界の住人であるなら、絶対に阻止したいはずだ。
ネヴィアは一体何がしたいんだ……?
これに関しては、いくら考えても答えは出ないので保留にした。
次に気になった話題は、ルキウスについてだ。
俺達が城を襲撃することになった時、ルキウスはいち早く王室へたどり着き、ルシウス・ペンドラゴンと一騎打ちをしていたらしい。勝敗はルキウスの惨敗。その後、反逆罪として地下牢に送られた。だがルキウスは重体なのにも関わらず自力で檻から脱出し、城を登っていたところを魔王に問答無用で転移させられたということらしい。
そういえばルキウスとルシウスって名前似てると思ったら兄弟だったんだな。ルキウスとルシウスって、日本名に例えるなら“たかし“と“たけし“くらい、わりとありがちな名前だったので、偶然似たような名前同士なのかと思った。
ルキウスが目を覚まして落ち着いたら、ゆっくりと話を聞いてみてもいいかもな。お兄ちゃんの弱点を知ってるかもしれないしな。
――あと気になった話題といえば、やっぱり時の女神と風の女神の事か。本来ならフラン達と共に正義教団に来る予定だったが、途中ではぐれたらしい。そして今も行方不明だそうだ。
時の女神とは面識はあるものの、素性はよく知らない。霧の女神は彼女ならどこにいても、きっと無事でいると太鼓判を押している。
まあ俺にとっては時の女神は敵なのか味方なのかさっぱり分からないが……ん、あれ? 俺……時の女神とどこかで会ったことあったような……? いや気のせいか。
どちらにせよ時の女神は、アクタとよく行動してるイメージだから、どちらかと言うと敵側の印象が強い。
そういえば、アクタはどうしてるんだ? 奴は異次元の化物だから、降りかかる稲妻くらいどうにかできそうだが、果たして……?
『ダスト君? 聞いてる?』
『あ、あぁ、聞いてるよ』
『話し疲れちゃった?』
『いや大丈夫だよ』
『そう? それじゃ続きを話すけど――』
霧の女神はまだ話し足りないのか、話題という名の弾丸は尽きることなく、マシンガントークを披露している。陰キャの俺からしたら話題が無くなることなく会話が続く事自体はありがたい。だがこうも3時間以上連続で話し続けるのは体力的にも精神的にも辛い。
もう数十以上のテーマのトークを聞いたが、後半はほとんど雑談ばかりで、これ以上有益な情報は出なさそうだ。
そろそろ話しを切り上げて貰いたい……なんて思っていると、その願いに応じたかのように、アナウンスが魔王城全体に広がる。
『キンコンカンコーン♪ みんな、夕食の準備が出来たわよ。私達が心を込めて作った料理を食べに食堂へ集まって来てね♡ 特にお兄ちゃんは♡』
脳を溶かすほどの甘い声が耳に入ってきた。しかも指名までされたので、俺に対してはこうかはばつぐんだ! そして、これをあざと可愛くアナウンスしてるのはブロンズ様か。いつぞやのゴールドちゃんのバカでかアナウンスと比べると、まるで天国と地獄だ。
『この声、ブロンズちゃんか〜、顔だけじゃなくて、声もめっちゃ可愛いね』
霧の女神も思わず頬を染めて、そう呟いてしまう程には魅了されたようだ。気持ちは分かるぞ。気持ちは。
『じゃあ行こうか。2人は食堂の場所知ってるか?』
『いやまだよく知らない、案内してくれるの?』
『もちろんだ』
『ありがとね』
と、霧の女神は満点の笑顔でお礼を言ってきた。その顔がとても可愛らしかったので、思わずドキッとしてしまった。
でも俺の本命は……あくまでブロンズ様だ。
そこだけは譲れない。
『行くよ、ファントムちゃん』
幻の女神はこくんと頷き、霧の女神と共に俺の案内に従った。
霧の女神……最初会った時は、胡散臭い感じだったが、実際に話してみるとフレンドリーで良い人……いや良い女神なのかもしれない。本心はどう思ってるのかは知らないがな。
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