第255話『帰還』
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――約10分前、魔王城にて。
現在ここには、魔王の転移魔法によって正義教団の国から避難してきた者達がぞろぞろと揃っている。なので少し賑やかだ。
その魔王は今、まだ避難していない赤髪ちゃん、ケールさんを迎えに行っているが、それにしては少し遅い気がする。何かトラブルでもあったのだろうか。
『まーちゃん、正義教団の国に戻ってからずいぶん経ったけど遅くない? 赤髪ちゃんとケールお姉ちゃんも大丈夫かしら?』
どうやらブロンズ様も俺と同じく心配していて、らしくなく落ち着かない様子で、その辺をウロウロウロウロしている。
『あの2人なら大丈夫だと思うけど……』
きっと帰ってくる。俺はそう信じている。
そういえば魔王からの提案で全員無事に帰還できた暁には今夜はパーティーをしようとか言ってたな。
気持ちは分かるけど、あれだけの事があったら身体も相当疲弊しているはずなのに、どこにそんな体力が……?
いや俺の体力が無さすぎるだけか……?
『なあダスト』
考え事をしていた俺に話しかけてきたのは、正義教団の幹部のケイだ。ゲームから退場したあと色々あった末に、魔王に転移魔法でここに送られたようだ。
『なんだ?』
『マゼンダちゃんはここの魔王のとこの幹部なんだよな?』
『あ、ああそうだが』
『……マゼンダちゃんは、ここに来て幸せそうか?』
ケイはまるで我が娘のように赤髪ちゃんを気にかけているようだ。その辺の過去の事情はもう既に聞いている。
『ああ、俺はまあ、この魔王軍の中では1番新参だが、ここに居て楽しそうではあったよ』
『そうか、なら良かった。ありがとな』
ケイは礼を言ってバレスさん……いや、今はガレスさんか。彼女と話をしに行った。さっきもかなり話し込んでいたが、まだまだ積もる話がいっぱいあるんだろう。
『……お、来るぞ来るぞ』
俺は久々に未来予知魔法を発動して、今から1分後に魔王が赤髪ちゃんとケールさんと眠っている桐華を連れてここにやってくる未来を見た。
よし、ブロンズ様に報告だ。
『ブロンズ様。もうすぐ魔王が赤髪ちゃんとケールさんを連れて帰ってくるよ。ケールさんは少しケガしてるけど』
『それは良かったわ! ……でもケールお姉ちゃん、ケガしてるのよね……大丈夫かしら……?』
ブロンズ様は安堵の顔になったと思ったら、また心配そうな顔に戻ってしまった。気持ちは分かるけど、心配し過ぎでは?
『だって……だって……今回は今まで以上に危なかったし、死人も出たし、心配にもなるわよ……』
『ブロンズ様……』
確かにブロンズ様の言う通り、正義教団との戦いは長かった上に強敵揃いだった。強くなった俺ですら『あ、これ死んだんじゃね?』と何回思ったことやら……。
『そうだよな。心配するなって方が無理な話だったよね』
『ううん、ごめんね。お兄ちゃんは私を安心させようとしてるんだよね?』
『まあそうだけど、自分に言い聞かせてるっていうのもあるかもしれない』
『そっか、お兄ちゃんも心配だったのね……ごめんね、私、余裕が無くて、全然お兄ちゃんの心読めてなかったわ……』
『心を読む魔法も万能じゃないからね。いくらブロンズ様の得意な魔法とはいえ、心に余裕がない状態じゃ、そっちに集中するのは難しい。それは俺だって赤髪ちゃんだってケールさんですらそうだ』
『うん……』
ブロンズ様はまだ何か気がかりな事があるのか、表情が晴れないままだ。
『おっと、もう魔王達来るよ。行こう』
『そうね……』
ブロンズ様の事は気になるが、今は魔王達を迎えないとな。
玄関前に行くと、未来予知通り、魔王と赤髪ちゃん、ケールさんと気を失ってる桐華(ケールさんが背負っている)が魔王城に足を着けた。
『みんな、ただいま〜!』
『おかえり!』
魔王達を出迎えたのは、俺とブロンズ様だけだ。他に出迎えてくれそうなゴールドちゃんとシルバーちゃんはブラックと共に治療室で眠っている。3人共、ずっと激戦を繰り広げてたからなぁ……。
そう思っていると、ブロンズ様は一瞬だけ顔をしかめていた気がした。
『ダスト様! ブロンズさん! ご無事でしたか!』
『はい。すみません。先に避難してました』
『いいえ、とんでもない。お2人が何ともなくてなによりです!』
赤髪ちゃんの方も、急に俺達がいなくなって心配してたろうな。じゃなきゃ、こんな言葉は出てこない。
『ダスト君……ブロンズちゃん……!』
ケールさんは俺とブロンズ様を見るなり、周りの事など気にせず抱きしめてきた。
『ケ、ケールさん!?』
ケールさんの上半身についている柔らかい2つの大きなまんじゅうが、俺達にそれぞれ1つずつ押し付けられている。尚、ブロンズ様は身長差的に顔が胸に埋もれている。
『無事で良かった〜〜〜』
『ケールさん……』
あの無表情を一切崩さなかったケールさんだったが、今は感極まってさすがに涙を流した。
ケールさんも、暴走した桐華と一騎打ちすることになってから俺達と会ってなかったから、内心気が気でなかったんだろうな。
『ケールさんこそ無事で良かったです!』
俺は素直にそう言った。
ブロンズ様も何か言いたそうだけど、ケールさんの胸が顔面を覆っていて喋れないようだ。
『んー! んー! んーーーー!』
ブロンズ様はケールさんの胸を触って、押しのけようとした。
それに気づいたケールさんは抱きしめた手を放して距離を少し取った。
『あ、ごめんね〜』
『ぷはっ! もう……ケールお姉ちゃんの大きいんだから、もっと気をつけてよね! 女の私でも柔らかすぎて癖になりそうだったじゃない!』
ブロンズ様は少し頬を赤らめている。さては新たな扉を開きかけてるな。
『ははは……さて、これで全員避難できたかな』
『ああ……あいつ以外はな』
あいつとは、ルシウス・ペンドラゴンの事だ。あの男だけは王の責務があるからと避難を拒否し、国に残ったようだ。国を襲う無数の雷もルシウスならうまく対応できるだろう。
そんなことするくらいなら避難した方が絶対いいと魔王は言ったのだが、それでもルシウスはその場を離れることはなかった。
その理由を聞いてみると、ある男との約束を守るためと言っていたそうだ。
そのある男とは他でもない俺の事だ。
1回退避はしたが、まだ正義教団との決着はついていないんだ。
俺もその約束を果たす為、もう1回正義教団の国に戻って、王室に行かなければならない。
第255話を見て下さり、ありがとうございます。
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