第252話『赤髪ちゃんの回想と』
お待たせしました。
第252話の執筆が完了しました。
サブタイトルには回想と書いてありますが、それだけではなく、ちゃんと現状の話も書いてあるので、ぜひ最後まで見て下さると幸いです。
宜しくお願い致します。
※今回は文字数多めです。
深い深い闇に沈む……。
私の意識はどこへ向かう。
……。
私はあれからどうなったんだ……?
分からない。
分からない。
分からない。
……。
頭の中で記憶がごちゃごちゃしてきた。
すると、昔の記憶が突如蘇った――
――――
――私の名はマゼンダ。もう1つの名は赤髪ちゃん。
元某ギルド所属の両親の間に生まれたごく普通の人間……だった。
ある日、私は聖剣に選ばれる資格である壊れた歯車を持っていると、たまたま私を見かけた王の判定によって判明した。
つまり私を正義教団の軍隊に所属させようとしているのだ。
それは正義教団の国民にとって、とても名誉あるもののようだが、私にとってはそんな称号はいらない。ただ家族や友達と一緒に笑い合って過ごしたかった。
しかし特別になってしまった私を、周りの見る目は変わっていった。同年代の子達には気味悪がれたり、私の力に嫉妬して嫌がらせをしてくる子も居た。友達だった子達まで私から離れていった。
しかし逆に周りの大人からは期待の声が大きく上がった。期待の新人だとか、次代の最強騎士だとか。
だけど家族だけは私の味方でした。私の気持ちを尊重してくれた。でもここは正義教団の国。もし拒否をするものなら正義に反したと私達家族に危害を加えられるかもしれない。
それを恐れた私にはもはや軍隊に入るしか選択肢はなかった。
軍隊に所属すると早速、軍隊寮という所に住まわされる。
それからは地獄のような日々だった。
軍隊寮には男性が9割、女性が1割。部屋は1人につき1つ。男性は女性の部屋に入ってはならないというルールは一応ある。だが……ルール違反を犯したとしても証拠さえ残さなければやってない事になる。
いくら鍛えていても、どうしても男性の方が力が強い。かく言う私も当時は軍隊の男性よりも力は弱かった。
しかも男性の数も圧倒的に多い。
女性達は国に同僚の男性の非道な行いを告発しているが、なぜか受け入れて貰えず、いつもいつも泣き寝入りしている。
つまりそれはどういうことか……いや、もうこれ以上語るのはやめよう。今でも思い出すと身体全体が震えてしまうくらいトラウマだ。
しかもトラウマなのはそれだけじゃない。
私達は軍隊だ。否応なく戦場に立たされる。悪を滅ぼす為に。
それもほぼ毎日だ。悪人はどこにでもいる。それは特別な事があろうが無かろうが、人間である限り起こる得るもの。いくら掃除をしても時間が経てばまたほこりが出てくるのと同じだ。
正義教団の軍事力は異常に高い。故に負ける理由がない。
それは正義を信じて頑張ってきたから強くなったと思い込む兵士もいれば、単純に自分が強いと過信していた兵士もいた。
そんな兵士を引っ張っていたのが、ルシウス・ペンドラゴン。現国王だ。
王は決して身体付きが特別良いわけではないが、この中の誰よりも強く、誰よりも正義を愛していた。
そんな人にいつか私もなってみたい……なんて1ミリも思わなかった。私は正義に興味が無かった。どうでも良かった。ただ家族を守れるならと。
そんな日々を過ごしてから1ヶ月、軍隊寮に女性が2人が入ってきた。
その2人の名はバレスとアミ。
そう、あのバレスとアミさんだ。
2人はとても強く、他の男達を半殺しにできた程だ。というか事情を話したら急に血相を変えて、女の子達を泣かしてきた男達は全員、2人によって本当に半殺しにしていた。
泣き寝入りしてた他の女の子達も救世主が現れたと歓喜していた。
私もそんな2人に憧れの感情を抱き、やがてバレスと親友になり、アミさんは私のお姉さん役兼良き相談相手だ。
2人が来てから私は少しは楽しく過ごせた。しかし後にバレスは同僚のイーブルに濡衣を着せられて、死刑にされそうだったが、幹部のケイの協力もあってうまく正義教団から逃げることができた。
バレスがいなくなったのは悲しかったが、死刑にされるよりは全然いい。どうか元気に生きて。私はそう願った。
そんな時、私の元に悲報が届いた。それは私の母スカーレットの消失。何の予兆もなく突如として消え去ったようだ。兵士達が国中を探し回ったが見つからなかった。ということは、これは脱国ではないかと疑いがかかり、親族である私とあおいは連帯の罪にかけられた。
このまま投獄されるのかと思いきや、私の働きぶり次第では私とあおいの罪を消すと言われた。
それから私は、自ら戦場に赴き悪を斬った。斬った。斬った。
これであおいの罪が消えるならと私は必死になって斬った。悪人も、罪を犯してない悪人の家族や友達も全て――
罪悪感に押し潰されて泣きたくても、体調が悪くても、どんなに出血しようとも――
私はただ悪を斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬っ――
――もう頑張らなくていいよ――
ある日ある時、正義教団の国に訪れたとあるご年配の冒険者にそんなことを言われた。
私にはお爺さんの言ってる意味が全く理解できなかった。だって私が頑張らないと妹が罪人のまま最悪死刑にされてしまう。
私はそう反論した。
しかし、お爺さんは――
――もう良いんじゃよ。君は十分頑張った。そしてこれからもずっと妹の為に頑張り続けるんじゃろうけど、このままじゃあ君の心が壊れてしまう。それにこうやって悪を滅ぼす為に戦争を続けたとして、本当に世界が平和になると思うのかい?――
当時の私はただ正義の為に、家族の為に、殺戮を繰り返していた。それが世界を正義に染め上げるものだと信じて。
でも本当は私も気づいていた。
いくら正義の為でも悪を滅ぼそうとすれば、当然向こうも仲間を殺された恨みを持って、仇討ちの為にまた戦争になることを。
――良かったら儂と一緒にこのキレイなだけの醜い世界を壊さないか?――
そう言ったお爺さんは、とても優しい顔をしていた。
思わずついていきそうになった。でも――
私には妹のあおいがいる。アミさんもいる。私だけ逃げ出すわけにはいかない。
そう言おうとすると、まるで私の心を読んだかのようにこう言った。
――大丈夫じゃ! こんなこともあろうかと君の妹のシア……じゃなかった、あおいちゃんとアミさんは既にこちらで保護させてもらったからね――
え……?
それってどういう……?
そう困惑してると、突然、大きな爆発音が聞こえた。音の方向からして城の方からだった。まさかと思い城の方を見ると、城は炎に包まれ、煙は空に上がっていた。
――よし作戦通り!――
お爺さんはそう言ってガッツポーズをした。どうやらお爺さんの仕業らしい。
――よし、奴らは今頃消火対応で手一杯だろうから結界魔法を張り続けられないだろう。君の荷物も既に移動してあるし、今のうちに脱出するよ――
お爺さんは私の肩に触れ、結界魔法が弱っている内に転移魔法を使って国の外にある大きなテントに移動した。
私はこの、あまりにも突然の展開についていけなかった。
だがテントの中から、あおいとアミさんが出てきた時、私は涙が溢れた。
それから私達は――
――――
『――はっ!?』
さっきのは夢か……ずいぶん懐かしい夢だった……。
『って、あれ?』
やけに煙たくて熱い、と思ったらいつの間にか火の海に囲まれていた。どうやら私が意識を失っていた間に戦況は大きく変わっていたようだ。
『一体何がどうなって……え?』
私と戦っていたはずのランスロットが血を流して倒れていた。呼吸の音も聞こえないので、既に息絶えていると思われる。
『これは……!?』
一体何が起こったんだ?
よく辺りを見てみると、壁はところどころ崩れ、床にもヒビが入っている。まるで激しい戦いが起きた跡のようだ。
私が意識を失っていた間に、他の誰かがランスロットと戦ったということか。
『はっ! ダスト様とブロンズさん、シルバーさんとプラチナさんは!?』
こんな火事の中だ。移動できる余力があるなら、もう既に避難しているだろう。
案の定、みんな、もうここにはいなかったので、私は動かなくなった腕を治癒魔法で治し、その場をあとにした。
『ダスト様、ブロンズさんもプラチナさん達も、一体どこに……?』
耳をすましてみると、銃声だったり爆発音だったりと、戦場の音が聞こえる。
霧は既に晴れているし、ネヴィアからのアナウンスもなく、ゲームとやらの進行も止まっているようだ。
なのにまだ誰かが戦っているのか?
わけが分からない。
とにかく音がする方へ向かおう。もしかしたらみんなそこで戦っているのかもしれない。
そう思い、私は全力疾走で戦場へ向かう。
そして戦場に着くと――
『な……!?』
第252話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




