第17話『もう勝手なんだから』
お待たせしました。
第17話できましたので、宜しくお願い致します。
※改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
※2022年1月31日改稿しました。
※2025年8月7日改稿しました
『儂の本気の魔法を喰らえば、今の君とてただでは済まんぞ!』
『それは、お前も同じだ』
左手の剣に力を集中させると、黒いオーラが荒ぶるように勢いが上がっていく。
『覚悟はいいかい?』
『それは、こちらのセリフだ!』
俺は剣を突き上げるように持ち、まるでビームのように棒状の黒いオーラを放った。
魔王も負けてられないと赤い稲妻を纏った黒い球状の光を放った。
『これで終わりだ!』
俺の黒いオーラと魔王の黒い光が衝突し、バチバチと火花ならぬ雷花を散らしている。
『はああああああああ!』
『うおおおおおおおお!』
黒いオーラを放つだけで身体が壊れそうになる。さっさと放してしまいたいが、衝突してる黒い光が黒いオーラの行く先を阻んでいる。
くっ……分かってはいたが、やはりこちらが押し負けてる。
当然だ。普段はふざけた爺さんでも魔王と呼ばれている。ゲームで言うならラスボスと戦っているようなものだ。
そう簡単に勝てるわけがない。
『これは、キツいな……』
このままでは勝てないことは明らか。その理由は単純だ。魔力が足りない。
魔力さえ補えればあの黒い球状の光を押し返すことができる。
今すぐ魔力を補う方法はない……と思ったがあった。
『これなら……どうだ……!』
俺はブラックホールを出現させ、先程魔王が俺に放った大量の弾丸を俺の魔力として変換した。
俺は補った魔力を剣に注ぎ込むと、黒いオーラはより勢いを増し、魔王の黒い光を押し返している。
『なんじゃとぉ……!』
これで俺が優勢となったが、それも束の間。魔王はまだ手があるのか全く諦めてなどいない。
『まだじゃ……儂を誰だと思っておる! 儂は……魔王だああああああ!』
魔王の黒い光は風船を膨らませるように徐々に大きくなり、逆に俺の黒いオーラを飲み込み始めた。
『なん……だと……!?』
魔王の黒い光の勢いは止まらない。俺の黒いオーラは力足らず、蹂躙されていくように押し返されている。
もう俺には魔力を補充する手段も、攻撃そのものを回避する手段もない。今、手を放して逃げようとしても結局あの黒い光に飲まれて死ぬだろう。
あぁ……ダメだこりゃ。終わったな。
まあ漫画の主人公みたいにそううまくはいかないよな。いくら俺が強くなろうと最強に最弱が勝てる道理などなかったのだ。
でも俺にしてはよくやった方かな。ろくに鍛えてもないのに魔王相手にここまで善戦できたのは、もう奇跡の中の奇跡だ。
俺に抵抗するだけの力をくれた初代魔王に感謝しなければな。
俺はこれ以上何もせず剣を持った手はそのままに人生の最期を受け入れた。
やがて黒い光は黒いオーラを押し潰し、容赦なく俺を飲み込んだ。
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………あれ? ここは……?
とうとうあの世かと思ったが、ここには見覚えがある。魔王と戦う前に来た謎の黒空間だ。ということは――。
――やはり、あいつも今は魔王なだけあって強いな――
やっぱお前か。
――なるほど。今の貴様では、到底勝てる相手ではなさそうだ――
なあ俺は……死んだのか?
――死んでいるが、死んではいない――
どういうことだ?
――肉体は消滅したが、魂は俺が回収した。だからまだ貴様は生きている――
魂を回収だと……?
――貴様はよくやった。あとは俺に任せろ――
……あれ? 意識が……。
身体はもうないはずなのに突然の眠気に襲われ、意識は精神の底に沈んでいった。
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『さて、二代目魔王を軽く屠ってやるとするか! フハハハハ!!!』
初代魔王はダストの身体を構築し、それから乗っ取り、その状態で現実世界へ浮上していった。
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『やったか……?』
二代目魔王はできるだけダストを苦しませないように本気の魔法で葬ろうとした。それが二代目魔王なりの精一杯の慈悲だ。
これで消滅したはず……と思った二代目魔王だったが――
『二代目魔王! 久々だな!』
『まさか……そんな……』
ダストは消滅しておらず、むしろ魔法を使ったのか二代目魔王に受けた傷が完治している。
彼はダストではなくダストの姿を借りた初代魔王だ。二代目魔王は程なくしてそれをすぐに見破った。
『確かに消滅させた……とでも思ったか?』
初代魔王はこの修練場に重力魔法をかけた。この重力魔法は文字通り重力を操るもの。初代魔王の独自の重力魔法であり、どんな怪物も地にひれ伏すであろう。
『ぐっ!』
ラスボス級の強さを誇る二代目魔王でもこの重力魔法には逆らえず跪くしかなかった。
『二代目、なぜダストごと俺を殺そうとした?』
『なぜって……そりゃ、ダスト君が危ないからだろ!』
『危ないからって殺したら元も子も無いだろう? それにその危ない世界に召喚したのは、他でもない貴様だろうが』
『……確かに、そうだが……』
二代目魔王は不安なのだ。まさかダストがあそこまで暴走してしまうとは考えておらず、あれ以上暴走してしまえば、周りに被害が及ぶだけではなく、ダスト自身もただじゃ済まないし、化物になったまま、悲しき殺戮兵器と化してしまう。
『お前は、アレを恐れすぎている』
『そりゃ、恐れるでしょう……それはあなた自身が1番よく分かってるはずだ』
『ククク……フハハハハ!!! あぁ、そうだな!』
『あなたが約束通り大人しくダスト君を見守っていれば、ダスト君を殺さずに済んだんだ……それなのに!』
二代目魔王は怒りだけでなんとか重力魔法を破り、剣を取り出して、初代魔王を睨み付けた。だが初代魔王はそれだけでは怯まない。むしろわざと重力魔法を破らせたのかもしれない。
『おいおい、仮にも父親に向かって、なんだその目は?』
『黙れ!』
二代目魔王は今残っているありったけの魔力を使い、剣に黒い炎を纏わせ、初代魔王に真正面から向かって斬りかかった。
『無駄だ』
初代魔王は睨み付けるだけで、二代目魔王を硬直させた。それは魔法ではなく、ただの威圧である。
『う……』
二代目魔王は悟った。たとえ自分の魔力を全回復させたとしても初代魔王には勝てない。ダメだ殺されると。
『安心しろ殺しはしない。お前にはいつかダストに本当に三代目魔王を引き継がせて、全力でダストをサポートしてもらうからな』
『……』
『これは貴様にしかできない事だ。くれぐれも、しくじるなよ……我が娘よ』
『……』
『あとダストには、修練場に来てからの記憶とその前に起きた都合の悪い記憶を消させてもらった』
『なぜ……そんなことを?』
『そちらの方が都合が良いだろう? それとも記憶を戻すか?』
これは初代魔王なりの気遣いだ。もし、ダストが二代目魔王に殺されかけた記憶を持ったままにすると、ダストの方が二代目魔王への警戒を強め、今後に支障が出てしまう。
『記憶に関しては、それでいい……でも、とても不安だ……』
『そうか? 貴様ならできると思うがな』
『いや、でも……』
『俺はしばらく寝る』
『待って! 父さん!』
初代魔王の魂は、二代目魔王の言葉などまるで聞かずに、文字通り姿を消した。それと同時にダストの身体にら支えがなくなり、そのまま地に伏した。
『……もう勝手なんだから……』
二代目魔王はそう言った後、本来の姿に戻り、ダストに治癒魔法を使い、意識が戻るまでそばにいた。
第17話を見て下さり、ありがとうございます。
第18話の方も、なるべく早く投稿していきたいと思います。
宜しくお願い致します。




