第246話『やがて翼を失い、墜落する』
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神々しく翼を広げた光の女神は、自身の全ての魔力を込めた光の塊を放ったが、ランスロットによって真っ二つに斬り伏せられてしまった。
『な……!?』
あまりにも想定外だった。
殺傷能力だけなら、使用者によっては全魔法トップになり得るくらいの大魔法だ。それを女神クラスが放てば、女神はおろか神の居城の守護神であってもただじゃ済まない(はずだ)。
そんなとてつもない威力の魔法を、ゼウスクラスの神ならまだしも、人間に防がれるなんて万に一つもありえない。
確かに今の光の女神はシルバーちゃんの身体を使っているので、万全の力とは言い難いかもしれない。
とはいえ、それでもランスロットを倒すには十分過ぎる力があった。かすったとしても致命傷を負うレベルだ。
しかし、ランスロットという人間の騎士はそれを……。
いや、やっぱり、そんなことはありえない。
“ダストの記憶”上でも、光の女神が放った魔法を何回か見たことはあるが、それをまともに受けた人間は、どんな強者でも、影も形もなくなっていった。
だが、例外的にそれを受けても弾き返せた者もいる。
それは……その者が人を超えた力を持っていたからだ。
つまり……ランスロットは人を超えている。
その事実を知った時、俺はランスロットに戦慄した。
とはいえ、ランスロットも今の魔法を受けてから、著しく剣の振りが鈍っているのも事実。もし、今の魔法をもう1度放てば、ランスロットも五体満足とはいかないかもしれない。
でも、やはり分からない……なぜ神をも滅ぼせる威力の魔法を、ただの騎士がたった1度でも防げたのか……。
ランスロット……恐ろしい奴だ。
もしかすると、全ての力を解放した俺でさえ、ランスロットに勝てないかもしれない……。
『くっ……この……う……!』
光の女神は自身の魔力を使い果たした後、翼は光の粒子となり消え失せ、無防備に浮いた身体は重力に従うままに地へと墜ちようとする。
『シルバー姉!!!』
『任せてくれ』
俺は光の女神もといシルバーちゃんの落下予想地点に殺傷力がない風魔法を置くと、それはクッションのように働き、シルバーちゃんの身体は安全に地面に背中をつけた。
『う……う……』
『シルバー姉!!!』
それでも起き上がれないシルバーちゃんの元にブロンズ様が駆けつける(俺も続いて駆けつけた)。
『シルバー姉! 大丈夫?』
『ブロンズ……ちゃん……? あれ……? あれ??? ここはどこ???』
シルバーちゃんは、魔法を撃った影響か、今の状況が分からず混乱している。
『シルバー姉……そっか、そうなのね……』
ブロンズ様はシルバーちゃんの心を読むことで、シルバーちゃんの身に起きた事態を理解した。
『シルバーちゃん、どうしたの?』
『シルバー姉、さっきまでの記憶がないみたいなの』
『え……?』
さっきまでの記憶……つまり光の女神として動いていた記憶だけがすっぽり抜けているようだ。なのでシルバーちゃんからしたら、みんなと一緒に正義教団に捕らえられて、ネヴィアの所へ連れてかれて、目が覚めたらここにいた……という感じになっているようだ。
そうか、記憶欠落以外の代償は全て光の女神が請け負ったのか。光の女神の本来の性格はどのようなものか知らないが、責任感は強いのかもしれない。借りた身体を無事に返してくれたのが、なによりの証拠だろう。
まあ少しすり傷等はあるが、それ以外は無事だ。良かった。
あとは……。
『……』
ランスロットの方を見てみると、まだプラチナと剣を交わしている。一方でパーシヴァルは残念ながら力及ばず、地に伏せられた。
すまないパーシヴァル。あとで治癒魔法をかけておこう。
今はシルバーちゃんに治癒魔法をかけるか。軽症とはいえ出血の量が少し多くて心配だからな。
『お兄ちゃん、お願い!』
『ああ』
俺がシルバーちゃんに治癒魔法をかけると、シルバーちゃんの傷は癒やされ、更に安心しきったのか安らかな顔で夢の世界へ誘われた。
これでシルバーちゃんは脱落確定か。まあこれ以上戦わせられないよな。
『シルバー姉、お疲れ様。大好きよ』
ブロンズ様はそう言ってシルバーちゃんを抱きしめた。
そんなブロンズ様に俺は微笑んだ。
さてと――
『ブロンズ様、シュタイン。シルバーちゃんのこと見ててくれる?』
『それはいいけど……お兄ちゃんはどうするの? ってもう分かってるけど』
『うん、ランスロットを止めるよ』
『大丈夫なの?』
『……分からない。でもやるしかない』
今も奮闘してるプラチナもそろそろ限界だ。そうなると、残った中でランスロットを止められる可能性があるのは俺だけだ。
よし、俺もプラチナに加勢するか。
俺はランスロットに不意打ちしようと魔法を当てようとした……その時だった――
突然、周りの霧が突風に巻かれるように上へ吸い込まれた。
『な、なんだ!?』
この異常事態に、プラチナもランスロットも思わず戦いの手を止めた。
『霧が……?』
やがて霧は天井のみ切り取られたように不自然に晴れ、その先に誰かが落ちてきた。
『あれは……まさか……!?』
その人物は、遠目から見ても分かるくらいに燃えるような赤い髪を激しく靡かせて、隕石のようにこちらへ突撃するつもりのようだ。
『あぁ……あの髪色は……!』
『赤髪ちゃん!!!』
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