第243話『壊れた看護婦と壊れた復讐勇者と……』
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『あぁ……これ、さすがに……しんどい……』
桐華の剣撃をまともに受けたケールさんは、倒れはしなかったものの、さすがに立っていられず、その場でへたり込んだ。
『今、治癒魔法を……!』
俺は、ケールさんに駆け寄って治癒魔法をかけ続けるが、勇者の一撃は身体を鍛えてる冒険者でも即死するレベルだ。ケールさん自身も異次元の化物だが、さすがに傷が思ったより深く、治りが遅い。早く血を止めないと、たとえケールさんでも……。
『なっ……なんで……! あ、あなたが……庇うんですか……?』
『はぁ……はぁ……キリカちゃん……いい加減に……しなよ……』
ケールさんは、喋るのも辛いレベルの傷を負っているにも関わらず、桐華と話し合おうとしている。
『あ……あ……』
ケールさんを斬るつもりではなかったとはいえ、桐華は、神の居城の同僚を斬ってしまったという罪の重さに耐えられず、動揺して後退りをする。
『逃げないで』
ケールさんは、逃さないように桐華の腕を掴んだ。まだそんな力があるのかと思ったが、どうやら桐華自身も腕を振りほどけるほどの精神的余裕はないようだ。
『……もしキリカちゃんが…………ブロンズちゃんを殺めたら……ダスト君だけじゃない……周りの家族や仲間も悲しむし、神様だって私だって悲しいよ……』
『……!』
『ねえ、キリカちゃん……話を聞いた限り、確かにダスト君にも非はあるんだろうけど……ダスト君はもう謝ったんだよ……? 償いもするって……言ってるんだよ……?』
『ケールさん、あまり喋らないで……治癒魔法が追いつかない……』
『ダスト君、大丈夫だよ〜。私は出血多量じゃ死なないよ。ちょっと苦しいだけ』
ケールさんは口元だけ笑いながらそう言った。
まあケールさんの事だから本当に死なないんだろうけど……あまりにも痛々しいから……。
『分かりました……でも治癒魔法はかけ続けますね』
『ありがと』
ケールさんは俺にお礼を言うと、目線を怯える桐華に向けた。
『キリカちゃん……いや、桐華ちゃんも大変だったんだろうけどさ……でもさ……復讐なんてしても……何もない……よ……?』
『何もない……』
『うん……虚しいの……復讐のあと、そうなった人を私は知ってるから尚更だし……きっとダスト君もそうなんじゃないかな……』
『え……?』
桐華は俺の方を向いた。だが俺はなんとなく気まずかったので目を逸らしてしまった。
『ダスト君は、ずっと謝りたかったんだよね……桐華ちゃんに……』
俺はそっと頷く。
『……そうですか……ごめんなさい……私は……神様を裏切っただけでは飽き足らず、取り返しのつかないことまでしでかすところでした……』
我に返った桐華は剣を落とし、ボロボロと涙を流した。もう彼女に殺意はない。
そして、
『ダスト君、もう大丈夫だよ〜わたし復活!』
あんなに血まみれで苦しそうだったケールさんの傷も塞がり、すっかり元気を取り戻した。治癒魔法かけてたとはいえ、回復早すぎだろ……勇者の一撃を受けてこれって……どんな生命力してんだ……?
『あ、あのダストさん……』
桐華は申し訳なさそうな顔で俺に話しかけてきた。
『なんだ?』
『この度はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。本来なら兄が悪いのに、私ったら……』
『いや、こちらこそごめんな……いくらなんでも、あれはやり過ぎだった』
『いえ、こちらこそとんでもない過ちを犯すところでした……謝るのは私の方です……』
『過ちを犯したのは俺の方だ、結局俺だって……』
『いえいえ、兄の愚行に気づかなかった私が悪いのです』
『いやいや俺の方こそ』
『いえいえいえ私の方こそ』
『いやいやいやいや俺の方こそ』
『いえいえいえいえいえ私の方こそ』
あ、これ、どちらかが止めないと永遠に謝罪ループするやつだ。あおいちゃんとよく謝罪合戦やってたなぁ……。
『もう謝るのはやめようか、キリがない』
『そうですね』
こうして俺と桐華は和解した。胸のつかえが取れて晴れやかな気分だ。きっと桐華も同じ気持ちだろう。今の今まであの事件のことが頭の中心に蔓延っていて、たった今、ようやくそれが解放されたのだから。
これで俺と桐華が争うことはもう無いだろう。むしろこれからは桐華も俺達の頼もしい味方となるのだろう。
――そう思っていた。
『ダストさん、これからはあなた方を全力でサポートさせて――うっ……!!?』
『桐華!?』
桐華は、突然胸を押さえ、魔力が溢れ出した。こんな魔法は見たことがない。一体何なんだ!?
『桐華ちゃん!』
『ケールさん……ダストさんも逃げて……下さい……アキモトが……!』
アキモト?
『う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
桐華の全身は竜巻のような黒いオーラに纏わりつかれた。
『桐華ちゃん!!!』
『……』
『桐華ちゃん?』
『……ゥゥゥゥゥゥゥ……!』
桐華は闇のオーラを垂れ流しながら、俺たちに殺意を向けた。もう既に桐華の意識はないだろう。
『殺ス……殺ス!!!』
あれは……ちょっと前に見たケールさんの時の……なぜ桐華が?
そもそもあれは何なんだ? 俺も知ってるような知らないような……?
ああもう、何が何だかさっぱり分からない! この世界マジで謎が多すぎんだよ!
ていうか、今はそれどころじゃない。なんとか桐華を止めないと……!
そう思い、俺は桐華に魔法を放とうとすると、ケールさんは俺の前に立ち、こう言った。
『桐華ちゃんは私に任せて! みんなは下がってて!』
ケールさんはいつにもなく真剣で強い口調でそう言った。
確かにあれは今の俺でも対応しきれないかもしれない。大勢でいけばなんとか……なんてレベルではない。ここはケールさんに任せるのが現状ベストではある。
ここはケールさんの言うとおり、一旦避くか。
『……分かりました、ケールさん、お気をつけて』
『うん〜、あとでね』
『……はい』
なんとなくフラグを立てているような気がするなぁ……。まあケールさんなら大丈夫……。
でも心配だから、一応保険をかけておくか。
俺はこの戦場にある魔法をかけた。
よし、こんなもんか。あとは……。
『ブロンズ様! パーシヴァル! ケールさんの話は聞いてたよね? 一旦避難するよ!』
『しかし、ケール殿は……?』
『ケールさんなら大丈夫だ、あの人の強さを信じてくれ』
『うむ、分かったよ……』
パーシヴァルは、ケールさんの身を案じつつ俺に従った。
さて次は……。
『ブロンズ様!』
『あ、え?』
ブロンズ様は、シルバーちゃんの事で頭がいっぱいだったのか、この状況に気づいていなかったようだ。
当のシルバーちゃんはとっくのとうにランスロットと共に避難しているので、もうここにはいない。
ランスロットと戦っていたブラックとプラチナもいなくなっている。娘を置いていったのは意外だったが、それほど余裕もなかったということなんだろうか。もしくはあとでここに来て迎えに来るかもな。
『ブロンズちゃん!』
案の定、プラチナがブロンズ様を呼びながら、こちらに向かって走ってきている。
『ママ……?』
『良かったわ、早く逃げるわよ! ほら団長も!』
『ブラックは?』
『ブラックならランスロットと戦っているわ! そこにはシルバーちゃんも……』
『そうか、ならすぐにそっちへ……!』
俺たちは、戦っているブラック達の戦場に行き、ケールさんと桐華の戦場をあとにした。
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