第240話『私は』
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《???視点》
ついにゴールド達と出会ってしまった。
参ったな……正直1番会いたくなかった。
私はもう私ではないが、どうしても魂が否定する。
でも……。
『はぁ……はぁ…………』
既に私とゴールド達との戦いは始まっている。人間にしてはやるようだが、あまりにも実力差がありすぎた。
レッドとかいう見た目以上に頑丈な小僧は私によって倒され、もっと頑丈なゴールドとアミはまだ耐えているようだが、もはや虫の息。あとは止めを刺せばいいだけ。
だがアミに関しては少し注意が必要だ。アミ……私もよく知ってるこの女は時に私ですら捉えきれないくらい速く動くことがある。その際に私に一太刀浴びせることもできるかもしれない。だが……。
『この!』
そう思ったそばからアミは異常な速さで私を捕まえようとしたが、まさにそれを警戒していたのでうまくかわすことができた。
問題なのはゴールドもアミも私に危害を加えようとしたわけではなく、傷をつけずに捕まえようとしていたことだ。
戦う相手が敵なら普通は傷をつけずに捕まえようとなんてしないだろう。
なんでそんなことをしようとしたのか、その理由は私がゴールドやアミにとって家族や仲間だからなのだろう。
だって私は……。
『はぁ…………なあ、本当にどうしちまったんだよ……シルバー』
そう、私はシルバーだ。確かにシルバーだ。だがシルバーではない。
『ごめんねお姉ちゃん、こうするしかなかったの』
私はいつもの口調でそう謝罪した。
『……なん……で……』
ゴールドはハンマーを握りしめたと思ったら、力尽きて倒れた。
『ゴールドちゃ……』
それに続いてアミも同じように倒れた。
――ゴールドさん、アミさん、レッドさんが倒れたので、30ターン目終了致します! さすが正義教団チームですね! やはり正義は勝つのです!――
正義はともかく、私が勝つのは当然だろう。ただでさえ人間ごときが私に勝てるわけがないのに、私を傷つけずに捕まえようとしたのだから、舐めすぎにもほどがある。
まあそれも仕方ないか。私はそもそも自分の正体をカミングアウトしなかったし、ゴールド達からしたら家族を取り戻したかっただけなんだろうしな。
残念ながら今の私は光の女神だ。かつて神の居城に仕えていた女神だ。今はシルバーというただの少女として生きている。
なぜ私がシルバーになっているのか……事の顛末を話すと、ある日、私は神の居城でいつも通りに過ごしてたら、突然何者かに殺された。その後、私は記憶を失くしてからシルバーという人間に転生して、記憶を思い出すまで完全にシルバーとして生きていた。記憶を失くしてたおかげで家族や仲間にシルバーの中の私に気づかれることは無かった……と思いたいが、まあアクタだけは、もしかしたら私に気付いていたかもしれない。何やら色々な力を持っているようだったしな。
私達が正義教団に連れて行かれる前、神様に前世の記憶を蘇らせると言って、シルバーには私の記憶をインストールさせてもらった。
こうしてシルバーと私の心は融合した。
シルバーは光の女神であり、光の女神はシルバーだ。
かつての純粋なシルバーはもういない。
とはいえ、シルバーとしての感情はある。
お姉ちゃんを傷つけてしまったという罪悪感と喪失感と……。
『ごめんね……ごめんね……お姉ちゃん……』
何でだろうな? 涙がボロボロとこぼれ落ちる。
光の女神としては、ただひと仕事終えた程度にしか思わないが……何だかな……変な感じだ。ゴールド達と過ごした思い出が私の中に入り込んで、擦り傷に塩を塗りこむように痛い。辛い。悲しい。
痛い。痛い。痛い。
震えも止まらない。
ゴールド達を倒すことで、私の目的に一歩近づいたはずなのに悲しい。
もうやめてくれ……私はシルバーだがシルバーじゃないんだ。私は光の女神だ。目的のためなら何でもする。たとえ神様だって利用する。いい加減切り替えなければ……。
『さて次に行こう』
担架に運ばれるゴールド達を尻目に私は涙を拭いて、体力の回復に努めた。といっても先程の戦闘ではほとんど身体を動かすこともなければ、魔力もまだ9割も残ってるので、正直余裕すぎて休憩なんていらないくらいだ。
早くこのゲームを終わらせて、あの女を……!
――――
そしてアイドルタイムが終わり、次の31ターンが始まった。
何が体力回復だ、ふざけんな。
お姉ちゃんのことが頭から離れないせいで、ろくに回復できないどころか、感情がぐちゃぐちゃで頭がおかしくなりそうだ。
悲しい。悲しい。痛い。痛い。痛い。悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しい痛い悲しいあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……。
……ダメだ。これっぽっちも心が切り替えられない。
まだ泣いている。
お姉ちゃんとアミさんを傷つけてしまったことを……。
『うぅ……辛いよぉ……なんで、わたし……わたし……お姉ちゃん……!』
やめろ。
やめろ。
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ。
切り替えろ私。
――私はお姉ちゃん大好き――
違う。
私はゴールドなんて……。
――お姉ちゃん、ごめんね――
――アミさん、ごめんね――
違う。心を切り替えろ。私は光の女神。シルバーじゃない。
――私はシルバー――
違う。
――私は大好きなお姉ちゃん達を傷つけました――
やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!
『お姉ちゃああああああああああああああああああん! うわああああああああああああああああああん!』
まるで人間の子供のように激しく号泣した。
これは魂の叫び。
シルバーとして生き、愛する姉妹と仲間達と魔王城で暮らし、そこがあまりにも居心地が良くて……。
いつも私を愛してくれるお姉ちゃんは、暖かくて可愛くて放っておけなくて愛おしくて……お姉ちゃんは必ず私を守ってくれて……あぁ、そうか……そういうことか。
ようやく気づいた。
『ぐすっ……ぐすっ……私は……私は……!』
光の女神も、ゴールドの事が大好きだったんだ。
第240話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




