第238話『目覚めた刻』
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霧の先に小さな人影が見えた。
距離はもう近い。見なかったことにして引き返すのはもはや難しいだろう。
味方なら大歓迎なのだが、敵なら、疲弊した2人を気にしながら戦わなくちゃいけない。
どうか味方であってくれ……そう祈った時、意外な人物が姿を見せた――
『あ、あ……ダストさん……ブロンズちゃんも……!』
『シュタイン……?』
なぜシュタインがここに……?
実は水の女神と一緒に檻から出てきたのか?
『いえ、どうやらシュタインちゃんは最初から捕まらなかったみたいよ』
シュタインの心を読んだブロンズ様がそう解説した。
『そうなの?』
『ええ……大変だったわねシュタインちゃん』
ブロンズ様は普段では考えられない天使のような優しい顔をして、シュタインを抱きしめた。
すると、シュタインは爆発したかのようにポロポロと泣き出した。事情は分からないが、どうやらシュタインも相当大変な思いをしたようだな。
ん、待てよ? うちのチームの?枠って、もしかして?
『そうよ、シュタインちゃんの事よ』
『なるほど……』
シュタインの心を読んだブロンズ様によると、正義教団襲来時に、裏ルートから潜入して襲撃するガラードの班は途中でランスロットに捕まってしまったのだが、マーリンの咄嗟の機転により、シュタインだけはなんとか逃げることができた。
その後シュタインもこのゲームに巻き込まれて参加者として、1人で霧の中をずっとさまよっていた。幸い敵に出くわすことは無かったが、もし敵に会っていたかと思うとゾッとする。
敵に会わなかったとしても、ゲームが始まってから約3時間も経っていたんだ、シュタインもずっと1人で心細かったろうな。
とにかくシュタインと合流できて良かった。
『皆さん、よろしくお願いします』
シュタインは礼儀正しく頭を下げた。
『シュタインちゃん、よろしく〜』
『ああ! こちらこそよろしく頼むぞ』
こうして、俺達は5人グループで行動することになった。
ちなみに、シュタインは精神的疲労もあったのか足がガタガタでとても動けそうに無かったので、パーシヴァルがブロンズ様を背負ったままシュタインも背負うことになった。パーシヴァル的には、2人共全然軽いので特に大きな負担にはならないそうだ。本心で言ってるかどうかは定かではないが。
とはいえ、申し訳ないな……もし俺にもっと体力があってまだ歩けていれば、パーシヴァルに2人も背負わせなかったのに……。
――――
――19ターン目が終了しました。反逆者チームにお知らせが1つあります。?枠の参加者が、ダストさん達4人グループと合流しました――
?枠の情報は同じチームであっても公開しないのか。
シュタインが無事だということをゴールドちゃん達と情報共有できれば、安心感を与えられるのにな……。
――続いて20ターン目開始です!――
相変わらず間髪入れずに次のターンが始まった。
いつになったらこのクソゲーは終わるのやら。
――――
あれから、
20ターン目、何も起こらず。
21ターン目、何も起こらず。
22ターン目、何も起こらず。
23ターン目、何も起こらず。
24ターン目……ここで2つの戦闘が発生した。
1つ目は、ガレスさんVSエレック。
2つ目は――
『黒崎!! 銃の女もまた会ったなぁ! 今度こそぶち殺してやる!』
俺達は葛木と戦うことになった。相変わらず悪人面がよく似合ってやがる。一応勇者なくせに。
しかし、また会ってしまうとはな……つくづく縁があるようだ。これっぽっちも嬉しくないが。
『またお前か……』
葛木程度なら、正直、今の俺1人でも十分だが、正義教団のことだ。もしかすると前よりもパワーアップしていたりするかもしれない。
油断はできないな。
俺は前に出て、警戒しつつ、葛木を片付けようとした。
『さあかかって――』
しかし、葛木は目にも止まらぬ速さで俺を追い越した。
『なっ!?』
なんと意外にも狙いは俺ではなく、シュタインだった。
『まずは1番弱そうなてめえからだ!!!』
葛木は容赦なくシュタインに剣を向け、そのまま串刺しにしようとする。
『え……?』
もちろん戦闘が不向きのシュタインに、咄嗟に回避できるほどの反射神経はない。このままではシュタインが死ぬ。
『ヒャッハアアアアアアアアアアアア!!! 痛みに苦しみながら犯されて、そして死ねえええええええええええええええ!!!』
葛木の剣とシュタインとの距離は僅か1センチ。
俺も完全に不意をつかれたので、咄嗟に葛木を止められる魔法を発動したが、とても追いつかない。
このままじゃ……シュタイン――――
しかし――
『なっ!? ぐわっ!』
剣がシュタインの柔肌を傷つける前に、葛木はケールさんに顔を掴まれて床に叩きつけられた。
ケールさんが咄嗟に動いてくれたおかげで、シュタインにはかすり傷1つもつかなかった。良かった。
『ケールさん!』
しかしケールさんの様子が少し変だった。
『ケールさん?』
ケールさんは何も言わずに、倒れた葛木に跨がり、顔を思いっきりぶん殴った。
『ぐへっ!!』
これだけでも、葛木は失神しかけるほどのダメージを喰らったのだが、ケールさんの拳が止まることはなく何発も何発も殴り続けた。
『……』
よほど葛木の弱い者を真っ先に狙うのが許せなかったのか、ケールさんから強い憤怒を感じた。
『あ、あのケールさん?』
『……』
俺が話しかけても、ケールさんは一切振り返ることなく、葛木を殴り続ける。
その葛木も、もう既に意識はない。このままだと命の危険だ。俺としては葛木を利用したいので生かして欲しいのだが……もう無理そうだ。
『……』
殴っている内に葛木はもう息をしなくなった。まさに瞬殺。まるで小動物を狩るドラゴンのような、それほどまでに力の差があった。
確かに葛木は今の俺でも倒せると思う。だが、ここまで一方的な蹂躙は無理だろう。せいぜい、ある程度はいい戦いになるくらいだ。それでも、その程度でも俺は自分自身、十分強いと思っていた。
だけど、俺の目の前でここまで圧倒的な差を見せられると、それがたとえ味方であっても、自信を失ってしまう。
『ウウウウウ……』
『ケール……さん?』
葛木を殺したケールさんは、まるで獣のように唸り声を上げる。俺を背負ってくれたり、ブロンズ様達と楽しくお話をしていたケールさんは、もうそこにはいなかった。
『殺ス……殺ス……』
明らかに異様な空気だった。なんだこれは? もう獣というレベルではない。おぞましい怪物のような禁忌の人型兵器のような、極めて危険な存在。
『ウウウウウ……!』
そんなケールさんを見て初めて不気味に思ったブロンズ様達は、湧き上がる恐怖で後退りをする。
すると、ケールさんがこの世のものではない化物のような目でこちらを見た。
『ひっ!?』
マジびっくりした……。あんな目で見られたら誰でも腰を抜かしてしまうよ。
どちらにせよ、俺達は殺される。
ケールさんを止めなければ殺される。
どうする……? どうすれば……ん?
第238話を見て下さり、ありがとうございます。
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