第235話『夢の夢と夢と現実』
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『俺はケールさんを見捨てることはできないよ』
『私の話聞いてた? あなたが彼女によって殺されるかもしれないのよ』
『分かってる』
ケールさんのあの強さ、神様から釘を刺されるという事実がある以上、危険人物なのは確かなのだろう。
アリスも俺のためを思って言っているのも分かる。
でも実際にケールさんの内面に触れてみると、食いしん坊で積極的には動かないけど、本当にヤバい時は俺を助けてくれるし、ブロンズ様とも仲が良い。
それに――
ケールさんの身体に触れた時、とても暖かった。
彼女の包容はとても優しかった。
だから俺は――
『俺はケールさんの過去なんて知らないけど、でも……俺はケールさんを信じる』
『――そう。そこまで言うのなら、私はもう何も言わないわ』
『ああ、警告ありがとな』
『言っておくけど、いざとなったら私に頼ってもダメよ。ずっと首飾りになっていた代償で、今の私は全盛期よりもかなり衰えてるから』
だろうな。もしアリスが全盛期の強さを持っているのなら、とっくのとうに正義教団なんか潰してるはずだ。
それに、ネヴィアの記憶操作で混乱してうまく戦えていなかったとはいえ、アミさん達に負けていたくらいだ。全盛期とは程遠いくらい衰えてるんだろうな。
『あ、光が……』
突然、俺とアリスの身体が所々、光り始めた。
どうやら、お互いに目覚める時が来たようだ。
『じゃあもう時間だから』
『そうか、もうそんな時間か』
この夢から覚めれば、しばらくアリスと話すことはないだろう。今のうちに話しておきたい事はないだろうかと頭の中で詮索していると、アリスの方から先に口を開いた。
『あ、あともう1つ言い忘れてました』
『なんだ?』
現実に戻るまであと数十秒。果たして言いたいことを言い切れるのか……?
その僅かな時間で俺に伝えたいこと……それは――
『この世界は――――』
『は……?』
――――
『――――はっ!?』
目を覚ますと、そこは見慣れた濃い霧の中。寝る前と特に何も変わっていない――――と思っていたら――。
『あれ? みんなどこ行ったんだ?』
すぐそばにいたはずのブロンズ様とケールさんとパーシヴァルの姿がなかった。まるで最初からいなかったみたいに。
『おーい!!! ブロンズ様! ケールさん! パーシヴァル!』
大きな声でみんなを呼んでみたが、返事はなかった。
『あれ? おかしいな……?』
もしかしてブロンズ様の怒りが予想以上に大きくて、俺を置いていってしまったのか……。
いやでも、ネヴィアがその場を動かないようにアナウンスしていたのに、リスクも気にせず迂闊に移動するとは考えにくいな。
だとしたら……。
まだ夢の中とか?
さっきのアリスと会ったのは夢の中の夢で、ここが夢の中ということか?
――正解だ、ダスト少年――
『誰だ?』
どこかから女性の声がした。
前々から思ってたけど、どこかから声がするの多すぎない? しかも当然のように心読まれてるし……こういうの流行ってるの?
――え、そっちの方がかっこよくない?――
やる側はそうだろうけど、やられた側はただただ困惑するだけだぞ?
――あぁ、そうなんだ……じゃあ私の姿を見せるよ――
『やあ』
そう言って、その人はすぐに現れた。いや人じゃない、女神だ。霧の女神ミストだ。
霧の女神ミストとの面識はルキウスの秘密の部屋で1回あったくらいだが、ちゃんと話したことはないな。
『君とはゆっくり話をしたいけど、今はそれどころじゃないからね。要件だけ話すよ』
『おう』
こっちも色々聞きたいことがあるけど、ミストの反応を見ると、本当にあまり時間もなさそうだし、とりあえずミストの話を聞こう。
『まず確認なんだけど、今、君の1番の敵だと思う人物は誰?』
『1番の敵……? そりゃ、あいつ……ルシウスに決まってるだろ? ルシウスが王なんだから、王を倒せば全て解決するはずだ』
まあ、そのルシウスが1番倒せる可能性が低いんだよな……。
『いや違う。確かにルシウスは王だし、王を倒せばこの国は終わりだからね』
『じゃあ何が違うんだ?』
『黒幕は別にいる。ということだよ』
『なんだと……? ちなみにそいつは誰なんだ?』
『それは――』
その黒幕の正体がミストの口から明らかになろうとしたその時、まるで狙ってたかのように突如として霧が濃くなり、ミストの姿が見えなくなった。
『は、おい! ミスト! どこだ! どこ行っ――』
――――
『――た!』
『きゃっ!』
『え』
俺は夢から覚めたのか、ブロンズ様がなぜか目の前で尻もちをついてて、その後ろに俺を見下ろすように、ケールさんとパーシヴァルも居た。
どうやら、今度こそ夢から覚めたようだ。
『もう! びっくりしたじゃない!』
『ごめんごめん』
俺は、開脚してしまったブロンズ様のスカートの中をチラチラと見ながら謝罪した。
『もう、お兄ちゃんの変態』
ブロンズ様は頬を染めながら、足を閉じてスカートを押さえた。
『ごめん』
『……私の方こそ、ごめん』
ブロンズ様はボソッとそう言った。
どうやら俺を仲間外れにしたことを気にしていたようだ。
やっぱり、なんだかんだ優しい娘なんだよなぁ。
――――
それから俺も含めて4人でワイワイと楽しく会話した。今は休戦中とはいえ戦場にいる者としてあるまじき行為だが、さすがに暇すぎたので、どうせならリラックスしようということで、そういうのに厳しいケールさんも快諾してくれた。
ちなみにさっき俺が見た夢の事は話していない。ケールさんの事もあるし、ネヴィアかあるいは他に監視している者が俺達の会話を聞いていないとも限らないからな。
――それから30分が経過した。
『……遅くない?』
『そうだね〜』
『確かに気になるな……』
そんなに“何者か”もとい、アリスが恨みを込めながら用意した自動破壊人形の対処に手こずっているのか?
そう思っていると、突然アナウンスが流れた。だが――。
――えっと……これでいいのかしら?――
『ん???』
明らかにいつもと様子が違った。声もネヴィアのものでもないし、というかこの声って……。
――えっと、皆さん、聞こえていますか? 私は水の女神アクアでもあり海の女神マリンでもある者です――
『水の女神!?』
『海の女神……?』
一体どうなってやがる……?
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