第15話『俺に語りかける魔王』
お待たせしました。
第15話できました。
よろしくお願いします。
※改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
※2022年1月30日改稿しました。
※2025年8月3日改稿しました。
この世界に召喚されてから2回目の朝。
この魔王城で過ごした事も、段々と思い出してきた。
魔王城と呼ばれるこの城は、元々兄貴であるアクタのギルドだった。俺達はここを拠点として過ごしてきた。
でも、何でギルドだったのが魔王城になってるのかさっぱり分からない。
何でギルドが滅びたのかも全然思い出せない……。
生き残った兄貴の元ギルドの人達に話を聞きたいが、どこにいるのかさっぱりだ。
赤髪ちゃんの母であるスカーレットさんも今は赤髪ちゃんがまだ幼い頃に行方不明になっているらしいし、アレンも同様に何の手がかりもなく行方不明だ。墓地に名前が書いてなかったのは安堵したけど、それはそれで新たな問題が発生してしまった。
うーん……どうしたものか……。
『そういえば今日は、あの視線を感じないな。さっき寝てた時は感じたのに……』
まるで視線を感じないのが寂しいみたいに言ってるがそういうわけじゃない。ただ……手がかりがほしいだけだ。それがたとえ謎の視線だとしても、何もないよりはマシだ。
『まあ、それは今考えてもしょうがないか』
その後、俺は朝飯を食べてから昨日あおいちゃんに言われたとおりに、修練場に向かった。
『おはよう、ダスト君』
そこにいたのはあおいちゃんではなく、魔王だった。てっきりあおいちゃんがいるのかと思っていた。
『おは……あれ? いつもはあだ名で呼ぶのに、どうした? とうとう頭がイカれたか? あ、元々か』
『いやいや、イカれてないから、今更だけど、儂に辛辣すぎない?』
『いや、だって……普段の言動見てると……なぁ……』
disる俺に魔王は顔をむっとさせた。その顔も美少女だったらさぞかし可愛かったんだろうけど、爺さんがやっても何も嬉しくないし、虚しくてこっちが泣きそうになる。
『と、ところでさ、今日の食堂なーんか雰囲気が甘々しくなかった?』
もうこれ以上自分のdis話をしたくないのか、魔王は急に話題を変えてきた。
まあいいや、俺も何か悲しくなってきたし、魔王に話を合わせてやるか。
『確かに今日の食堂はやけに姉妹愛が強そうな雰囲気だったな。皆、揃って頬を染めて、一体何があったんだろうな?』
いや姉妹愛が強そうな雰囲気って何だよ……。我ながら何言ってんのか分からねえ。でもそれ以外に言葉が出てこなかった。ここにスマホがあれば他の言い方を調べられたんだろうけど、あいにくスマホは持ってきていない。
『赤髪ちゃんとあおいちゃん、ゴールドちゃん達3姉妹も、仲が良いのは元々だけど、ここまでじゃなかったかな……』
まあ俺が初めてゴールドちゃん達のやりとりを見たときも、とてつもないシスコンオーラを感じてたし、ああなるのも時間の問題だったかもな。
って今俺が話したいのはそういうことじゃない。
『まあそれは後で本人達に聞こう。それより大事な話があるんだろう?』
『ああ、そうだね……あのね、ダスト君にお願いがあるんだけどね』
『お願い?』
『うん、実は……ダスト君には、三代目魔王として、引き継いでほしいんじゃ!』
ん? え? え? ゑ?
『………………は?』
このボケボケジジイは今何と言った? 三代目魔王? 引き継ぎ? 俺に???
『どうしても引き継いでほしいんじゃ』
突然のお願いに驚愕し、俺は無理無理ととっさに首を横に振った。
『どうしてもどうしても引き継いでほしいんじゃ』
いやいや無理だろ。俺に魔王とか。
魔王って最強の魔族が得る称号だろう? 俺は最弱の人間だぞ?? まるで真逆の存在だぞ???
どうしても無理なので、もう1回首を横に振ってみる。
『どうしてもどうしてもどうしても引き継いでほしいんじゃ』
魔王は俺の言葉を無視しているのか、それても聞こえていないのか、断る度に“どうしても”を1つ増やしてお願いを無理矢理聞き入れてもらおうとしている。
これってアレか。選択肢がありながら、いいえを選ぶとループするやつか。ゲームでよくあるわ。もう選択肢が意味を成してないやつな。
俺は首を何回も何回も横に振って、拒否のアピールを強く表現する。だって仕方ないだろう、ただの人間以下の俺に魔王は無理だろ。
『どうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしても!!!』
俺が折れるまで、魔王はゴリ押しを連発するつもりだ。
『何度も言うな! 鬱陶しい!』
俺がそう拒絶しても魔王は切迫した表情でどんどん顔を近づけていた。近寄るな、気色悪いぞ。
『まず、理由を説明しろ! なんで、俺に三代目魔王を引き継がせたいのか』
魔王は眉間にシワを寄せて、これまでにない真剣な表情になって、話し出した。
『そうだね、本来ならダスト君にはある程度強くなってもらって、この魔王城の幹部として、一生共に暮らして貰いたかった……だけどこの前君がスーパーグレートベンリ街に行ったとき、君は全ては思い出せないかもしれないけど、暴走してたんだ』
『それなら、なんとなく思い出したよ。憎しみに溺れた怪物のように、あいつ……葛木の腕を斬った』
あれ? 思い出そうとすると、なぜか頭にノイズが入った。なんだこれ?
『そう、君は暴走してしまった……でも、なぜただの一般人である君が、あんな強大な力を得て、暴走しちゃったんだと思う?』
『それは……』
確かに俺は記憶上の出来事を除けば、ただの日本から来た一般人だ。なのに……いや、本当は、自分の正体がなんとなく分かってるんだ。
『俺が前に悪夢を見たときだ。ある男が俺に言ったんだ……俺が魔王だと』
『うん……そうだよ。君は生まれた時から、ある魂が君の身体の中に宿っていたんだ……そう、あいつ……初代魔王様の魂がね』
そうか、初代魔王の魂か。俺が悪夢を見た時に語りかけてきたあいつの正体……初代魔王。
――そうだ、俺が初代魔王だ――
突然どこかから声がした。夢で聞いた声だった。
昨日俺が葛木にボコボコにされて気を失っていた時に夢で聞いた声だ。
俺はさっきまで魔王と話してたはずだったのに、いつの間にかこの真っ黒な空間に転移されたようだ。他には誰もいない。
――マ……二代目がこのタイミングで、お前の正体をバラすとはな――
なるほど。お前初代魔王だったんだな。
――ああ、驚いたか――
別に……。
――ふん、そうか。まあいい――
用件は?
――お前は、これから三代目魔王になる為の儀式を行うことになる――
儀式?
――だが、その儀式は、儀式ではない――
どういうことだ?
――二代目は、お前を殺すつもりだ――
な……!?
第15話を見て下さり、ありがとうございます。
第16話の方も、なるべく早く投稿していきたいと思います。
よろしくお願いします。




