第14話『観察と姉妹愛』
お待たせしました。
第14話できました。
宜しくお願い致します。
※改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
※2022年1月30日改稿しました。
※文字数少し多めです。
※2025年8月3日改稿しました。
俺は美味しい夕ご飯を食べた後、湯船に浸かってから早めに就寝することにした。
しかし、頭の中が勝手に身に覚えのない謎の記憶という名の映画を上映し続けているので、全くと言っていいほど眠れなかった。
今日俺とあおいちゃんがスーパーなんとかかんとか街へ行った時、間違いなく何かが起きた。
全く思い出せないわけじゃない。身に覚えのない謎の記憶と言ったが、不思議なことに間違いなく俺の記憶だと俺の本能がそう言っている。
『段々思い出してきた……俺は葛木の両腕を斬ったんだったな……』
あの時の俺は……俺じゃないけどまあ俺か。とにかく葛木を殺したくてしょうがない。殺人衝動が半端ではなかった。今までイジメられた時はそりゃこいつ許せねえ、ぶち殺してえとは思ったが、さすがに本当に両腕を斬ってしまう程の衝動は無かった。
なぜ俺が化物になったのか……色々思うところもあるが、1番の理由はおそらく――
『あおいちゃんを傷つけたからかな』
俺は許せなかった。もちろん、自分が痛い目に会うのは嫌だ……でも――。
『あおいちゃんが、ここにいる皆が傷つくのはもっと嫌だ……』
この魔王城は前の世界とはまるで違って、最高に居心地がいい。
自分はあまりに無力でこんな事を思うのは冒涜的で傲慢でもあるかもしれないけど、俺はここにいる皆を守りたい。
そんな風に思ったことは、今までに無かった。
これが友達ができたという感覚なのだろうか? とにかく俺は魔王城の人達に傷ついてほしくない。
まだ出会って数日なのに、こんなにも俺は皆を……自分でも不思議だ。それほど居心地が良いということなんだろう。
でも、この世界は思いだけでどうにかなるほど甘くはない。あの葛木という存在が、脅威が、俺をそう思わせた。
もし葛木がこの魔王城に襲撃しにくれば、皆ただでは済まない。葛木の事だ。俺の事は痛めつけてから殺して、あおいちゃん達は――
考えただけで恐ろしい……。
そんな悲惨な未来を回避する為には――
『俺ももっと強くなろう!』
そんな意気込みを語る俺だったが、眠ることを忘れていたかのように突然の睡魔に襲われる。
……あれ。
……なんか、眠くなってきた。
今日も疲れたなぁ。
風邪引くといけないから、ちゃんとベッドの中に入ろう。
はい、お休み。夢の世界へ行ってきます。
――――――――
《???視点》
『やっと寝たようね』
私はずっと自身に、身体が透明化する魔法を使い、ダストの部屋に忍び込んでいた。
『さっき、こっそり料理に遅延性の眠り薬を盛っておいて正解だったわ』
この遅延性の眠り薬はただの眠り薬じゃなくて、その名の通り、後から眠くなる薬。
普通の眠り薬でも良かったけど、それじゃ面白くないからね。
それにしても、他の奴に気づかれずに眠り薬を盛るのは本当に簡単だったわ。私の魔法のおかげでね。
それにしても……。
『ふふっ、かわいい顔で寝てるわね』
私はこの愚かで弱い男の寝顔を見てニヤニヤしてる。
もう、それはもう……もっといじめてあげたい……。ふふっ……。
『ふふふ……私が満足するまで、まだまだ観測し続けるわ。今度は、浴場の中もがっつり覗こうかしら……』
前回は、浴場の中もちょっと覗いたのだけれど、さすがの私も、罪悪感を覚えたので、今回は勘弁してあげたわ。
でも、次は……ふふっ……。
満足した私はこっそりと部屋から出ようとした。
『え?』
――――――――
《ダスト視点》
『……あれ、まだ夜中か……? 思いの外早く起きてしまった……』
俺は寝ぼけながら、部屋にあった時計的なものを確認した。どうやら早起きとしては少し早すぎる午前4時に起きてしまったようだ。
あれ、さっきまであの視線を感じた気がする。
ずっと俺の寝顔を見ていたということか? 暇人かよ。全く……一体どこの誰が俺を見ているんだ?
『……』
ダメだ。起床したばかりでうまく頭が働かない。当然か。
『やっぱり、もう1回寝よう』
再びベッドに横になり、夢の世界へダイブした。
――――――――
《???視点》
ふぅ……まさか、こんな時間に突然起きるなんて、一瞬バレたかと思ったわ……。
私この人が召喚された時からずっと見つめているのです。
なぜこんなにもこの人を、見てしまうのか……。
『そんなの決まってるじゃない……だってこの人は……』
すると、彼はうまく寝付けなかったのか目を擦り早くも瞼を開けようとした。
だけど私は既に透明魔法を発動していたので、彼の視界には入らない……はずなんだけど、なぜか目が合ってる。
『……気のせいか……?』
彼は再び目を閉じた。今度こそ完全に夢の世界に入ったようだ。
『ふぅ……危なかったわ……今回はこれくらいにしとこっと』
私は、彼の部屋を出て、いつもの私に切り替えて、何食わぬ顔で朝を迎えた。
――――――――
《ゴールドちゃん視点》
『よし、朝飯ができた!』
今は朝の6時半、アタシはウルトラ可愛い妹のシルバーと一緒に、皆の朝飯を作っている。
本当ならブロンズも来てるはずなんだが、どうしたんだろう? さっき部屋をノックしても返事が無かったし……。
『お姉ちゃん、いつでも準備OKだよ』
『おう、お疲れだぜ、シルバー』
今日のメニューは……。
●カレェェラァイス
●白き新世界のチュー
●ラァイスと無双汁
●ラァイスとファンバァグ
●オムレイトラァイス
●ス・シ
●ストロングカリカリ
●ストロングノーマル
もちろん、“食パン”は消させてもらった。どうやら、ブロンズのやつがいたずらで書いたらしい……。もうあんな辱しめは勘弁してほしいぜ……。
全く……ダストっちがあまりにも、真顔で食パンが食べたいなんて言うから、てっきり……。
『おはよう、ゴールド姉、シルバー姉。遅れてごめんね~』
噂をすれば、ブロンズがケロッとした態度でやってきた。反省の色がまるで見えない。
『おはよう、ブロンズちゃん』
シルバーは、ブロンズが遅れてきた事を責めもせずに、笑顔で挨拶をした。シルバーは優しいなぁ……。
でもアタシは1番上の姉としてちゃんと問い質した。
『おはよう、ブロンズーってお前、今日の朝、部屋ノックしたんだが、どこかに行ってたのか?』
『あー、その時は多分お手洗いに行ってたの』
『本当か? だったら、何でその後、すぐに朝飯作りに来なかったんだよ?』
そもそもブロンズが遅刻してくるなんて珍しい。アタシとかシルバーは何回か寝坊して、遅刻しちまったことあるけど、ブロンズはこれまで1回も遅刻したことない。
『なんか今日はやけに早起きしちゃってさ〜、あまりに眠いから二度寝しちゃったんだよね』
『そしたら、寝坊してしまったと』
『うん、ごめんね』
ブロンズは上目遣いで謝ってきた。やべえよ……可愛すぎだろ……こんなの怒るに怒れないだろ……。
『あ、いやいや! 良いんだ! むしろブロンズは、これまで遅刻したことなかったし、むしろアタシの方がめっちゃ遅刻してきたんだし』
本当は注意しなきゃいけないのに、ブロンズが可愛すぎるあまり、つい甘やかしてしまった……。
するとブロンズは、アタシの手を握りとても可愛い笑顔でめちゃくちゃ可愛い事を言った。
『ありがとうゴールドお姉ちゃん、大好きだよ』
うおおおおおおおおおおおおお! 可愛いいいいいいいいいいいいい!
なんだこの妹は!? 天使か!? 地上に舞い降りた天使なのか!?
『ブロンズ……今日も最高に可愛いな!』
『ありがとう、ゴールド姉も可愛いわよ!』
『うおおおおおお! ブロンズ! シルバー! 大好きだあああああああああああああああ!』
アタシは愛しい2人を抱きしめて確かな強い愛を感じた。
『お姉ちゃん!?』
シルバーは恥ずかしさのあまり、顔が真っ赤に染まり、目がぐるぐる回っていた。
ブロンズはちょっと照れはしたものの、取り乱さずに余裕の笑みを浮かべていた。
この大切な居場所を守っていこう……絶対に……。
――その頃、食堂前では。
『ゴールドさん達……素晴らしい姉妹愛ですね、お姉さま』
『ええ、そうですね』
赤髪ちゃんとあおいちゃんは、食堂の扉を開ける前に、ゴールドちゃん達の愛を叫ぶ声が聞こえたので、邪魔しちゃいけないと、扉の前で聞き耳を立てていた。
『私も、お姉さまに愛を叫びたいです!』
あおいちゃんもゴールドちゃん達にあてられてテンションが狂ってるのか、何の躊躇いもなく赤髪ちゃんに抱きついた。
あおいちゃんは、後にこの事を思い出し、恥ずかしさが限界突破し、部屋の中をのたうち回ったとか。
一方、赤髪ちゃんは、ただでさえ可愛い妹の尊さと、扉の向こうの姉妹愛の尊さのダブルパンチでクリティカルヒットして、そのまま再起不能になってしまったらしい。
第14話を見て下さり、ありがとうございます。
第15話の方も、なるべく早く投稿していきたいと思います。




