表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/726

第214話『踞っている男は僅かな変化を見抜く』

お待たせしました。

第214話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。

 ――王室付近の部屋。


 と呼ばれているのだが、今のところ用途が皆無のため、人の出入りが極端に少なく、俗に言う空き教室に近い存在だ。


 故にガラードはここから侵入しても、誰にも出くわすことは無いだろうと踏んでいた。


 しかし……。


『うぅ……』


 こんな時に限って、部屋の隅で、泣きながら(うずくま)っている男が居た。


 しかもその男は、ガラードのよく知る人物であり、出来れば、戦いたくない人物でもあった。


『あなたは……()()……?』


『……ん? その声はガラードちゃんかい?』


 ケイは、ガラードの声を聞き、顔を上げる。


 すると、そこにはケイのよく知る美しき女騎士が()()


『こんなところで何をやっているのですか?』


『いや、なんでもないよ……』


 ケイは、溢れ出る涙をなんとか拭き取ってから、そう言った。


『ガラードちゃんこそ、どうしてここに?』


『えっと、王が心配なので、思わず来てしまいました』


 ガラードは、咄嗟に誤魔化した。


『ふーん、心配……ね』


 ケイは、そんなガラードに、怪訝な顔を見せる。


『ケイ? どうかされたのですか?』


『いや、本当に王が心配なだけなら普通に階段かエレベーターから来ればいいのに、何でそんな所から来たのかなと思ってね』


 そう言われ、ガラードは僅かに動揺を見せた。本当に僅かなので、大抵の人は気づかないレベルだ。


 しかし、ケイはその一瞬の動揺を見逃さなかった。


 このままガラードがボロを出してしまえば、ケイはガラードの裏切りを王に告発してしまうだろう。


 まあ、別に今すぐに告発しようがしまいが、裏切る事には変わりないのだが、ここでケイと戦って、戦力が落ちるのは避けたい。


 そう考えたガラードは、何がなんでも嘘を貫き通す気だ。


『実は、私も最初はそれで行こうとしたんですが、侵入者に阻まれてしまって、だからこうして裏の通路から来たんです』


『裏の通路?』


『はい、実は地下牢から、 ここに繋がる通路があったのです』


『へぇ、そんなのあったんだ……ふーん、なるほどね……そういうことなら、ガラードちゃんがそこからやって来てもおかしくはないね』


『は、はい!』


 ガラードは、ケイをうまく騙すことができた――と思っていた。しかし――


『でもさ、そんな通路があるなら、何で正義(おれたち)にすぐに報告しなかったの?』


『そ、それは……』


(しまった……そこまで考えてなかった……)


 しかし、追い詰められてもガラードは、毅然とした態度を崩すことはなく、一切の動揺を見せなかった。


 そして、ガラードは、この僅かな間に咄嗟に思い付いた答えを口に出した。


『じ、実はこの通路、つい先ほど見つけたのです』


『ああ、なるほど。つい先ほどか。それなら納得だね』


 ケイは、怪訝な顔から笑顔に変えてそう言った。


 ガラードも、露骨に表情には出さないものの、これで疑いが晴れたと安堵する。


『で、その通路はどんなものなのかな? ちょっと見てもいいかい?』


『いいですよ』


『ありがとう。どこにあるんだい?』


『ここです』


 ガラードは、秘密の通路の扉に指を指した。


『ほうほう、これが……』


 ガラードに許可を貰ったケイは、秘密の通路の扉を開けようとする。


(かかった!)


 ガラードはそう思い、思わずニヤリと笑った。


 そう、これはガラードの罠だ。


 あれはガラード達が急斜面の通路を登りきり、扉を開ける直前の事だ。ガラードは覚悟を決めて扉を開け、フラン達と共に突撃するつもりだった。


 しかし、そこには踞るケイがいた。


 瞬時――ガラードは、ケイと戦うことの危険性を考慮し、自分以外の全員を扉の向こう側に残した。その際にみんなにこう言った。


 “次に扉を開けた瞬間、みんなで奇襲をして下さい”


 ――そして今に至る。


 さて、(ぶたい)は整った。


 このままケイは、扉を開け、フラン達からの奇襲を受ける。


 いくら頭のキレるケイでも、あれだけの人数の奇襲を受ければ、ただじゃ済まない。


 これで、ケイを打倒することができる。完璧だ。



 ――そう思っていた。



『あー、やっぱいいわ』


 ケイは、突然冷めたのか、扉を開けずに、その場から離れた。


『え』


 想定外の展開に、さすがのガラードは、驚愕の表情を露にしてしまった。


『どうしたの? ガラードちゃん? そんな驚いたような顔をして』


『え、いや何でも……何でもないです』


『ねえ、ガラードちゃんさ、さっきから何か隠してるよね?』


『!?』


 ケイは再び怪訝な顔を見せた。


『ほら、動揺してる』


『そ、そんなことは……ないです!』


 と、ガラードはそう否定するも、やたら多くの汗をかき、身体も震えている。ここまで露になってしまえば、大抵の人は怪しいと思うだろう。もはや弁解は不可能。裏切りがケイにバレるのも時間の問題だ。


『違うなら、そこの扉開けてみてよ?』


『扉を……!?』


『もちろん、ガラードちゃん1人でね』


『くっ……』


(そんなことできるわけがない……もしそうしたら、私がみんなの奇襲を受ける事になってしまう……もしうまく避けたとしても、ケイにその隙をつかれて、みんなが、やられてしまう)


『どうしたの? 開けないの?』


『くっ……ええい、もう仕方がない! 皆さん! 予定変更です! 出て来て下さい!』


 ガラードは、剣を抜き、秘密の通路の扉の向こう側に届くくらいの声量でそう言った。


『……』


 しかし、扉から1人足りとも出てくることはなかった。


『あれ? 聞こえなかったのか、皆さん、出て来てください!!!』


 今度は先ほどよりも大きな声でそう言った。


 しかし、それでも扉が開くことはなかった。


『バカな……一体どうなっている?』


 すると、ケイが不敵な笑みを見せて、こう言った。


『さっき、その扉に触れた時に、扉を開けられないように結界魔法を張ったんだよ』


『結界魔法……!?』


『ああ、もしかしたらガラードちゃんは正義(おれたち)を裏切って、その扉の向こうに(なかま)を待機させて、扉を開けた俺に奇襲する作戦でも立てたんじゃないかと思ってね、結界を張らせてもらったよ』


『くっ……』


『ほう、その反応は当たりだね』


『それならば……私は……あなたを倒して先に進む!』


『やれるものならやってみな』



第214話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、20日(日)~23日(水)に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ