第13話『神のみぞ知るってね』
お待たせしました。
第13話できましたので、宜しくお願い致します。
※改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
※2022年1月23日改稿しました。
※2025年8月3日改稿しました。
『偽りの世界ってどういうことだ?』
『まあ、つまりシミュレーターのようなものだよ』
『シミュレーターだと?』
シミュレーターって言ったらあれか。仮想的な空間か。つまり俺が現実だと思っていた世界は地球ではなくて、異世界だったということか。
情報量が多すぎて、もう意味が分からねえ……。
『この世界の最高技術さ』
最高技術だと……? 要するにチート級の魔法か何かか?
『そもそも、この世界の神々は、元々、君が今まで住んでいた世界と同じような世界に住んでいたんだよ』
『俺が住んでいた世界と……同じような世界……?』
ますます意味が分からない……と戸惑う俺であったが、なんとか頭を巡らせた。魔王が話していた話しは、小学生か中学生が妄想したような嘘っぽくて、とても信じられないけど。
『じゃあなんで神は、そんな世界を創ったたんだ?』
『そこまでは儂も分からない、あとは神のみぞ知るってね』
まあ、そこまではさすがに分からないか……。そこは創造神に聞くしかない。どうやって会えるかは知らんけど。
『分かった、そのシミュレーターとやらの件は、ひとまず置いとく。ただ最後に1つ聞きたいことがある』
最後に聞きたいこと……最初に会った時に、同じ事を聞いたが、答えてくれなかった……。今の状況だったら答えてくれるのか……?
『俺を、この世界に召喚……いや戻したのはなぜだ?』
『それは――』
魔王はやはり答えづらいのか、ばつが悪そうに下を向いた。
――そんなシリアスな空気の中、どこかから空気を読まずに、ぐぅ~~~とお腹の虫が鳴いた音が聞こえた。
もちろん俺ではない。確かに昼ご飯も夜ご飯もまだなので腹は減っているが、腹の虫が鳴るくらいではない
ということは、腹の虫を鳴らしているのは魔王だ。この場には俺と魔王と2人しかいないので間違いない。
『……お腹すいちゃった』
狙いすましたかのようなタイミングなので意図的なのかと思ったが、本当に腹の虫が鳴るタイミングだったようだ。
『おい今、シリアスな場面だよな? なのに、こんな時に腹の虫が鳴くって……漫画かよ……タイミング悪すぎないか?』
『……よし、お腹減ったから、食堂へ行こうよ!』
魔王は勢いで話をはぐらかし、逃げるように食堂へと行こうとする。
『おい、まだ話は終わってない』
『腹が減っては、話はできぬと言うでしょ?』
『言わねえよ! 腹減っても、画面の中の女の子に、「今日もかわいいね」とか「愛してるよ」って言うことくらいはできるわ!』
『え? 何の話? よく分からないけど、それは多分ダスト君だけだと思うよ』
『他にもいるもん!』
『でも君ィ、元の世界では友達はおろか、まともに話す相手すらいないでしょ? それじゃ分かるわけないよね?』
『ぐはっ……!』
痛いところを突かれてしまった……。畜生……反論できねぇ……クソが……。
『まあまあ、いいから食堂行こうよ!』
このクソボケ魔王は、俺の心を抉るだけ抉り、何事もなかったかのように走り去ってしまった。
まだ聞きたいことあったのに……。シリアス返せ畜生。ふざけんな。
『はぁ……』
俺はとうとう怒りを通り越して呆れて大きくため息をついた。もう何かを聞く雰囲気ではないし、つか萎えた。もう知らん!
嫌になった俺は目から汗を流しながら、魔王の跡を追うように食堂へ向かった。
俺と魔王が食堂に着くと、ゴールドちゃん達3姉妹はいつも通りの優しい表情をしながら、すぐに料理を出してくれた。出来たての香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。
『魔王様……ダスト様……』
俺達が食堂に入った後に、赤髪ちゃんと、どこかやつれているあおいちゃんも入ってきた。
すると、あおいちゃんは俺を見るなり、血相を変えて俺に飛び付いた。
『ダスト様! 御体の方は大丈夫ですか!? 守れなくてごめんなさい! 生きててすいません! 何か食べたいものありますか!? 生きててすいません! 熱はありませんか!? あと生きててすいません!』
『あおい、落ち着いて下さい』
取り乱すネガティブモードのあおいちゃんを冷静な赤髪ちゃんが制止した。
『お姉さま……はい、すいません』
あおいちゃんは、深呼吸をして冷静さを取り戻した。
俺は苦笑いしつつ、口を開いた。
『あおいちゃん、俺の身体の方はホント大丈夫ですよ。むしろ、俺も迷惑かけてしまってすいません。生きてください。食べたいものは、ちょうどゴールドちゃん達が作ってくれたので大丈夫です。生きてください。熱はないです。あと生きてください』
本当に生きててくれよ。頼むから。美少女は世界の宝なんだから……。
『はい、ちゃんと生きます……』
あおいちゃんの情緒が不安定になってる間に、シルバーちゃんとブロンズちゃんは全員分の料理を並べ終えていた。
そして魔王やゴールドちゃん達も席に座り、早く食べたい! と言わんばかりに、つぶらな瞳で訴えてきた。こいつら……揃って全く同じ目をしてやがる……親子か。
『あおい、ダスト様も座ってください。夕食の時間ですよ』
『はい』
頂きます! というみんなの声が、食堂全体にめっちゃ響いた。
めちゃくちゃうるせえ。特にゴールドちゃんと魔王。うるさすぎて思わず耳を塞いでしまった。
『ゴールドさん、魔王様うるさいです! 静かに食べましょうって昨日も言いましたよね!』
『ごめんなさい……』
ゴールドちゃんと魔王は、赤髪ちゃんに注意され、叱られた子供のようにしゅんとしてしまう。
昨日とほとんど同じ光景じゃねえか。やれやれ。
今日のメニューは、ホワイトシチューだった。横には白いご飯が置かれてあり、お好みで混ぜたり、別々に食べたりしてる。ちなみに俺は別々に食べる派だ。うまい!
『ちなみに、これは何て名前の料理?』
『ダストっち、これはな……白き新世界のチューっていう料理だ』
『あ、そうですか』
もうわけが分からん。ツッコまないぞ。
そんな俺とゴールドちゃんのやり取りを見て、ブロンズちゃんが一瞬クスッと笑った気がした。
一体どうしたんだろう?
ほどなくして、俺は白き新世界のチューもといホワイトシチューを完食した。
『ごちそうさまでした!』
シルバーちゃんとブロンズちゃんは、即座に皆が食べ終えた後の食器を片付けた。その姿はまるで高級レストランのベテランスタッフのようだった。
なんと手際のいいこと……。もはや芸術である。あと2人共可愛い。やっぱ実のお姉ちゃんであるゴールドちゃんに似てめちゃくちゃ可愛いよなぁ……。
一方、魔王はさっき怒られたのにも関わらず、食事中もやかましい酔っぱらいの如く騒々しくしてしまったため、まるでお母――赤髪ちゃんにガチ説教されている。
『まーちゃん、また怒られてら』
『俺が来る前も、いつもああなのか?』
『いつもじゃないけど、70パーくらいの確率でああなる』
10日の内7日は怒られてるってことか。結構な確率じゃねえか。
『はぁ、やれやれ』
魔王に呆れ果てた俺は、そろそろ部屋へ戻ろうと食堂から退室しようとすると、あおいちゃんが、俺に用があるのか話しかけてきた。
『あ、ダスト様、明日、朝食後に修練場にお越し頂けますか?』
『修練場?』
『はい、魔王様から大事なお話があります』
大事な話? さっきした話しの続きか……?
『分かりました。……あの、あおいちゃん』
『何でしょう?』
『まだ、気にしてますか?』
さっきもネガティブモードになってたし、恐らくまだ気にしてるのだろう。葛木から俺を守れなかったことを。あおいちゃんは何も悪くないのに……。
案の定あおいちゃんは途端にバツが悪そうに下を向いた。
『……はい、気にするなと言われても気にしてしまいます』
『そうですか……』
しかし、あおいちゃんは顔を上げてこう意気込みを語った。
『なので、私、もっと強くなります! どんな強敵がやってきても、ダスト様に傷1つすらつかないくらい守れるように強くなります!』
あおいちゃんから強い意思を感じた。強がりでも演技をしているわけでもなく、本当に立ち直って決心したようだ。
そんな精神的に強くなったあおいちゃんを見て、俺も意気込みを語った。
『はい、俺自身も、ああならないように、もっと強くなりたいです。お互い頑張りましょう!』
『はい!』
一度失敗や挫折を味わうと、どうしても落ち込んだりネガティブになったりする。『そんなことで落ち込むな』とか『気にするな』とか言われても、あおいちゃんのように簡単に立ち直れない者もいるだろう。俺だって、かなりのネガティブ思考の持ち主だ。だけど、この世界に戻り、赤髪ちゃんや、あおいちゃん、それに、ゴールドちゃん、シルバーちゃん、ブロンズちゃん、そして魔王に会って、それだけで俺はちょっと変われた気がする。たった1日会っただけで、こんなにも世界は違く見えるんだなと思った。だから俺は、もし“自分の人生に絶望”している者に会ったなら……俺は、この言葉を残す……。
お前はまだ物語のスタート地点すらに立ってないだけかもれないぜ? 大丈夫。人生捨てたもんじゃない。だって、俺みたいな社会不適合者で壊れた歯車という不名誉は称号の持ち主にも、希望が見えたから……。
なーにが人生捨てたもんじゃないだ。お前は恵まれてるだろうが! って思われる方もいらっしゃると思います。書いた僕もムカつきました。
というわけで
第13話を見て下さり、ありがとうございます。
第14話の方も、なるべく早く投稿したいと思います。
遅くなってしまったら、申し訳ございません。




