第210話『本来の目的』
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『退くとは、どういうことだ?』
『いやだって、俺がどうやってもあんたらには勝てそうにないからさ。俺は勝算がない戦いはしない主義でね』
ケイは、とても正義教団とは思えない発言を平然とした。
正義正義うるさい正義教団には、こういう奴もいるんだな。
『それに、俺がここに来た本来の目的は別にある』
ケイは、そう言って、みどりちゃんの前に立った。
『なあ、バレス!』
ケイは、みどりちゃんの上に隠れているバレスさんに向かって、大きな声で話しかけた。
『ひえっ!』
絶対に自分の存在に気づかれてないと思ったバレスさんは、突然話しかけられて驚き、思わず身体が反応し、背筋を伸ばしてしまった。
『やべっ!』
ケイの視界内に完全に映ってしまったバレスさんは、高低差があるにも関わらず、思わず身構えた。
『おお、相変わらず可愛いな!!! バレス!!! さすが俺の惚れた女だぜ!!!』
ケイは、躊躇いなく大きな声でそうバレスさんを褒めた。
しかし、バレスさんは、それに対して照れもせず、歓喜の表情も一切なく、ただゴミを見るような目で、ケイを見下ろした。
ああ、バレスさんは本気でケイを嫌ってるんだな……と、この場にいるケイ以外の誰もが理解した。
『……』
『おいどうした!!! バレス!!! さあそこから降りてきて、俺と熱い包容を――』
『キモい』
そう言ったバレスさんの声はいつもより低く、その眼には一切の輝きが無かった。
『そんなこと言うなよー! 俺はお前のことが――』
『喋んなよ、女たらしのクズ野郎』
『うっ……その言葉はさすがに心に染みるぜぇ……』
女たらしのクズ野郎なのは否定しないのかよ。と誰もが思った。
ケイは、言葉のナイフどころか言葉の包丁レベルのダメージを受けて、涙目になりながらも、バレスさんに向ける目は変わらない。
『だけど、バレス!!! 愛してるぞ!!!』
『いや近寄らないで下さい』
『うっ……そんなこと言わずに!!!』
『黙れ』
『愛して――』
『喋んなカス』
『……』
ケイは、さすがに戦意喪失して黙り込んだと思いきや――
『バレス!!! 大好きだああああああああああ!!!!!!!!』
ケイは、恥ずかしげもなく、とてつもない大きな声で告白をした。
その告白に、周りにいた緊張感の欠片もない恋愛脳の女性達は、戦闘中にも関わらず、興奮して、キャーキャーと、まるで青春期真っ盛りの女子のように叫んでいる。
この光景は、まるで学校の屋上から好きな人に告白するような青春を感じさせた。まあ、俺はそんな青春知らんけど。
しかし、忘れてはならない。
どんなに青春を感じようと、恋愛漫画のような超純愛ストーリーだろうと、ケイは結局、バレスさんのストーカーである。
どこまでいっても、ストーカーという行為は愚かで最低で最悪なのだ。ここテストに出るよ。
『は? アンタみたいなストーカーなんて……大大大嫌いだよ!!!』
言葉のナイフどころか言葉の包丁どころか、言葉のチェーンソーがケイの心を貫いた。
さすがのケイも精神的ダメージが大きいのか、立ち直れず、膝をついて地面に顔を合わせた後、子供のように号泣した。
『う、うわあああああああああああん!!!』
『うわっ、うるせ』
ケイの号泣が、思った以上に大音量だったので、近くに居たものは皆、思わず耳を塞いだ。
『酷いよおおおおお!!! 俺はこんなにもバレスを愛してるのに!!!』
『うるせえよ!!! どこかに消えろよ!!! なんなら、一生くたばっとけ!!!』
バレスさんからの暴言の一撃で、ケイの心は完全にKOした。
『そ、そんな……バレスのバカ!!!!!!! もう知らない!!!!!!!』
ケイは、まるでめんどくさい女の子みたいなキレ方をして、少し走った後、振り向いて更にこう言った。
『バーカ!!! バーカ!!! 今さら後悔しても遅いんだからね!!!!!』
そう言った後、ケイは、あっかんべーと、なんとも見苦しい様を見せてから、完全に走り去って行った。
『あーもう、だから会いたくなかったんだよ……』
『あはははは……』
その後、大怪我を負ったケイデスとアミさんをみどりちゃんの上に運び、ケールさんによって無事回復した。
色々あって呆けそうになったが、俺達は立ち止まらず、共に上へ進みながら、みんなそれぞれ色々と話をした。
例えば、ブロンズちゃんとゴールドちゃんは、本来あったはずの家族との時間を取り戻すかのように、プラチナとブラックに付きっきりで、楽しそうに話し込んでいたり。
俺は、ケイと戦う前のアミさんの様子が気になったので、アミさんと2人で話したかったのだが、レッドがアミさんの元を離れてくれなかったので断念した。
やっぱ、あのクソガキ許すまじ……。
なので、言い方は悪いが、余ったメンバーであるケイデスとケールさんと話すことになった。
みどりちゃんとも話そうと思ったが、俺達を乗せて行くのに必死でそれどころでは無さそうなので、今回は誘わずに、後でこれでもかってくらい構うことにした。
『さて、何の話をしようか?』
俺はケイデスとケールさんを見てそう話題を振った。
ケイデスとケールさんはお互いに初対面なので、会話に沈黙の間が出てしまうんじゃないかと危惧していたが、そんなことはなく、普通に楽しそうに会話していた。なんなら俺の方が会話に入れない状態になってしまった。
そうか、ケイデスもケールさんも、俺と違って陰キャじゃないから、会話は普通に弾むのか……。
俺は、よくよく見るとこの場にいる自分以外の全員は、陽キャという事実を今さら重く受け止め、先ほどのケイのように、心に大きなダメージを受けてしまった。
この中で陰キャなのは俺だけ……。
べ、別に泣いてなんかないんだからね!
う、うわあああああああああん!!!
第210話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、11日(金)か12日(土)に投稿予定です。
宜しくお願い致します。




