第204話『オレハサイテイダ』
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『流星団なんて、そんなダサい名前の軍隊……知らないわ』
『そ、そうか……』
真正面から軍隊名をディスられてしまった。
俺は本物のダストじゃないから特に傷つきはしないが、自分がつけた名前が、もしこんな風にダサいと言われると思うと……なかなか精神的にくるものがあるな。
ダスト隊長、どんまい。
『流星団……なんだか懐かしい響きだな』
ブラックは、少しは覚えていたのか、そう懐かしんだ。
『ブラックは知ってるの?』
『ああ、なんとなくだが』
『そこに私は居たの?』
『ああ居た……と思う』
『そう……』
プラチナは、自分だけ全く覚えてないからか、寂しそうな表情をした。
ああ、この2人を見てると、300年前に、魔王城で裁判をやった時もそうだったが、あの事を思い出してしまう。
《ダストの回想》
それは、流星団の世界線ではなく、アクタがギルドを作っていた世界線の話……おそらく、今いる世界線の昔の話かと思われる。
俺が正義教団の国にある任務で、正義教団の新入りの兵士として潜入した時に、ある3人の幼い女の子に遭遇した。
3人は、俺を正義教団の兵士だと思っていたため、敵対心をむき出しにしていた。
どうやら、この3人の両親……依頼主であったプラチナとブラックは反逆者として捕まり、その子供も捕捉対象となってしまい、それで逃走している最中だったようだ。
その時の俺はそんなことも知らずに、仕方なく正義教団の兵士らしく、3人に注意しようとした。正義に歯向かってはいけないと。
しかし、注意する前に、2人の少女が、適当な魔法を使って、俺に攻撃をし、あと1人の少女は、持っていたフライパンで、俺の顔を殴った。
幼い子供にしては、殺意がこもった的確な攻撃だったので、もしかして、盗賊団の幹部か誰かが、何かの魔法で自分の身体を小さくしたのではないかと深読みし過ぎてしまい……。
俺はつい――――
3人に魔法で反撃をしてしまった。
その際に――――
――――――――――
――回想は妨害されました――
あれ?
“イヤダ”
そこから先を思い出そうとすると、血で書いたようなホラーじみた文字が頭の中に浮かんできて、記憶が全く浮かばない。
”コレイジョウハオモイダシタクナイ”
ん?
“コウカイシテイル。オレハコウカイシテイル”
後悔か……。
”ナンデ、ナンノツミモナイアノコタチヲキズツケテシマッタノカ”
……。
“オレハサイテイダ。オレハサイテイダ”
……よく分からないけど、罪の意識に囚われるのは、俺も分かるよ。俺も前科を犯した。その事を俺は今でもずっと引きずって後悔してる。もっと良い選択肢があったのではないか。もっとスマートなやり方があったのではないかと、あの事件から、毎日毎日思ってしまう。
とにかく重い。重すぎる。まるで身体の中に重いダンベルを常に持ち続けてるような……。
でも、だからといって、加害者が辛いなんて言えるわけもない。だって、被害者の方が、よほど辛い思いをしたのだから……。
俺は、ダストとしてではなく、ダストじゃない俺自身として、苦しんでいる誰かに向けて、自分の想いを放った。
ちゃんと伝わっただろうか。
――伝わったよ――
ん?
――■■■君も辛かったよね――
突然、どこかから先ほどとは違う声が聞こえた。
この声は誰だ?
ダメだ。聞き覚えがあるはずなのに、思い出せない。まるで記憶がなかったことにされているようだ。
――ごめんね。私の記憶が邪魔しちゃって――
いや、別に。
――私も何でか今の今まで忘れてたよ、人の事言えないや。■■■君はこんなにも自分の罪をしっかりと覚えているのに――
罪を覚えてるからって、そんな偉いもんじゃねえよ。結局、俺は、あの娘に謝ってもないんだからさ。
――でも、もしその娘が君の近くにいたら、謝りに行くだろう?――
まあ、そうだな。近くにいれば……だけどな。
――きっと君なら誠意を持って謝れるよ――
だといいけどな。
――おっと、ごめんね。もう戻らなきゃだよね――
おお、そうだな。
プラチナとブラックと決着をつけなければ……。
それじゃ、行ってくるよ
――行ってらっしゃい――
こうして、感傷に深く浸っていた俺の意識は現実に引き戻された。
なんと回想している間は不思議と時間は経っていなかった。何か大きな力でも働いていたのだろう。そうじゃなければ、この現象を説明できない。そして、それができるのは……。
って、今はそれよりも、目の前の相手に集中しよう。もう時間は動いている。ボーッとしてると、またケールさんに怒られてしまうからな。
『――まあ、そんなことは関係ない。悪が誰であろうと、正義の敵であることは間違いないのだ』
ブラックはそう言って、剣をこちらに向けて、敵意を見せてきた。
『そうか。それなら、こちらも容赦はしない』
プラチナとブラック……さすがに一気に2人を相手にするのは骨が折れるかな……。
だけど――――
『おいおいダスト、まさか独り占めする気じゃないだろうな?』
ケイデスは、槍を片手にそう言いながら、俺よりも前に出た。
『ケイデス……?』
『私もいるよ』
『アミさん……』
アミさんも、負けじとケイデスよりも前に出た。
ケイデスもアミさんも、さっきブラックに吹き飛ばされたダメージが残ってるはずなのに、まだ戦意喪失せず、むしろ、さっきよりやる気を出している。
『ほう……悪らの、その諦めない心はまさしく正義だ』
ブラックは、会ったばかりのルキウスと同じこと言って感心している。もしかして、洗脳でもされているのか?
『でもでも~、あなたたちは所詮悪なので、殺しま~す!』
プラチナは、懐に隠していた毒のような色のナイフを取り出した。というかマジで毒のナイフだ。慧眼魔法で見たところ、まだまだ色々な武器を隠していた。
やはり、先ほどのプラチナは諦めたフリをして、隙をついて俺を攻撃する気だったんだな。
『ふふふ……』
プラチナは、不適な笑みで、こちらを見た。彼女から見たら、俺らは獲物なんだろうな。
仲間として共に戦ったという記憶がある故に、正直、戦いづらい。
ミユウとダイゴもそうだったが、本当に流星団の事を覚えていないのだろうか?
ブラックはなんとなく覚えていたようだが……。
少し揺さぶってみるか。
『なあプラチナ』
『気安く名前を呼ばないで!』
記憶を呼び覚ませるために、あえて呼び捨てにしたのだが、思い出すどころか、不快感を与えてしまったが、そんなことは気にせず、俺は流星団のダスト隊長になったつもりで、こう言った。
『プラチナ! ブラック! お前達はすっかり忘れてしまったようだが、俺は、お前達の上司のダスト隊長だ! 元帝国軍だったが、今は流星団の創始者であり最強の隊長だ!』
案の定、周りの仲間達は、何言ってんだこいつと言わんばかりの呆れた視線を送ってきた。しんどいからやめて。
『ダスト……隊長……?』
プラチナには効いたのか、少し揺らいで――
『何言ってんだこいつ』
――いなかったああああああああああ!!!
プラチナは、痛い人を見るような目で俺を見た。
すると、アミさんが、俺の肩にポンと置いて、こう言った。
『ダスト君、きっと君は疲れてるのよ』
アミさんは、可哀想な人を見るような目で、俺を見た。
『そ、そんなんじゃないですよ!』
『あとでケールさんに診てもらおう、ね?』
ちくしょう! 信じてもらえない!
アミさんに続いてケイデスも、俺の肩にポンと置いて、こう言った。
『ダスト、お前がどんなに変な奴でも、俺はお前の味方だからな!』
ケイデスは、とびっきりの良い笑顔でそう言った。
『やめてえええええええええええええ! 俺を変な奴扱いしないでええええええええええ!』
『ダスト君~』
『ケールさん!』
ケールさんの観察眼なら、俺が本気だということを分かってくれる……!
『全くもう~、ダメじゃん~、中二病が悪化してるなら、早く言わないと~』
あ、ダメだ。辛い、泣きそうだ。もう帰っていい?
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次回は、27日(木)に投稿予定です。
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