第200話『壊れた妹は異世界に行っても壊れたままだった』
お待たせしました。
第200話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
《キリカ視点》
私は、今、目の前にいる男……トリスタンを追い詰め、止めを刺そうとしているところだ。
『ま、待ってくれ! こ、殺さないでくれ!』
『……』
私はトリスタンの命乞いに耳を傾けず、ただ無情に抹殺するつもりだ。
『お、おい! 聞いているのか! 俺は死にたくない!』
『……』
私は、血まみれの剣で、引きずるように地面に跡を残しながら、ゆっくりと1歩ずつ進む。
『く、来るな……来るな!』
トリスタンは、尻餅をついた状態で後退りする。
トリスタンからしたら、まるで死のカウントダウンだろう。
怖いだろう。
自分に刃を向けられると。
怖いだろう。
『……』
この世界に来てからも、思い出す。
まだ幼かった頃の私は、ある日、ある男に人質として捕らえられて、刃を向けられた。
どうやら、私の兄を呼び出すためのエサとして、私が人質になったようだった。
私は、あまりの恐怖で泣くことしかできなかった。
兄が私を助けるために現れると、妹を放せ! と言い放った。
当然、男は私を放してはくれなかった。
しかし、ここで男は兄にある事を言い出した。
それは、兄に兄の友達全員をここに呼び出して、その場で全員ボコボコにしろとのことだった。
すると、兄は私のために、兄の友達を本当にボコボコにしたのだ。
それで終わりと思いきや、男は刃物を兄に受け取れるように投げて、更にとんでもないことを言ってきた。
“それで自害しろ”
そんなことできるわけがない。
だが、男の刃が私に近づくのを見て、焦燥に駆られた兄は私を助けるために自害した。
血が涙のように流れるのを確認すると、男は満足したのか私を解放した。
もちろん私はすぐに兄の元へ向かった。
まだ身体の小さかった私は、身体の大きい兄を運ぶのは無理だったし、救急車を呼ぶほど、冷静ではいられなかった。
とにかく、このままじゃお兄ちゃんが死んじゃう。
それだけは理解できた。
兄がそんな状態なのにも関わらず、男は知らん顔をして、その場を去ろうとする。
私はそんな男に憎悪が湧き出し、あることを言い放った。
すると、男は、私の言葉が刺さったのか、呆気に取られたというか、戸惑いを隠せていなかった。その後、無言で去っていった。
それから、少しすると、兄の学校の先生がたまたま通りかかり、この光景をみて血相を変えていたが、すぐに救急車を呼んでくれた。その後、病院に運ばれた兄は無事に手術に成功し、しばらくして退院して、学校に通い始めたけど、ボコボコに殴った友達全員は、事情を知らずに兄と、そのまま疎遠となり、一人ぼっちで寂しい学校生活を送ることを余儀なくされた。
それから、耐えられなくなった兄は誤解を解こうと、あの男の所業を先生に告発したのだが、目撃者も気が動転した幼い私しかいなかったし、証拠がないと相手にされず、むしろ兄とその友達が喧嘩して殴り合っただけじゃないかと疑われ、兄とその友達らに停学処分を下されてしまったのだ。
一体兄が何をしたと言うんだ。
その時の私はそう思っていたのだが、ここに来てから肉体的にも精神的にも成長した私が思うに、兄はあの男をいじめていて、それで兄に復讐を企てたのではないかと考えた。
だとしたら、兄があそこまで恨まれるのも分かる。
いやでも、あれはやりすぎだ。
もっとスマートなやり方があったはずだ。
そもそも、関係ない私まで巻き込んだ時点で悪手なのだ。
例え兄が原因を作ったのだとしても……。
ねえ、■■ ■■■さん?
あなたの本名でしょ?
せっかく調べた時に覚えたのに、この世界の本名禁止令自体が嘘だと知って、私はショックを覚えた。
もし嘘じゃなかったら、そのままあの男を楽に葬れたのに……。
しかも最近、上司もあの男に会って、自分の記憶を授けたみたいだし。なぜあの男にそこまで肩入れする?
更に、今回の上司からの任務は、“ダスト及びその仲間達を助太刀せよ”という内容だったのも、納得がいってない。
なぜ私が、兄をめちゃくちゃにしたあの男を助けなければならない。
兄に非があるとはいえ、到底許されない行為だ。
兄と同じ目に遇わせてやる……絶対に絶対に。
ねえ、■■ ■■■さん?
いや、この世界ではダストか。
そう、私はダストに復讐したいのだ。
だけど、その前に正義教団が邪魔だ。
こいつらが居たら、満足にダストを苦しませてあげられない。
せっかく勇者にしてもらったんだ。
この力……存分に使ってやる。
私は私の復讐を執行するのだ。
分かっている。これは私の正義だ。
こんなことしたって誰も喜ばない。
上司……神様からも軽蔑されるだろうし、ダストの仲間達からも一生恨まれるだろう。
だけど、私は自分を抑えられない。
本当は私は兄が大好きなのだ。そんな兄が……。
分かっている。
分かっている……が……。
あぁ、もう無理だ。
ヤルシカナイ。
『――って、あれ?』
気づいたら、トリスタンは血痕と右腕だけ残してどこかへ消えていた。
『……』
私の剣に付着した血の面積が増えていることから、この右腕は、おそらく私が斬り落としたのだろう。
これは、私の悪い癖だ。
考え事をすると、つい身体だけが適当に動いて、敵に中途半端にダメージを与えて、逃がしてしまうことが多い。
『取り逃がしたか……さて、それなら――』
『それなら、一旦私の話を聞いて頂けないでしょうか?』
突然、黒いローブを被った怪しい女が、一切の気配を感じさせずに現れた。
と言っても、なんとなく誰かが来るのは分かっていたので特に驚きもしない。
『どちら様ですか?』
『そうですね……どれを名乗ろうか迷いますが……今回はハルナ・アキモトと名乗らせて下さい』
『ん? 日本名ということは、あなた前の世界の記憶を覚えてらっしゃるんですか?』
この世界の中では、私と同じ世界の人間は、ダストしかいない。ということは、この女は別世界の元日本人か。
『ええ、全て、鮮明に覚えております』
『そうですか。で、そんな方が私と何の話をしたいのですか?』
『実は――――』
ハルナ・アキモトによると、どうやら、前々からある計画を企てていて、その為には私の力が必要だと言うのだ。
その計画の内容自体は、わざわざ語るほどのものでもないくらい、薄っぺらいし、なんとなく嘘っぽさもある。
だが、利害が一致している所があった。
それは――――。
いや、分からないな。これも信用していいのか、悪いのか。
『さて、どうしますか?』
『……』
ここで乗ってしまっていいのだろうか?
私はこういう取引は得意ではないので、正直、判断に迷う。
だけど……私は――――
私が出した結論は――――
『分かりました。あなたの案に乗りましょう』
『ありがとうございます。交渉成立ですね』
『よろしくお願いします』
これでいい。これで……いいのだ。
『では早速ですが、私の拠点へ案内致します』
私は、ハルナ・アキモトの拠点とやらに、ついていった。
第200話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、17日(月)か18日(火)に投稿予定です。
……ついに、200話到達しました!
いや、本当についにここまで来たかと自分でも驚いています。
もし読んで下さってる皆様が居なければ、ここまで書けませんでした。
やはり、自分の作品を見てくれている人がいるから頑張れるというのが本当に大きいです。
もちろん、ブックマーク登録数や評価ポイントが増えれば歓喜ですが、PVの数を見て、この数だけ見て下さってるんだ、時間を割いてまでこの作品を読んで下さっている……それだけでも嬉しいです。
今後も、この作品を、もっと色んな人に触れてもらえるように……ここまで見て下さっている皆様に、この作品を見れて良かったと思えるように頑張っていきたいと思います!
長い後書きですみませんm(_ _)m
皆様、本当にありがとうございます!
今後とも、何卒宜しくお願い致します!




