第196話『正義と悪の境界線』
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《ルキウス視点》
――俺の名はルキウス。
誇り高き正義教団の騎士だ。
国を守るため、仲間達と笑い合うため、そして世界中の人々が幸せにするために、日々勤しんでいる。
――はずだった。
ある日俺は見てしまった。
ガウェインとトリスタンが、裏道で2人がかりで、まだ幼い子供を殴りつけていたところを。
俺はすぐにガウェインとトリスタンを追い払い、俺はその子供を医師の元に連れていき、なんとか事なきを得た。
その後、俺はガウェインとトリスタンを糾弾した。
これは正義に反した極悪行為であることを。
だが、それに対し、ガウェインとトリスタンはこう反論をした。
『いやいや、俺達はあのガキが正義のルールに違反してたから制裁してやっただけだぞ?』
それに対して、俺は憤怒の感情を混ぜてこう反論した。
『だとしてもやりすぎだ! 少し注意をするだけで済んだ話だろう!』
そう言っても、ガウェインはまるで聞く耳を持たずに、こう逆ギレをした。
『はぁ……あのなルキウス、俺様には俺様の正義があるんだよ! てめえの正義を俺様に押し付けてんじゃねえよ!』
ガウェインがそう言うと、周りで聞いてた、ガラード以外の他の騎士達もガウェインの言うことに賛同し、俺は非難された。
なぜ、俺の正義は否定される?
なぜ、ガウェインやトリスタンの正義は許される?
そんなものは正義じゃない。悪だ。
その後、俺は王に直接この事を報告した。
すると、王はこう答えた。
『それも彼らなりの正義だ。ルキウスが口を挟むことではない』
『し、しかし彼らは子供を――』
『ルキウスよ、貴様は、その現場をちゃんと終始見ていたのか?』
『い、いえ……全てを見ていたわけではありませんが……』
『もしかしたら、その子供が他の子供をいじめていて、それを止めただけかもしれないぞ?』
『だ、だとしても! 暴力で解決するなんて言語道断です! ちゃんと話し合えば――』
『いいかルキウス、人は話し合いだけで解決できるほど完璧ではない。結局は己が持つ強さこそが正義なのだ』
意味が分からなかった。
今だって理解に苦しむ。
それでは、力が強い者が正義と言っていれば、何でもやっていいと言っているのと同義だ。
納得がいかなかった。
だがこれ以上王に逆らうのは俺が悪と認定されてしまう。
その時の俺は情けないことに悪になる覚悟がなかった。
だから、ガウェインとトリスタンの正義にも目を瞑った。瞑ってしまったのだ。
だが、もう限界だ。
俺はある日の夜、正義のルールを破り、ガウェインとトリスタンを暗殺しようとした。
その時だった。あの方が現れたのは……。
自らを神だと称したあの方はこう言った。
“あと数百年先、いつか貴様の元に正義教団に戦いを挑む者達が現れる。もし貴様がその者達に戦いを挑み、敗北したのなら、その者達に肩入れをするがいい。さすれば正義教団は1度滅び、貴様は――”
『お、いたいた』
『む、ダストか……よくここが分かったな』
ここは大会議室にある俺しか知らない隠し扉の先にある秘密の部屋だ。隠し扉といっても壁と同化してるだけだ。他の誰かが偶然見つけてもおかしくはない。
とはいえ、この隠し基地自体を数年前から知ってるガラードは未だにこの秘密の部屋の存在を知らないし、俺もここを知ったのは1ヶ月程前だ。それを、ここに来てからまだ日が浅いはずのダストが見つけるとは……。
『なぜここが分かった?』
『ああ、探知魔法と慧眼魔法を使ったんだよ』
『なるほど、慧眼魔法とは、ずいぶん珍しい魔法を持っているんだな』
『まあな』
『……ここに来たということは、俺に何か用か?』
『ああ、さっきのブロンズちゃんのライブの感想でも聞こうかなと思ってな。俺、今プロデューサーだし』
『プロ……? よく分からないが、ああ、そうだな……ブロンズのライブはとても良かったよ』
『そうか』
『ああ』
『……』
ダストは、もう用は済んだはずだが、まだ話足りないのか、ここから離れようとせず、俺の方をジーっと見ていた。
『どうした?』
『いや、ルキウスはここで何をしてるんだろうなと思ってな』
『ああ、特に意味はない。ただ時々ここに来たくなるだけだ』
『そうか』
『ああ……』
俺は思う。なぜダスト達が悪の象徴たる魔王軍側の人間なのか。
そもそも、魔王とは何だ?
なぜ魔王なんて概念が生まれ、そして悪だと呼ばれたのか。
一体誰が正義と悪の境界を引いたのか?
『分からないものだな』
『何がだ?』
独り言のつもりで呟いたのだが、ダストが反応してきた。
『この国……いやこの世界がな』
『……ほう。なあ、ルキウスはさ……この正義教団は間違っていると思うか?』
『ん? ああ、世の人々が信じている正義の観点で言うなら間違ってないのだろうな。……だが俺の正義ではこの国は間違っている。もし俺が王なら、少なくともガウェインとトリスタンを野放しにはしない。あの2人は処罰されるべき人間だ』
『そうか……それがルキウスの答えなんだな?』
『ああ……って、どうしたんだダスト? 急にこんなこと――ってあれ?』
少し前までそこにいたはずのダストは、まるで最初からいなかったかのようにいつの間にか姿を消してしまった。
『ダスト?』
辺りを見回ってはみたものの、誰の気配もない。それどころか、ここに誰かが来たという痕跡すらない。
『おかしいな。どこに行ったんだ?』
ダストを探していると、誰かがまたここに入ろうとする音がした。
ん? ダストか?
俺はそう思い、答え合わせのために、その誰かがここに来るのを待った。
すると……。
『へぇ、こんなところに隠し部屋があったとはな……』
その誰かとは、ダストだった。忘れ物でも取りに来たのかと思ったが、そういうわけではないようだ。
『ダスト!?』
『よお、ルキウス。こんなところで何してるんだ?』
ん? おかしい。ダストはさっき俺とここで会話していたはずだが……?
『ダストこそ何でここに?』
『ん? ああ、探知魔法と慧眼魔法を――』
『それはさっき言ったはずだが……?』
『は? さっき? 何の事だ?』
ダストはとぼけてそう言ってるわけではなく、本気で何の事か分からないようだ。
どういうことだ……?
俺はさっきダストと会話していたことを、目の前にいるダストに話した。
『え、さっき俺がここに来てルキウスと会話してただって?』
『ああ』
『いやいや、だって俺がここに来たのは今が初めてだぞ。……つまり、それって……俺の偽物ってことだよな?』
『あ、ああ……』
今、目の前にいるダストが偽物の可能性も充分考えられるが……今思えば、さっきのダストはどこか様子が変だった。変な質問をしたり、最後にはいつの間にか姿を消したりと、不審な点が多かった。
つまりさっきのダストが偽物の可能性が高い。
『ダスト、この建物内にいるダストの仲間達の中に変身魔法を使える者はいるか?』
『いや……いないな』
『そうか』
『あ、でもマーリンと、フラン達3兄妹と、あの3女神は分からないや』
『なるほど、ガラードやレッドも変身魔法は使えない。となると、グレーなのはその7人か』
『そういえば、さっきマーリンの部屋に行った時、なんか怪しい儀式みたいなのをやっていたな』
『怪しい儀式?』
『ああ、ブロンズ様のライブの感想を聞こうと部屋に行ったら、なんか……部屋が暗くて……変な呪文を唱えていたから……ん?』
会話の途中だが、なにやら外が騒がしい。ここまで騒ぎ声が聞こえるなんて、ただ事ではない。
『何だ? 何かあったのか?』
『様子を見に行こう』
俺とダストは、様子を見に秘密の部屋から出て大会議室に抜けると――。
ドカーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!
とてつもなく大きな爆発音が耳に響いたと同時に、地面が揺れた。
『何だ!?』
廊下へ出てみると、そこには――――。
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