第188話『交差』
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『うっ……気持ち悪いわ……』
ブロンズちゃんの顔は血の気を失い、膝を落としてしまうほどに、容態が悪化してしまった。
『ブロンズちゃん!』
俺は、ブロンズちゃんが冷たい床に伏す前に抱き抱えた。
『大丈夫?』
『うぅ……』
ブロンズちゃんは、返事の代わりに、苦しそうに唸った。
俺は、ブロンズちゃんのおでこに触れ、熱の有無を確かめる。
『……熱があるわけじゃ無さそうだな』
熱が無いから安心……とも言い切れない。むしろ身体が冷たすぎる気もする。もしかしたらこの世界にしかない重い病気なのかもしれない。
言うまでもないが、医療知識は皆無だ。異世界なら尚更だ。
『とりあえず、ベッドに寝かそう』
俺は、ブロンズちゃんをベッドまで丁寧に運び、布団を身体全体に覆わせた。
『さて、どうしよう……』
誰かこういうのに詳しそうな人呼んだ方が良いよな。少なくとも俺みたいな素人がいるよりはずっと良いだろう。
そう思い、部屋を出ようとドアノブに手をかけると……。
『ま……待って……』
ブロンズちゃんは、布団の下から、弱々しくも震える手を出した。
『ブロンズちゃん?』
『一緒にいて……ずっとそこにいて……』
『ブロンズちゃん……』
ブロンズちゃんも、やはり年相応なんだな。普段大人びているけど、今はまるで幼い子供のようだ。
『お願い……』
『分かったよ』
さすがに見捨てられないので、俺は踵を返し、ブロンズちゃんのそばに居ることにした。
でも、このままそばにいるだけじゃダメだよな……。ならせめて……。
『風魔法“暖風”』
さっきブロンズちゃんに触れた時、身体が冷えていた。このままじゃ寒くて辛いだろうから、気休め程度にしかならないかもしれないが、ブロンズちゃんの身体を暖めることにした。
すると、効果抜群なのか、ブロンズちゃんの表情は和らぎ、思った以上に気持ち良さそうだ。そして間もなく、そのまま夢の世界へ誘われた。
『ん? もう寝たか』
まあ、こんな小さな身体なのに、今日だけでホント色々あったからなぁ……精神的にも、かなり負担がのしかかってたんだろうな。
ブロンズちゃんが眠っても、俺は、その場から離れず、ベッドに寄りかかるように眠る。
まあ、こんな体勢で、まともに眠れるわけがないので、ずっと目を瞑ってるだけだがな。
『おやすみ』
――それから数時間後。
『うん……?』
おっと、どうやら俺も、いつの間にか眠っていたようだ。
ブロンズちゃんは……まだ安眠中というところか。スゥスゥという可愛い寝息が耳に響く。
『可愛いな』
ブロンズちゃんの寝顔の、あまりの可愛らしさに、思わずポロっと呟いてしまった。
守らないとな。ブロンズちゃんも……皆の事も……。
その為なら、俺は悪人でも鬼にでもなってやる。
『さてと』
俺は立ち上がり、ブロンズちゃんの部屋から出た。
『さむっ』
やはりまだ早朝だからなのか、廊下が冷え冷えだ。
『それにしても今回は長いよな』
それに、あいつも、今回は場所が悪いのか、ここには来ないようだ。
『悪、油断したな』
『!?』
あいつが来ないと確信してから、まるで心を読まれたかのように、黒い甲冑を纏ったそいつは突然現れた。
『動くな』
俺が距離を取ろうとすると、そいつは、すぐに俺の首元に刃を向け、人質を取られたように身動きが取れない状態になった。
『くっ……!』
まさか、ここにも現れるとは……。
どうする? 何か魔法でもぶちかましてみるか?
『ほう、魔法か……』
『!!』
何だ……こいつも心が読めるのか……!?
『無論』
マジかよ……じゃあどの魔法を発動しても、その前に対応されるってことか……!
『その通りだ。悪はもう詰んでいる』
『はぁ……じゃあもう無理だな』
『ほう、今回は潔く諦めるのだな』
『ああ……この状況じゃあ、どうあがいてもアンタには勝てねえからな』
何か隙をついてしかけようにも、結局、心読まれてるなら意味ないしな。
それに――。
『ここは未来予知の世界だからな』
そう、今は未来予知している最中……つまり、今起こってる事は少し先の未来の話だ。ここで俺が殺されても、そういう未来を見たってだけで済まされる。
ただ、本来なら、こいつはここにいるわけがない。
なぜなら――。
『ご名答だ少年。未来予知魔法は近くの未来予知魔法所持者にも影響する。つまり他の誰かの未来予知に干渉することができる』
今回の場合、俺が昨夜にちょっとした遊び心で、ブロンズちゃんの部屋にお邪魔する前に、未来予知魔法を使って、どういう反応をするか検証しようとした。すると、こいつは、恐らく遠くから、俺の未来予知魔法を感知し、自らも未来予知魔法を発動して、俺の未来予知の中に潜り込んだということだ。
ん? 待てよ……だとしたら、この隠し部屋の存在がバレたということか!?
『安心せよ。隠し部屋の存在は誰にもバラさぬ』
『は……?』
信じてもいいのか? いや――。
『そんなこと信じられるわけがないだろ』
『本当だ。正義は嘘をつかない』
『そう言われてもな……根拠がないだろ』
『……悪が信じようが信じまいが、正義は約束を守る』
それも所詮、ただの口約束だが、なぜだ? 嘘をついている気がしなくて仕方がない。なんという正義感。いやこれは正義感というのか? こいつから裏切られる感じがしない。
『分かった。信じる』
『ありがとう少年』
なぜお礼を言われてるか分からないが、根が真面目すぎるのか、それとも……。
『おっと、そろそろ時間のようだ。さらばだ、正義は王室で待っている』
『王し――』
『――はっ!』
俺は夢から覚めたような気分で、昨夜にいた自分の部屋に引き戻された。
『……』
俺は、未来予知で起こった事を頭の中で整理するために、しばらくその場に立ち尽くした。
『……よし』
とりあえず、今はこれから具合が悪くなるブロンズちゃんを看病しに行こう。
王室に攻め込むのは明日だ。そこであいつと決着をつける。
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次回は、17日(土)か18日(日)に投稿予定です。
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